昭和55年

年次世界経済報告

石油危機への対応と1980年代の課題

昭和55年12月9日

経済企画庁


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昭和55年度年次世界経済報告の公表にあたって

世界経済は現在,第二次石油危機に対する調整過程のさなかにあります。

アメリカの景気は底入れしたもののインフレの鎮静化は不十分であり,先行き再び停滞が予想されており,西欧諸国も景気後退を続けております。もっとも今回の石油ショックの影響は,石油消費国の対応がインフレ抑制を中心に総じて良好だったため,前回程深刻なものとはなっておりません。

しかしながら,世界経済の先行きを見ますと,石油をめぐる不確実性,インフレが再燃する可能性,主要国の同時的引締め政策が景気後退を深める可能性等,多くの問題があります。このため物価の安定と景気の維持を確保する道は世界的にもいぜんとして狭いものであります。

こうした中で我が国経済は,国際的にみて優れた成果を示しており,その経済力にふさわしい責任と指導力をもって経済協力の拡充,脱石油の推進等を通じ世界経済全体の運営に一層積極的に参加していく必要があると考えます。

本報告は1970年代の世界の潮流変化を踏まえ,石油危機への対応,オイルマネーの環流問題,供給管理政策等,80年代の課題を中長期的観点から分析しておりますが,本報告が世界と日本の経済の進路を考えていく上で参考となることができれば,まことに幸いです。

昭和55年12月9日

河本 敏夫

経済企画庁長官


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