昭和38年
年次世界経済報告
昭和38年12月13日
経済企画庁
世界経済に関する年次報告は,昭和34年からはじめられ,今回は第5回目のものであります。この報告の目的は,過去およそ一年間の世界経済の動向を概観するとともに,そこに流れる重要な問題を分析し,それによって日本経済の進むべき道を示唆することにあります。
1962~1963年の世界経済の動きをみますと,自由経済圏では,前年に引き続いておおむねゆるやかな成長を続けています。特にアメリカの好況期間がいままでより長くなったこと,西欧でも息の長い好況を続けていることなど,総じて各国の成長政策を反映して好況期間が長びいていく傾向がみられ,本年も,欧米では引き続きほぼ同様の成長を続けるものとみられます。しかしながら,このような自由諸国の息の長い成長過程のなかで,西欧諸国を中心にした物価の上昇,ドル防衛の新展開と国際流動性増強の必要性,ガット関税一括引下げ交渉とEECの動き,あるいは低開発諸国の輸出促進の要求などの諸問題がで出てきています。このような間題は,一面では長い成長の過程であらわれたひずみであり,他面では世界の開放体制を一層推し進め,国際分業をさらに強化しようとする動きのなかから生じてきたものと思われます。この年次報告では,各国政府や国際機関がこれらの問題解決のためにどのような努力を払っているかを明らかにすることに努めました。
IMF八条国移行とOECD加盟を目睫にひかえた日本経済は,これからきびしい経済環境のなかで安定成長を基調としつつ産業構造の高度化と国際競争力の強化に一段と努力しなければなりませんが,同時に,われわれは,こんご世界各国の相互理解のもとで国際的な協調を一層強力に推し進めねばならないと思います。
わたくしは,この報告が世界経済に対する国民の認識を高め,またそのなかにおかれた日本経済の理解に役立つことを期待致します。
昭和38年12月13日
宮 沢 喜 一
経済企画庁長官