昭和41年

年次世界経済報告

昭和41年12月16日

経済企画庁


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第3章 先進国のインフレーション

1. 物価上昇の特徴

近年の主要先進国の物価上昇に共通してみられる主な特徴は,おおよそつぎのようなものであった。

第1に,すべての国で消費者物価が卸売物価をかなり上回るテンポで上昇してきたことである。この特徴は,50年代後半についても,60年代前半についても変化していない。

第2に,卸売物価の下方硬直性が増大し,景気後退期においても卸売物価が従来ほど低下しなくなってきていることである。第25表にみられるように,景気後退期の卸売物価は,工業生産に比べても低下幅を狭めている。たとえば,近年の景気後退期におけるアメリカやイギリスの卸売物価はむしろ持続的に上昇していたし,フランス,イタリアあるいは日本などでは卸売物価の低下幅が小さくなっている。

第3に,消費者物価は多くの国で60年代にはいって上昇率が高まっているが,これは,家賃,サービス,食料価格の上昇によるところが大きい。いま主要6ヵ国平均の費目別消費者物価の上昇率をみると,①住居費は長期的に大幅な上昇が続いており,②食料費,保健衛生費は期を追って上昇率が高まり,教養娯楽費は騰勢に鈍化を示しながらも上昇を続け,④被服費,酒類なども,とくに最近における上昇幅が大きい。

第24表 主要国の物価上昇率

これをさらに国別に比較してみると,それぞれ特徴のある動きがみられる(付表第3表参照)。まず住居費では,地代,家賃,維持費がアメリカを除いていずれも,急上昇を示しているのに対して,アメリカでは家具類の上昇が大きい。食料費については,肉および乳製品の上昇傾向が強い欧米と,野菜,穀類などの植物性食品価格の上昇が目立つ日本とが対照的である。保健衛生費のなかでは,薬剤,石鹸などの工業品よりも,医療費,理容費などのサービス的費目の上昇率が各国とも大幅である。

第36図 主要6ヵ国の費目別平均消費者物価上昇率

交通通信費は,各国とも公共料金の値上げが大きいため,上昇テンポの高まりがみられる。教養娯楽費の上昇は,欧米諸国では50年代末から60年代初めにかけて大きく,その後鈍化を示したが,日本では上昇率の高まりがみられる。また各国とも,書籍などの教養費よりも観覧料などの娯楽費の上昇が大きい。

つぎに,費目別の消費者物価上昇に対する寄与率をみると(第37図)いずれの国でも上昇率の大きいサービス,家賃,食料の物価全体の上昇への影響が圧倒的に大きい。各国相互間の相対的な比較でいえば,西欧諸国や日本は食料品価格上昇の寄与率が高いのに比べて,アメリカではサービス価格上昇の寄与率が高い。また財貨(とくに工業品)価格上昇の寄与率は,とくに労働力不足傾向が強い西欧諸国においてかなり高く,アメリカ,カナダでは低いという相対関係がみられ,近年の日本ではとくに低くなっている。


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