昭和63年
世界経済白書 本編
変わる資金循環と進む構造調整
経済企画庁
第3章 世界に拡がる構造調整
88年には先進国の設備投資は堅調な拡大をしている。しかし,そのテンポは一様でなく,長期的にみると設備投資の伸びは日本では高く,アメリカ,ヨーロッパを上回っている。一方,途上国では,アジアNIEsで活発な設備投資がみられるが,ラテンアメリカでは累積債務問題の深刻化から投資が抑制されている。本節では,長期的に設備投資の動向を,先進国,途上国,社会主義国についてみてみる。
1960~73年の期間は,世界経済が同時的に拡大を続ける中で,73年以降の期間に比べて各国とも活発な設備投資がみられ,成長率も高いものであった(第3-1-1図)。この間のアメリカ,ヨーロッパの実質設備投資(民間非住宅,以下同じ)の年平均増加率は5%程度で,4%程度の成長率を上回る伸びを示し,投資が成長を牽引する形となっていた(ただし,西ドイツでは両者ともほぼ4%)。日本ではこの傾向はさらに顕著であり,13%という設備投資の極めて高い伸びが10%という高成長を可能にした。
73年に発生した石油危機はこうした状況を大きく変えた。73年から第2次石油危機をはさんで5年までの期間は,需要の低迷,石油価格上昇,収益悪化による投資の不採算性等から各国で投資,成長とも停滞した。このうち,イギリスでは北海石油開発の本格化から鉱業部門での投資を中心に4%弱の伸びがみられた(住宅の不振,消費の低迷から成長率は低かった)。また,アメリカでもサービス部門や石油価格上昇時の鉱業部門を中心に設備投資が活発であり,84年には大幅減税のために設備投資は急増した。このため,この期間の設備投資の伸びは3%となった。これに対して,石油輸入国の西ドイツ,フランスでは投資は2%以下の伸びに低迷し,成長も鈍化した。しかし,同様に石油輸入国である日本では,合理化・省エネ投資などの形で4%と,イギリス,アメリカより高い伸びであった。
85~87年の間は,日本では円高デフレの局面においても非製造業設備投資が下支えし,87年からは内需関連を中心に急速に設備投資は回復した。この間の伸びは7%に達している。一方,アメリカでは石油価格下落による鉱業部門での不振,86年には86年税制改革の影響等から設備投資は減少し,87年後半からは輸出の増加を背景に増加した。しかし,この期間の平均はマイナスの伸びとなっている。また,ヨーロッパでは西ドイツなどで輸出の増加から設備投資が増加しているが伸びはおおむね3%台と緩やかであった。88年に入ってからは,第1章第1節でも述べたように,アメリカ,ヨーロッツパ,日本とも設備投資は活発であり,高い伸びとなっている。しかし,60年以降長期的にみれば,アメリカ,ヨーロッパの設備投資の伸びは日本に比べ低い。
以上のように,欧米諸国に比較して日本は60年以降の各期間を通して活発な設備投資が行われてきた。この結果,設備投資比率(実質民間非住宅/実質GNP)は,日本が60年代後半から70年初に18%程度の高い比率を示し,その後やや低下したものの,85年以降には再び高まり18%を超えている。一方,アメリカ,イギリスでは緩やかに比率は高まってきているが,85年以降でも10~12%程度にとどまっている。また,西ドイツでも80年以降12%台とほぼ横ばいとなっている(第3-1-2図)。
設備投資の長期的な趨勢は,日本が高い伸びを維持する一方で,アメリカ,西ヨーロッパで低迷しているといえる。長期的な要因としては,アメリカでは繊維・衣類,鉄鋼などにみられるように労働コストなどの要因から競争力が低下し,輸入品が優位を占めるという追い上げ型のプロダクト・サイクル的な面であり,繊維,鉄鋼等の分野の設備投資は大幅に減少している。もう一点はアメリカ多国籍企業の特徴であった,新製品開発→輸出→標準技術化→海外進出というプロダクト・サイクルによる海外直接投資の増加があげられる。西ヨーロッパでは,競争力の低下した産業から新たな産業への移行が遅れ,「産業のダイナミズム」がみられない。また,需要が総じて弱いことに加え,貫金上昇率の高さ,モビリティの低さ等の労働市場の硬直性要因などがあげられる (第3節参照)。
