昭和59年

年次世界経済報告

拡大するアメリカ経済と高金利下の世界経済

経済企画庁


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第2章 高金利下のアメリカの景気拡大

アメリカの高金利は世界経済に様々な影響を投げかけており,80年代に入ってからの世界経済の最も重要な問題となっている。高金利に伴うアメリカへの資本流入の増加は,従来の国際資本移動の流れに大きな変化をもたらし,さらに,世界的な高金利の原因ともなっている。中南米諸国等の累積債務問題,日本やEC等における景気回復,為替レート,経常収支等の問題を考える上でも,アメリカの高金利は避けては通れない問題である。

アメリカの高金利の原因としては,減税・支出増等に伴う財政赤字の拡大,金融引締め等の経済政策面からの影響に加え,最近では技術進歩等に伴う投資の期待収益率の上昇等アメリカ経済の基礎的条件の改善が重要な役割を果たしていることが認識されるに至っている。

本章では,アメリカの今回の景気拡大の特徴を概観した(第1節)後,高金利(第2節)並びにアメリカへの資本流入,すなわち経常収支赤字の原因について分析する(第3節)。さらに,大幅な経常収支赤字を抱えるアメリカと,近年,経常収支の黒字傾向を強めている日本とを比較し,このような相違が生じている要因を分析する。最後に,このような変化の結果,必要性の高まっているアメリカ国内並びに海外における新たな調整問題のうち,ここではアメリカ国内における産業調整問題を検討する(第4節)。


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