昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第4章 西ドイツ:輸出,設備投資が増加
88年1月末閣議決定された「年次経済報告」に基づく88年の成長率見通しは11/2~2%であった。しかし,その後の輸出,設備投資の回復を背景に,経済省は8月には2.5~3%へ10月には3.5%へと見通しを上方修正した。89年については,年初の消費税引き上げの影響から個人消費が鈍化し,成長率も2~2.5%へ鈍化するとの見方を示している。
10月末,五大経済研究所は秋季合同報告を発表した(第4-5表)。経済見通しについては,①実質GNPは88年が3.5%増,89が2%増といずれも春季報告の2%増,11/4%増から上方修正された。また,②失業者数は,88年225万人,89年は労働人口の増加から230万人へ増加,③個人消費デフレーター上昇率は,88年の1.5%から,89年は2.5%(年初の消費税増税がなければ2%)へ高まる,④経常収支黒字は88年の850億マルクから,89年は900億マルクヘ拡大する,としている。政策提言としては,89年初実施予定の消費税増税を中止するか,延期して90年減税と同時に実施するよう求めている。
11月末発表された,政府諮問機関の経済専門家委員会(五賢人委員会)年次報告によると(第4-5表),①実質GNPは,88年が3.5%増,89年は2.5%増となる(89年が五大研見通しより高めなのは,年初の個別消費税引き上げは景気に対しては中立的としていることによる)。②雇用者数は増加傾向をたどるものの,労働力人口の増大(引き揚げ者,女子)から失業者数は88,89年とも225万人となる。③個人消費デフレーター上昇率は,83年1.5%,89年2%と落ち着いた動きとなる(これは,年初の個別消費税増税はあるものの,原油価格下落,マルク相場上昇が好影響を与えることによる)。④海外経常余剰のGNP比は,88年の5.7%から,89年は6%程度へ高まる,等としている。政策提言としては,①過去3年,マネーサプライが名目潜在成長率(4%程度)を大幅に上回り,インフレの潜在的危険が迫っている状況下,89年のマネーサプライの伸びは4.5%程度に抑えるべきである。②西ドイツの貿易収支黒字が対EC諸国を中心に拡大傾向にあるため,EMS調整によるマルクの切り上げが望ましい。③企業の投資意欲を高めるため,営業税(地方税,企業収益に関係なく賦課される)を廃止し,所得税連動課税の導入を検討すべきである,等としている。
12月中旬発表されたOECD見通しによると(第4-5表),①実質GNPは,88年が33/4%増,89年が21/2%増となる。輸出見通しの好調,企業収益の改善,90年のEC域内市場統合等から,企業投資が88年,89年と高い伸びを示す。②労働力人口の増加から,失業率は88年,89年とも73/4%にとどまる。③個人消費デフレーターの上昇率は,88年のI1/4%から,89年は年初の消費税引き上げにより,21/4%へ高まる。④経常収支黒字は,88年の450億ドルから,89年は510億ドルに拡大する,等としている。