昭和41年
年次世界経済報告 参考資料
昭和41年12月16日
経済企画庁
第4章 フランス
第4-1表のように,65年に3.5%に落ちこんだ国内総生産上昇率は,景気の回復にしたがって66年には順調な高まりをみせたが,これを支えたのは,65年後半から堅調となった消費需要,若干鈍化したがなおかなり増加した政府支出,公共投資,輸出,および,ようやく勢いを得た民間企業設備投資であった。
63年以降伸び悩んだ民間企業設備投資が上昇に転じて,需要拡大要因に加わり,これが,春から,景気上昇をほとんどの産業部門へ波及せしめたことは特筆に値いする。しかし,65年央まで生産活動の主柱であった住宅建築・公共土木事業は,家計部門の需要および政府の着工数減少によって65年後半から停滞を続けている。
農業生産は,豊作であった65年の5.8%増にはおよばず,果実の収穫減少や小麦,甜菜などの作付面積減少のために植物性農産物は軽微な低下をみたが,畜産が引き続き好調であったため,64年なみの1.2%(政府予測)の上昇となった。
鉱工業生産は,65年央から年率7%のテンポで増加してきたが,66年春の公共企業を中心とするストライキの影響などによってやや落着いた動きを示すようになり,66年は6%増(政府予測)となった。これは,65年平均増加率3%と比べて著増であり,62~63年ころのブーム時の増勢には及ばないが,59~65年の年平均増加率と等しい良好な伸びであった。
消費財部門では,65年後半から伸びた乗用車生産が66年にはいって記録的高さを続けたほか,繊維,皮革などについても上昇がみられるなど,生産財部門に先がけて活発化したが,後半以降生産の上昇は強まっていない。
また,輸出の伸びや民間企業設備投資の回復によって,機械をはじめ生産財部門の生産上昇も注目される。
しかし,製鉄や造船は国際競争力の低下により引き続き不振であり,とくに,造船は衰退をきわめた。これらの産業について政府は融資などの援助をふくむ再建計画をだすことを余儀なくされた。
63~65年央まで非常に活発であった住宅建築は,65年央以降鈍化し,着工数は66年上期に前年同期比8.6%減少した。これは主として65年後半から,自動車をはじめとする耐久消費財購入の増加などによって一般大衆の住宅購入が減少したことや,政府部門の着工の遅れなどによるものである。これに反して,政府援助によらない高級住宅建築は65年以来増加を続けているが,最近はパリ地区で,66年1~10月に新築高級住宅の空屋が総住宅供給数の24%(65年同期13%)にのぼるなど,その高値のために過剰が目立っている。
他方,雇用面についてみると,求人数が第4-3図のようにいまだ不況前の64年前半の水準に達せず,求職数ならびに失業者数は当時よりかなり多く,労働市場の緩和が続いている。これは,①第3-4表のように新規労働力増加の大きな波がきたこと,②建築部門の雇用減少,③企業統合の進展に伴ない転職希望や失業が増加したことなどによる。このため,職業訓練,再教育など適応性の養成,中高年齢者雇用促進の問題が表面化した。賃金上昇圧力は,このような事情を反映して弱まった。
また,66年の総個人所得は7.6%増で,65年を上回り,社会保険負担もより速やかに増額し,可処分所得は7.3%増,1人当り実質可処分所得は3.3%増となり改善された。