次に製造業の設備投資の内訳をみると,アメリカ,ヨーロッパでは投資全体が伸び悩んでいる中で,成長産業での設備投資も低い。73~85年の間の製造業の設備投資の年平均増加率は,日本が3.6%であるのに対して,アメリカでは2.6%,西ドイツでは0.6%といずれも日本に比べ低い。日本と西ドイツについて製造業設備投資の業種別のシェアを比較してみると,西ドイツでは73年から85年の間に技術がある程度標準化され国際競争力が劣る部門でも投資は低下していない(繊維・同製品4.7%→3.3%,一次金属12%→9.8%)。これに対して,日本(新設投資額)では75年から85年の間にこれら部門では,既にシェアは低下してしまったか,急速に低下してきている(繊維・同製品3.6%→2.8%,一次金属19.2%→6%)。一方,先端技術的かつ技術進歩の著しい部門では両国とも設備投資は高まっているが,西ドイツ(電機・機械,金属製品34.3%→48.8%)よりも,日本(26.6%→52.7%)の方が高まりは急テンポである。アメリカの73~85年の動きをみると,繊維(5.9%→2.8%),一次金属(8.5%→5.1%)のシェアが低下し,電機・機械,金属製品(35.9%→47.6%)が高まっているが,先端技術的な分野のシェアは日本に比較して低い。
日本は活発な設備投資を行い,かつ,その内訳も競争力の衰えた分野に固執することなく,新規分野に比重を移しつつ,高い成長を維持している。アメリ力,西ドイツでは日本に比べ,設備投資が低迷しているばがりでなく,産業構造が固定的であり,新たな成長産業への移行の遅れもあって成長を鈍化させている。
上記のような設備投資の動向を反映して,資本ストックの年平均増加率(実質民間非住宅)をみても日本が各期間を通して他の国に比べ高い伸びを示している。アメリカでは60~73年に3.7%,73~85年3.5%,85~87年2.8%と期を追って増加テンポが緩やかに鈍化している。また,西ドイツでは60~73年の間には5.9%とアメリカを上回って増加していたものが,73~85年3.2%,85~87年2.5%と急速に鈍化している。一方,日本では65~73年に13.0%,73~85年7.3%,85~86年7.1%と他の国を上回る上昇率となっている (第3-1-3図,第3-1-1表)。
また,就業者の動向はアメリカで各期間とも日本,西ドイツを上回るペースで増加している。これに対して西ドイツでは85~87年に日本と同じ増加率ではあったが,それ以前には就業者の伸びは極めて低い。また,日本では73年以降に鈍化しているものの,西ドイツに比べれば高い増加率となっている。この結果,アメリカでは資本ストックの伸びが低く,就業者が増加していることから,資本装備率の上昇率は鈍化傾向にある。西ドイツでも資本ストックの急速な低下から装備率も伸びが緩やかになっている。これに対し,日本では資本ストックが比較的高い伸びをしていることから,装備率の伸びも高い(第3-1-1表)。
資本装備率のこうした違いは,アメリカ,西ドイツが日本に比べ設備投資が低いことの他に,設備投資の業種別のシェアの違いにもよっている。アメリカでは全産業の設備投資に占めるサービス業のシェアは高く(86年59%),製造業は低い(同18%)。サービス業でも金融・保険業におはるオンライン化の設備投資のように資本集約的な部分もあるが,一般にはサービス業全体では労働集約的である。従って,サービス業の設備投資の拡大は就業者の増加を通して,資本装備率の低下につながっていると思われる。ただし,西ドイツでは,設備投資に占めるサービス業のシェアは高い(53%)ものの,就業者の増加率は低い。
