昭和56年
年次世界経済報告
世界経済の再活性化と拡大均衡を求めて
昭和56年12月15日
経済企画庁
第2章 世界的高金利の出現とその影響
80年以降世界経済は異常な高金利に見舞われた(第2-1-1図)。これは基本的には主要国がインフレ抑制のため金融引締め政策を長期にわたって維持しているためである。実質通貨供給量の伸びは多くの国でマイナスとなった (第2-1-2図)。
まずアメリカについて今回の引締め期と前回(73~74年時)の場合を比較してみると,今回の場合次のような特徴があげられる。
①金利の絶対水準がきわめて高くなり,戦後最高水準に達したこと。
すなわち,公定歩合の最高水準は前回が8%(1974年4月25日~12月9日)であったのに対し,今回は14%(1981年5月5日~10月30日)に達した。
大手銀行に対する高率適用上乗せ率を含むと18%(1981年5月5日~9月21日)となる。また,TB(財務省証券),CD(譲渡可能定期預金証書),プライムレート等の市中金利も大幅に上昇した。商業銀行のプライムレートのピークは,前回が12%(7伴7月)であったのに対し,今回は21.5%(80年12月)に達した
②実質金利がかなりの期間大幅なプラスとなったこと。
たとえばTB金利を消費者物価の前年同月比上昇率で調整した実質金利をみてみると,前回はマイナスであったが,今回の場合は80年末より3~6%程度の大幅プラスが続いた。
③とくに短期金利が乱高下した月こと。
フェデラル・ファンド・レートでみてみると,前回の場合,ピークとボトムの差は7%程度であったのに対し,今回の場合は10%以上に達し,また,日々,週ごとのごく短時間での変動も大きかった。
西ヨーロッパ諸国をみると,西ドイツでは金利の絶対水準は73年の去がやや高い。しかし,前回引締め時には金利は急上昇してピークに達したあと,速やかに下降したのに対し,今回は金利が急上昇したあと,79年末から81年初まで高水準で横ばい,その後特別ロンバート制の導入によって市中金利はさらに水準を上げ,またその水準で横ばいで推移している。この間実質金利は一貫して上昇傾向をたどった。
イギリスでは金利の絶対水準が今回の方が高く,また長短金利の逆ざやも生じた。さらに前回の引締め期においては,名目金利が横ばいを続けるなかで実質金利は低下を示していったが,今回は名目金利の上昇にともなって実質金利も上昇した。
フランスでは81年5月以降金利が急騰し,73~74年のピークをはるかに上回る高水準に達した。実質金利もこれにともなって急騰した。
イタリアでも80年初来金利が急上昇し,74年,76年のピークを上回る水準へ上昇している。特に今回は長期金利の上昇が著しく,その水準は短期金利を上回っている。