昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第10章 中国:89年以降は経済過熱調整
貿易動向(通関,ドル・ベース)をみると,輸出は87年には前年比27.5%増,輸入は当局の抑制策が効いて,同0.7%増となり,87年の貿易収支赤字は37.7億ドルと,86年の119.7億ドルから縮小した。しかし,国内の生産過熱に伴い,輸入は88年4~6月期前年同期比22.3%増,7~9月期には同33.2%増と拡大した。88年1~11月では輸出が前年同期比21.4%増に対して,輸入が同26.8%増となり,貿易収支赤字は前年同期の28億ドルから54億ドルへと拡大した。
品目別にみると,87年には前年比37.2%と好調だった織物・繊維製品は,国内の原料不足から88年上半期には前年同期比7.1%増と伸びを縮めたが,化学製品,自動車,機械等は大幅増となっている。石炭,石油は国内需給逼迫から輸出は88年には前年比横這いであった。なお,鉄鋼,アルミ,銅,絹など国内でひっ迫しているものについては,88年秋以降輸出制限が行われた。一方,テレビ用部品,カセットレコーダー部品など家電製品は輸入関税引き上げが行われた(第10-5表)。
88年1~9月の中国の輸出は前年同期比23.9%増,輸入は同23.8%増となり,貿易収支赤字は34.1億ドルと拡大した。この間の地域別貿易動向をみると,対ドル通貨上昇国(日本,欧州)に対しては,依然輸出増が続いているが,アメリカ等に対し,ては,輸出の増勢に弱まりがみられる(86年7月以降中国人民元は対ドル=3.7221元で固定)。一方,88年半ば以降,国内の生産過熱に伴い,アメリカからの原材料輸入が急増している。
中国貿易のうち輸出39%,輸入23%を占める香港・マカオに対しては,88年1~9月に輸出が前年同期比30.8%増,輸入が同43.7%増となり,貿易収支黒字は前年同期の38.8億ドルから43.2億ドルとなった。
対日貿易では,88年1~9月に輸出が前年同期比26.7%増と好調だったのに対し,輸入が同3.2%増と抑制され,貿易収支赤字は16.0億ドルと前年同期の25.6億ドルから縮小した。7月以降日本からの輸入がやや増加している。
対欧州貿易では,同期間には,輸出が前年同期比24.9%増と好調だったが,輸入が同2.3%増と抑制され,貿易収支赤字は19.2億ドルと前年同期の24.7億ドルから縮小した。
対米貿易では,主要輸出品である繊維等の不調から,輸出は88年1~9月前年同期比7.3%増と低く,一方輸入は原材料中心に同50.0%増となり,貿易収支赤字は19.8億ドルと前年同期の6.9億ドルから拡大した(第10-6表)。