昭和46年

年次世界経済報告

転機に立つブレトンウッズ体制

昭和46年12月14日

経済企画庁


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第2章 揺れ動く国際通貨体制

アメリカは新経済政策の一環として,ドルの金への交換を停止した。これによって,IMF体制の枠組の中でも重要な固定為替相場制は,主要な国のほとんどで,その機能を停止せざるをえなくなった。

IMF体制はIMF協定の精神を実現すべく基金および加盟国によって現実に運営されている体制であるが,その実体を形成する国際通貨体制自体の変容によって,重要な機能の一つを停止することになったのである。

現在までの国際通貨体制のもっとも大きな特徴は金ドル本位制であり,その限りでは,IMF体制は基軸通貨たるドルに支えられていたといえる。ここで基軸通貨を金との交換性を有している通貨の意味に限定すると(国際取引通貨,準備資産としての通貨,介入通貨などの諸機能をさす場合もあるが),そういった意味では,これまで米ドルが事実上,唯一の基軸通貨であった。

しかしながら,ドルはアメリカの通貨であり,その価値維持はアメリカの経済運営ないし負担にゆだねられている。経済運営の対外的成果は国際収支に現われるが,アメリカの基礎収支赤字は最近になって急速に悪化し,それまでに累増したユーロダラーの動きが国際投機を誘発して,ついにドルの信認が失われるにいたった。このように世界経済が大きく変貌した現在IMF体制の運営は見直される時機にきているといえよう。

本章では,以上のような流れに即し,第1節では今回の危機との関連においてIMF体制を眺め,第2節ではアメリカの国際収支,第3節では平価調整問題,第4節ではユーローダラーの問題をとりあげ,第5節としてようやく発足をみたEC通貨同盟を付加える。


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