サービス業でも卸・小売業といった雇用吸収力の高い分野で設備投資が減少していることなどが要因と思われる。
なお,技術進歩率を示す指標として,OECDでは70年から83年の間の全要素生産性の年平均上昇率を比較している。これによれば,全産業で,日本は1.52%と,ヨーロッパ主要国の1.06%,アメリカの0.38%を上回っている。また,需要の伸びの高い自動車,一般機械等の部門に限ると,日本の2.26%に対して,ヨーロッパではO.80%,アメリカでは0.41%と低くなっている(第3-1-2表)。
以上のように,日本では常に設備投資が活発な増加を示しており,資本ストックも高い伸びを維持し,資本装備率の伸びも高い。アメリカ,西ヨーロッパでは投資の低い伸びから資本ストックの伸びも緩やかであり,資本装備率の上昇率も日本に比べ低迷している。その上,技術進歩率も日本より低い。このように,アメリカ,西ヨーロッパでは産業構造調整の遅れがみられることの他,資本装備率の低さが労働生産性の伸びの低さとなっており,イノベーションの遅れとも併せ,日本に比べ低い成長の要因となっていると思われる。
韓国・台湾などのアジアNIEs及びブラジル,メキシコにおいては,工業化の進展と並行する形で設備投資が増加してきた。しかし,アジアNIEsでほぼ一貫して設備投資が高い伸びを続けているのに対して,ブラジル,メキシコでは81,82年以降低迷している (第3-1-4図, 第3-1-5図)。
韓国・台湾で本格的に工業化に着手したのは,韓国が1962年,台湾が1953年(共に第1次経済計画を実施した時点)とみることができる。工業化は当初においては輸入代替から開始されたが,60年代半ばの比較的早期に為替レートを現実化し,輸出インセンティブも税制,利子軽減等の間接的なものとし,また,輸入自由化を始めるなど輸出指向の加工貿易型に移行した。また,産業構造も農林漁業の比率が低下し,工業の比率が着実に高まっているばかりでなく,工業も初期の労働集約的な軽工業から次第に資本集約的・技術集約的な重化学工業へと,産業構造を変化してきている。こうした,常に輸出指向の中で先進国へのキャッチアップを図る形で工業化が進められてきたことから,設備投資は活発であった。
70~73年の韓国・台湾では繊維・同製品,はき物類といった軽工業品輸出の好調を受け,設備投資はこれら部門を中心に高い伸びを示し,年平均上昇率は韓国が17.2%増,台湾が20.1%増であった。73~85年の間は韓国と台湾の設備投資はやや異なっている。韓国では73年の「重化学工業化宣言」の下で総合製鉄所,重化学工業団地の建設等がなされ,設備投資も70~73年に比べやや鈍化したものの,年平均13%の伸びと先進国に比べ高い伸びであった。一方,台湾では第一次石油危機直後に強力な引き締め策が採られ,重化学工業化を目指していた計画の一部中止や延期がなされ,設備投資の伸びは年平均6%と韓国に比べ低いものであった。しかし,計画は全ては達成されながったものの,この間に鉄鋼,石油化学製品等の中間財や資本財の一部は自給率が高まった。85年以降は,ドル高修正の下で日本・欧州製品の価格競争力が低下する一方で,NIEs製品はNIEs通貨が実質的にドル・リンクとなっていたことから,価格競争力が相対的に強化されたこともあり輸出が急増し,設備投資も韓国で23%,台湾で13%と急伸した。また,輸出品の内訳も変化してきており,繊維・同製品,はき物類といった軽工業品のシェアは低下し,電子・電機,輸送機器(自動車,同部品等)などの重化学工業品のシェアが高まっている。
