昭和63年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1987~88年の主要国経済
第1章 アメリカ:6年を超える長期拡大
アメリカ経済は,このところ民間設備投資,輸出ともやや頭打ち感はあるものの前年同期比では高い伸びを続けており,成長の主役が個人消費や住宅投資の家計部門から純輸出,民間設備投資へ移行している。89年のアメリカ経済については,個人消費がやや鈍化する中で,民間設備投資,輸出の伸びもやや低下することから成長率はスローダウンするものの,ほぽ潜在成長率(IMF推計88~92年2.8%)に沿った緩やかな成長が見込まれている(第1-4表)。ただし,成長の持続等による可処分所得の増加から個人消費は依然として根強く,高い水準の消費が続く可能性もある。こうした高い水準の消費は輸入増の要因となり,貿易収支赤字の縮小を遅らせるとともに,内需の増加からインフレを引き起こす懸念があり,引き続き注視していく必要があろう。
アメリカ経済にとって,貿易収支赤字を縮小させつつインフレなき持続的成長を達成するためには~,アメリカの内需を抑制することが最も必要となっている。ただし,国際競争力等の観点から今後も高い伸びが望まれる民間設備投資,を抑制することなく,個人消費,政府支出を抑制することが必要となってこよう。特に,財政赤字については,88年の一般政府ベースでのGNP比がマイナス1.7%と先進7ヵ国平均,OECD加盟国平均(ともにマイナス1.9%)を下回っているものの(中央政府のみではアメリカ,先進7ヵ国平均ともマイナス2.9%),全体的に貯蓄不足という経済構造の下では財政赤字の削減の必要性は一層高まるものと考えられる。