昭和57年度年次世界経済報告の公表にあたって

1982年末の時点で世界経済を展望しますと,先進国では米国の景気はなおはっきりした底入れを示しておらず,西欧諸国の景気も停滞しています。その結果,第二次石油危機後の先進国経済の停滞は長期化しております。そして,これらの国々で失業が激増し,世界貿易の縮小が生じていることもあって,貿易摩擦,保護貿易主義的圧力が一段と高まっています。他方,引締政策の継続等により,物価及び賃金上昇率の騰勢が鈍化し,また石油需給は緩和を続け,石油価格の低下傾向が生じています。

一方発展途上国をみますと,先進国向け輸出の減少,一次産品価格の低落等から経常収支も悪化し,債務は増大しています。一部の国では返済困難が表面化する等,その経済は困難の度を一層深めています。

こうした中で先進諸国はインフレの騰勢鈍化等を足がかりに停滞を打開し,持続的成長を実現するための努力を進めてまいっております。我が国も世界経済におけるその地位にふさわしい責任と指導力をもって,保護貿易主義的圧力の抑制,債務累積問題解決への協調,経済協力の積極的推進等を通じて世界的景気停滞の克服に貢献していく必要があると考えます。

第20回目の世界経済報告にあたる本報告は,世界経済の停滞長期化の実態とその原因を分析するとともに,今後の世界経済の回復と持続的成長への諸課題を検討しています。

本報告が世界と日本の経済の進路を考えていく上で参考となることができればまことに幸いです。

昭和57年12月24日

塩崎　潤

経済企画庁長官