昭和42年
年次世界経済報告
世界景気安定への道
昭和42年12月19日
経済企画庁
第2部 世界の景気変動とその波及
第1章 世界工業国の景気変動
戦後の世界工業国の景気変動の特徴は,戦前にみられたような恐慌ないし深刻な大不況が生じなくなったことである。戦後これまでに,すべての工業国はそれぞれ何回かの景気後退を経験してきたが,戦前のそれに比較すると景気後退は一般に小幅で,また短期間にとどまった。
これをアメリカについてみると,戦後の景気後退の持続期間は8ヵ月から13ヵ月であって,戦前の景気後退の平均持続期間が21ヵ月であったのに対して,かなり短かかった。また,景気の山から谷までの工業生産の低下率でみると,戦後の景気後退期における生産低下は6~14%であった。これに対して,第1次大戦と第2次大戦にはさまれた時期の景気後退期のそれは6%から52%にもおよんだのであった。景気後退が戦前より小幅化し,かつ短期化したことは,アメリカのみならず他の工業国においても共通している。
第49表は,主要工業国の工業生産について,戦前と戦後の増減率変動の偏差を示したものであるが,これによっても欧米各工業国の景気の変動幅は戦前に比べると著しく小さくなったことがわかる。
このように,戦前に比べると戦後の景気変動は小幅とはなったものの,その半面各国はこれまでに景気後退を回避することはできなかった。以下,世界の工業国の景気変動の足どりとそのパターンについて考察してみよう。