昭和46年
年次世界経済報告
転機に立つブレトンウッズ体制
昭和46年12月14日
経済企画庁
第1章 1971年の世界経済
1971年の先進国経済は,北米が緩慢な景気回復に向う一方,ヨーロッパ,日本の景気は概して停滞気味に推移した。それとともに,1968年以降の世界貿易の記録的ブームもしだいに鎮静化しつつある。全般的に生産活動が低迷気味なのにもかかわらず,世界的にインフレの高進は収まらず,スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)の色を濃くする国が目立った。先進国の停滞を反映して,発展途上国の輸出は伸び悩み,それにつれて生産拡大のテンポもやや鈍った。こうしたなかで社会主義国ではソ連,中国ともほぼ順調な生産上昇を続けた。
北米とヨーロッパ,日本の間の景気局面のずれは,1960年代後半から傾向的に悪化していたアメリカの国際収支をさらに破滅的に悪化させ,ついにアメリカは戦後自由世界の経済を支えていたブレトンウッズ体制を根底から揺り動かす緊急新経済政策を発表するにいたった。
本章では,1971年の世界経済の動きをアメリカの新経済政策発表の前後に分けて概観し,現時点での世界経済の位地を確認することとする。