第1章 1978年の世界経済

戦後最大の不況からの回復第3年に当る1978年の世界経済は,前年につづいて,緩慢な成長のうちに終ろうとしている。

OECD加盟国全体の実質経済成長率は,回復期にありながら77,78年と2年続いて,石油ショック前の平均成長率を大きく下回ると見込まれている。一方,発展途上国では全体としてみると比較的高い経済成長が維持されている。しかし,世界貿易め大半を占める先進国の成長が緩慢なために,世界貿易数量の伸びも77年以来緩やかなものにとどまっている。

国際収支状況をみると,74年以来巨額にのぼっていたOPEC諸国の経常収支黒字は,78年に入って目立て減少し,その反面,先進工業国全体としての経常収支はかなりの改善をみせている。しかし,主要国の経常収支には,アメリカの赤字,日本,西ドイツなどの黒字と,大きな不均衡がみられる。これにアメリカにおけるインフレの加速も加わって,77年央以来,国際通貨市場は動揺をつづけ,とくに米ドルは大幅に低下した。

本章ではまず先進国の景気動向の特徴と国際収支動向を検討し,つぎに発展途上国と共産圏諸国の最近の経済動向を概観する。