ラテンアメリカの工業化は,アジアNIEsに比べ,その歴史は古く,メキシコ,ブラジルでは,1930~40年代より工業化に着手してきている。しかし,基本的には債務危機の発生した81,82年までの間は,もっぱら国内市場向けの輸入代替工業化として推し進められており,競合する外国製品の輸入抑制や補助金支払い等による国内産業の保護等を行うなど,輸出競争力の付きにくい発展形態であった。これは,概して一次産品が豊富であったためで,アジアNIEsのような人的資源しかない国が比較的早く輸入代替から輸出指向政策に向かったのと対照的である。
メキシコ,ブラジルともアメリカ企業を中心とする外資導入による工業化が推進され,設備投資は70年代初には韓国,台湾と大きな差はない伸びであったが,81,82年に債務危機が表面化してからはマイナスの伸びとなっている。
メキシコでは,70年以降には外資を規制し,国内産業を育成する形で工業化が進められたが,対外債務が拡大した。その後,76年に石油輸出が本格化するとともに,多大な石油収入を背景に重化学工業化を推進した。ブラジルでは,70年代に製鉄所の建設など重化学工業化を積極的に進め,第一次石油危機時においても交易条件の悪化にもかかわらず,対外借入を増大する形で設備投資を行った。
81,82年の債務危機発生後は,両国とも実質経済成長が一時マイナスに落ち込み,その後の回復のテンポも遅くなっている。そうした中,海外からの資金流入の減少,海外への利払いの増大等による投資資金の不足に加え,メキシコでは緊縮政策による財政支出削減,輸入削減などから公的投資が減少し,国内購買力の低下から民間投資も冷え込んでおり,設備投資は低迷を続けている。
また,ブラジルでも,ハイパー・インフレにより国内購買力が大幅に落ち,そのため製造業稼働牢は低下,工業生産も伸び悩んでおり,輸入抑制による資本財の不足などもあり設備投資は落ち込んでいる。これらの国の設備投資比率(機械設備分の対実質GNP比)は70年代の8%程度から82,83年以降には5~6%程度に低下している(韓国,台湾では12~15%程度)。
西側工業諸国に比べて,遅れた農業国として出発した社会主義経済のソ連・中国は,豊富な天然資源と労働力を背景に,急速な産業近代化を推進すべく,重工業を中心に積極的な投資を行い,60年代以降でみても比較的高い投資率を維持している。しかし,ソ連では投資効率の低下とともに70年代後半から急速に成長が鈍化し,中国でも文化大革命初期(66~68年)の経済政策の混乱から成長が著しく停滞した。その後,ソ連では「ペレストロイカ」(改革)の下,投資効率の向上が目標に掲げられており,中国では経済体制改革・開放政策の進展によって計画外投資が増加し,沿海部の軽工業を中心に過熱気味ともいえる高水準の投資が行われている。
ソ連は,第1次5か年計画(1928~32年)以来,経済的・軍事的に強固な社会主義体制を確立して西側工業諸国に早急に追いつくことを目標に,重工業部門を中心に積極的な投資政策を遂行してきた。生産国民所得に占める投資額の割合は3割近い水準で推移しており(第3-1-6図),消費を抑えて蓄積を高め,再生産能力を強化する政策が採られてきた。
60年以降の投資の動向をみると,投資効率(産出/資本ストック)が徐々に低下してきている。これは,①主要な原燃料生産地がウラル以東のシベリア・極東地域の遠隔地に移るに従って原燃料採掘部門への単位生産量当りの必要投資額が増加したこと,②農業部門への投資の増加にもががわらず農業生産の増加が緩慢であったこと,③資本設備の工事・建設の遅延により投資が生産力化するまでの期間が長期化したこと,などが理由として挙げられる。ゴルバチョフ政権は,投資効率の向上を目指して,省資源・新技術装備の設備更新投資の増大,投資の適切な配分,資本設備の建設期間の短縮化,などを積極的に推進するとしている。
