昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第3章 イギリス:内需中心にブーム化
88年のイギリス経済は,引き続く個人消費の堅調,一設備投資の盛り上がりなどから内需がブーム化し,速すぎる成長が続く中で,インフレ率が高まり,経常収支は記録的な赤字となるなど過熱傾向を示した。このため,6月以降,金利が相ついで引き上げられた。
実質GDPは,82年以降上昇を続けており,株価急落後に予想されたマイナスの影響もほとんどみられず,87年後半以降はむしろ上昇率を高めている。88年に入ってからも速いテンポの拡大が続いており,政府の88年見通し(オータム・ステイトメント)は上方改訂されて4%%増となっている。
鉱工業生産も拡大を続けているが,景気上昇局面はすでに8年目に入っており,設備や熟練労働力不足もみられる。設備投資ブームにもかかわらず生産の伸びが高いため,稼働率は戦後最高となっている。労働市場でも,失業者数の減少が2年以上にわたって続いており,失業率も88年11月現在7.5%と80年代初の水準まで低下している。
この中で,賃金上昇率が一段と高まり,88年夏には9%台にのせた。消費者物価上昇率も,88年春以降じり高となり,11月現在6.4%と85年来の高水準となっている。
貿易収支赤字幅は急拡大を続け,88年に入ってからも,輸出が伸び悩む一方で,内需ブームを反映した輸入の急増から前年を上回る大幅赤字となった。経常収支赤字も大幅化し,88年上期の対GDP比は2.6%にのぽっている。
89年については,内需の伸びが個人消費を中心に鈍化することもあって,成長率は若干低下するが,なお実質3%の着実な拡大を続けると政府はみている。