昭和44年
年次世界経済報告
国際交流の高度化と1970年代の課題
昭和44年12月2日
経済企画庁
第1部 1969年の世界経済の特色
第3章 国際収支黒字国と赤字国の発生
まず,1960年代に入ってから,主要国の国際収支がどのような推移をたどったかを,金外貨準備の増減によってみると,第17表にみられるように,アメリカ,イギリスはすう勢として赤字基調を続けている。一方,フランスは,60年代前半は黒字基調にあったが,60年代半ば頃から黒字幅が縮少しはじめ,68年以降はついに赤字国に転落した。これに対し,イタリアは一貫じた黒字基調を続け,西ドイツも60年代半ばに資本流出の増大によって一時的な赤字を示したものの黒字基調を維持した。また日本も60年代半ばに赤字を示したが,68年以降黒字国となっている。
このような国際収支の黒字国と赤字国という二つのパターンは,主として貿易収支面での変化によってもたらされたものであった。つまり,貿易収支面での変化が経常収支,基礎収支に大きく影響して,前述のような金・外貨準備面の増減がもたらされたものといえよう。そこで国際収支黒字国と赤字国の貿易収支をみると,第18表のように60年代初めには,イギリス,フランスといった現在の赤字国のほうが,西ドイツやイタリアなどの黒字国よりもはるかに大きな黒字を出していたが60年代中頃になると,赤字国では黒字幅が縮少し,逆に黒字国では黒字幅が拡大していった。最近では,この傾向が一段と進み,赤字国では貿易収支面においても赤字を出すに至っている。そして,黒字国は赤字国の喪失分をほぼそのまま受取った形となったため,この黒字国,赤字国の国際収支格差は年平均約60億ドルときわめて大幅なものとなってしまったのである。