中国では,60年代に2度の大きな投資の落ち込みがあった。1度目は重工業を中心に高投資・高生産が推し進められた大躍進期(58~60年)の収束期にあたり,61年に投資が引き締められたことから61~63年の平均投資率(国内総固定資本形成/支出国民所得,前掲第3-1-6図)は低下し,60~62年には経済はマイナス成長となった。2度目は文化大革命初期(66~68年)にあたり,67~69年の平均投資率が低下したことから67,68年には経済は再びマイナス成長となった。
その後70年代以降,経済は比較的安定して推移しているが,投資率はこのところ上昇傾向となっており,経済改革が本格化した第6次5か年計画(81~85年)では計画を大幅に上回る投資が行われた。特に84年以降の改革により,国家に利潤のすべてを上納し賃金・投資資金の配分を受ける従来のやり方から,法人税を導入し企業に賃金・投資基金を残すやり方に転換したため,企業経営の自由度が増し,投資が急増して過熱傾向となっている。このように,抑制と過熱を繰り返しなからも,これまでの5か年計画では投資実績が計画を全て上回っており,中国の投資意欲は総じて強かったものとみられる。
しかし,急激な投資の伸びは,原材料・燃料等のひっ迫や銀行貸出量の増加を通じてインフレ圧力を増す(小売物価上昇率88年1~9月期前年同期比16%)として,86年以降投資規模は前年比横ばいに抑えると計画されているが,有効な引き締め策がないことから,投資は拡大傾向を続けている。
日本,アジアNIEsでは活発な設備投資の下,成長率も高く,貯蓄率も高い。一方,アメリカ,西ヨーロッパでは設備投資の伸びは緩やかであり,成長率,貯蓄率も日本等に比べ低い。対外面との関係でみると,経常収支黒字国は日本,アジアNIEs,西ドイツなどであり,西ドイツを除いて,高投資国である。これに対して,経常収支赤字国はアメリカ,西ドイツを除く西ヨーロッパ,ラテンアメリカなどの低投資国である (第3-1-7図)。貯蓄率が高いことは,それが国内資金コストを低めることから,投資率を高める要因として通常重視されている。しかし,同時に投資率が高いと貯蓄率を高めることが可能であると言える。つまり,技術進歩率や生産性上昇率が高いと,投資の期待収益率が高く,投資率が高く,資本蓄積率が高くなる。このため生産性,国際競争力がより高まり,長期的には貿易は黒字,従って貯蓄率は投資率よりも高くなることが考えられる。経常収支不均衡の縮小が課題となっている現在,技術進歩率,生産性上昇率,設備投資率の低い国はこれを長期的に高める必要がある。また,これらの高い国では,内需主導型の成長に移行することが基本であろう。日本は産業構造調整も進展している他,内需主導の下で高成長を果たしており,良好なパフォーマンスを示している。今後とも国際分業を推進しつつ,国内産業をより高付加価値部門へ移行することにより,引き続き協調ある発展に寄与すべきであろう。アジアNIEsでは輸出先の多角化,輸出品の高級化に努める一方,内需を喚起し成長を維持することが求められている。経常収支黒字国であり,かつ低投資国の西ドイツは,外需依存型の構造を変えることが重要であろう。このためには,競争力の衰えた産業への保護等を縮小する一方,新規産業での投資を活発化するなどにより,内需を高めるべきである。また,第3節で述べるように高失業の状態が長期間にわたって継続しており,雇用の拡大が急がれる。
経常収支赤字国をみると,アメリカ,西ドイツを除く西ヨーロッパ,ラテンアメリカなどであり,いずれも投資の伸びは低い。アメリカでは87年央から輸出の増加を背景に設備投資が増加し,貿易赤字も改善傾向にあるものの,今後も競争力強化に務め,貯蓄率を高めることが課題であろう。西ドイツ以外の西ヨーロッパでは国際競争力を強化する大前提として,第3節で述べるように,労働市場の硬直性の除去,企業家精神の回復が課題である。このことは西ドイツにも当てはまる。ラテンアメリカ諸国では投資資金が不足し,インフレが高進している。直接投資を受け入れるなどして,投資を高めるべきであろうが,そのためには,インフレの抑制と投資環境の改善が急務である。