昭和42年

年次世界経済報告

世界景気安定への道

昭和42年12月19日

経済企画庁


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第2部 世界の景気変動とその波及

第2章 低開発国の経済変動

1. 低開発国経済の成長と変動

国連が「開発の10年」を掲げてから,相当期間を経過し,早くも終盤に入ろうとしている。しかし低開発国経済の成長テンポは著しく伸び悩み,先進国との経済格差は拡大の一途をたどっている。

1968年2月の第2回国連貿易開発会議に備えて67年10月にアルジェで行なわれた低開発国グループの会議では,先進国との格差を是正し開発を進めるための強い熱意と団結を示した。もとより,先進国においても世界経済の持続的,均衡的発展を進める立場から,貿易の拡大と援助の促進を通じて低開発国の当面する課題の解決に一そうの努力が払われようとしている。 国連貿易開発会議を契機に,今日,論議の焦点にある低開発国に対する特恵供与はその具体化の一つとみることができる。

ここでは,低開発国の経済成長をやや長期的にふりかえり,成長過程において低開発国経済がどのような変動を示してきたかをみてみよう。

まず,低開発国経済が60年代前後にどのような成長過程をたどってきたかを東南アジア諸国を例にとってみることにしよう。第70図に明らかなように,56~60年においては各国ともほぼ4~6%台の成長率を示したが,60年代に入ると各国間の成長率の差がかなり目立っている。その中でも,台湾,韓国,タイの高成長に対しインドの伸び悩みがとくに目立っている。

このような成長力の差はどうして生じたのであろうか。まず,国内要因としては農業生産の変動があげられる。すなわち,台湾,韓国,タイなど60年代に入って高成長を示した諸国はおおむね農業生産力の向上にかなりの成果を収め,それを通じて着実な工業化への足がかりを築いた。これに対し,50年代に比べ成長率が伸び悩みを示しているインドにおいては,農業生産の著しい停滞を招き,そのため工業部門の沈滞を生むなど,その余波は国民経済全体に及び成長力をかなり弱めている。

第71図 先進国の生産,貿易と低開発国の貿易

一方,国内要因と並んで海外景気の波及も貿易や商品相場の変動を通じて低開発国経済に大きな影響を与えている。たとえば,第71図は先進国の生産と輸入の動きが低開発国にどのように影響したかを貿易面からみたものである。それによると,先進諸国の景気後退が重なった52年と58年には低開発国の輸出はかなりの低下を示し,輸入もその影響を強く受けていることがわかる。しかし,その影響の受け方は,低開発国の輸出商品構造や輸出依存度の相違によりかなりの差を示している。


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