昭和41年

年次世界経済報告 参考資料

昭和41年12月16日

経済企画庁


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第5章 イタリア

3. 1967年の経済見通し

これまでのところ,イタリアの景気上昇はかなり順調にすすんできたとみることができる。生産能力にはまだ余裕がみられ,内需の堅調化に加えて輸出の伸びも大きいところから,当分この景気上昇は持続するとみられている。しかし,今後の上昇過程において国際収支が再び赤字に転じ物価が上昇幅をたかめる可能性がないとはいえない。とくに現在みられる物価の安定は,主として,景気回復の現段階における生産性の上昇と賃金率の相対的安定による賃金コストの低下によってもたらされたものであり,この条件は景気上昇がすすむにつれて消失するとみられるからである。したがって再びインフレーションを招くことなく景気上昇を持続するためには今後の経済政策の運営はいっそう困難さを増すとみられる。

67年の経済動向に関連して注目される予算案は引き続き景気支持の方向を示しているようである。すなわち,歳出規模の拡大が前年よりも大幅であり(9.1%から11.7%増へ),総合収支赤字は増加率の鈍化を示しながらもなお前年を30%以上も上回る増加となっていること,さらに,この赤字額が歳入総額に占める比率でみても大幅な増加(25.2%から49.6%へ)を示していることなどがあげられる。歳出内訳では,前年減少を示した投資支出が増加に転ずること,また前年大幅な支出増をみた国債償還支出などが若干減少を示しながらもまだかなりの高水準に止っているという特徴がみられる。

このように67年予算は前年よりも景気刺激効果がやや大きいとみられる。

これは景気上昇の3年目にはいるイタリア経済にとってかならずしも好ましいとはいえない。とくに,この局面ではコストおよび物価の上昇を抑制するような政策をとる必要性が増しているにもかかわらず,歳出規模をGNP成長率の増加率のわく内におさえるというEEC委員会のインフレーション対策の基本方針を逸脱していること,なかんずく,経常支出の伸びが投資的支出の伸びを大幅に上回っていることなどは問題であろう。

なお今後の政策運営に関連して,現在議会の最終的審議を受けている新ヵ年計画の実施が注目される。新5ヵ年計画は当初1965-69年について立案されたが,内容の審議に時間がかかり,その間に政権交替や政治不安があったことからいまだに最終的な成立をみていない。新5ヵ年計画の主要目標は,イタリア経済のこれまでの発展過程にみられた部門間,地域間の不均衡を今後,15年ないし20年間に是正して持続的成長のための基盤を整えることにある。この目的を達成するために,計画は最初の5ヵ年間における国民所得の平均年増加率を5%と設定し,物価の安定と国際収支の均衡を維持すると同時に,財政・金融面などの制度上の改革を行なう必要があることを指摘している。実現すべき個々の目標,政策,措置については,1年ごとの決定ではなしに,期間全体についての計画が示されているに止まり,短期的経済動向に見合わせて弾力的に運営する余地を残しているという特徴がみられる。

1967年の国民総生産は,政府がこのような政策の運用に成功して,インフレーションの再発がないとすれば,少なくとも5%の上昇を達成できると政府はみており,OECDは5.5%,EEC委員会も5~6%の成長率を予想している。

第5-3表 イタリアの1967年予算案


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