昭和62年

年次世界経済白書

政策協調と活力ある国際分業を目指して

経済企画庁


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昭和62年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

1987年末の時点で世界経済を概観しますと,アメリカ経済は,5年余りにわたる拡大を続けており,雇用情勢も改善してきています。西ヨーロッパ諸国の経済も,緩やかながらも拡大を続けており,また,物価はアメリカ,西ヨーロッパとも比較的,落ち着いた状態であります。一方,発展途上国では,NICsの一部で経済の目覚ましい拡大がみられるほか,86年に一次産品価格の低下の悪影響を受けた国でも回復の兆しがうかがえます。

このように,世界経済は実体面では,物価が比較的落ち着いた中で,息の長い景気拡大を続けてきたといえます。しかし他方では,累積債務問題が継続しているほか,アメリカの経常収支赤字を中心とする世界的な国際収支不均衡は依然大幅であり,世界の証券市場や国際通貨市場に好ましくない影響を及ぼしたことも事実であります。我が国としても,こうした世界経済の問題に対処するため,各国との政策協調のほか,自由貿易の維持,強化に率先して行動し,「国際公共財」への貢献を増大させることが重要であると考えられます。

第25回目の世界経済報告に当たる本報告は,世界的な国際収支不均衡の問題を取り上げ,アメリカを中心とする国際収支不均衡の背景,現状,及び世界経済への波及について検討するとともに,より長期的な,国際分業の新たな展開について,環太平洋地域を中心に検討しております。

本報告が世界と日本の経済の進路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。

昭和62年12月11日

中尾 栄一

経済企画庁長官


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