昭和41年

年次世界経済報告 参考資料

昭和41年12月16日

経済企画庁


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第1章 アメリカ

1. 1965~66年の経済動向―インフレの昂進―

1961年2月を景気の谷として,回復・上昇に転じた景気は,66年になっても拡大基調を持続している。戦後4回目にあたる今回の景気上昇は,平和時として最長のものであり,戦後景気拡張期がだいに短縮されてきたいままでの傾向とは好対照をなしている。しかも60~65年の経済成長率は年平均4.7%(実質)となり,朝鮮動乱の影響などにより戦後高成長を統けた50~55年間(同4.3%)を上回った。

こうして,61年初来,ケネディ,ジョンソン政府の掲げた完全雇用目標は一応66年に達成された。景気回復期の61年初では遊休設備や労働力を大量にかかえ,また戦後ベビーブームが原因した新規労働力の大量投入などインフレなき拡大に大きく寄与した要因も好況の持続とともにしだいに薄れ,需給ギャップが縮小するとともに65年以降資材や労働力の不足が目立つようになり,農産物不作などの影響も加わって,65年後半から物価も上昇基調を強めている。さらに65年央以降におけるベトナム軍費の急増も,インフレ圧力に拍車をかけた。一方,旺盛な設備投資は企業の外部資金依存度を高め,65年後半からの金融ひっ迫は強くなり金利は騰貴した。

65年の国民総生産(GNP)の実質成長率は5.8%に達し,前3ヵ年平均よりも高かったが,66年第1・四半期にはいっても,実質成長率前期比6%(季節調整済み,年率)とほぼ65年の高成長を持続した。これは個人消費支出の堅調,設備投資の好調,政府購入の拡大などに支えられたものである。しかし,第2・四半期になると,経済拡大テンポはかなりの鈍化を示し,国民総生産で前期比実質2.0%増(季節調整済み,年率)・にとどまった。自動車を中心とする個人消費支出の減少が原因であるが,住宅建築の不振も原因している。他方設備投資は相変わらず旺盛であり,ベトナム戦の影響による政府購入の増大や,在庫投資の増大(ただし,これには自動車の売行減による自動車在庫増も一因であった)とともに第2・四半期の景気を押し上げる効果をはたした。第3・四半期の国民総生産は,個人消費支出の立ち直りと軍事支出増に支えられて,実質成長率で前期比4.4%(季節調整済み,年率)と前期と比べやや回復を見せたものの,鉱工業生産は鈍化傾向を示している。

すなわち66年にはいってから鉱工業生産は第1・四半期の前期比3.5%増に比べ,第2・四半期2.2%増,第3・四半期1.7%増となった。工業生産の鈍化現象は消費財生産(とくに自動車などの耐久消費財)の伸び悩みを反映しているが,製造業の操業率も消費財生産の不振が原因で,2~8月90.5%の高操業から9月には89.5%へやや低下した。自動車の不振は,製造業新規受注や製造業出荷,小売売上にも悪影響を及ぼしている。失業率も66年4月以降生産活動の鎮静化を反映して下げどまり傾向になった。これには新規労働力の追加投入効果が65年後半から現われたことも原因している。

他方,国内の需給ひっ迫は対外不均衡を生み,66年になると輸入が工業完成品を中心に急速に伸び,貿易黒字は大幅に減少した。,加えてベトナム戦争による海外軍事支出が激増したため,経常収支が大幅に悪化した。他方,ドル防衛の強化により資本収支が改善したため,総合の赤字幅の拡大を抑えた。

以上66年の動きをまとめてみると,第1に完全雇用が達成されたこと,第2に,今回の景気拡大に特徴的であった安定的な高成長には物価や金利の騰貴という困難な問題が生まれたことである。第3に,需要面では設備投資が景気上昇をリードし,それにベトナムによる軍事支出の膨張が加わったことである。半面で自動車需要に衰えがみえ,また住宅建設がいぜん不振であった。第4に相続くドル防衛策にもかかわらず国際収支は改善せず,とくに経常収支の-大幅な悪化がみられたことである。

第1-1図 主要経済指標

第1-1表 国民総生産

第1-2図 製造業の生産

第1-2表 国民総生産増


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