昭和59年

年次世界経済報告

拡大するアメリカ経済と高金利下の世界経済

経済企画庁


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昭和59年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

1984年末の時点で世界経済を展望しますと,先進国のうちアメリカでは景気の拡大速度に鈍化がみられるものの,設備投資等を中心に拡大を続けており,雇用情勢も緩やかに改善しています。西ヨーロッパをみると,景気は回復基調にあるものの全体としての回復力は弱く,雇用情勢も引き続き厳しいものとなっております。他方,インフレは鎮静化傾向にあり,景気回復に貢献しております。

一方,発展途上国をみますと,先進国向け輸出の増加から景気が上昇を続けている国がありますが,累積債務問題を抱えた国々等の困難は依然続いております。

このように世界経済は,国別,地域別のばらつきはあるものの,全体として景気回復基調にあります。しかし,その原動力であるアメリカの景気拡大の持続性については,財政赤字と経常収支赤字が大きいことから,懸念される面もあり,また,アメリカに発する高金利・ドル高の下で他の国々は厳しい対応を迫られています。

こうした中で世界経済はインフレなき成長を持続させる努力を進めております。我が国も,世界経済に占める地位と役割を十分自覚して,世界経済に積極的に貢献することを目指すべきものと考えます。

第22回目の世界経済報告に当たる本報告は,アメリカの高金利の原因とその世界経済に与える影響を分析するとともに,今後の世界経済にどのような調整が求められているかについて検討しています。

本報告が世界と日本の経済の進路を考えていく上で参考となることができればまことに幸いです。

昭和59年12月14日

金子 一平

経済企画庁長官


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