昭和37年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
昭和37年12月18日
経済企画庁
第2部 各論
第3章 東南アジア
東南アジアの輸出は62年にはいって,61年第3四半期以降の減少傾向を脱し,回復し始めたようだ。これは米,すずの輸出好調と,茶,コプラなどの輸出数量の回復等を反映したものと思われるが,下期について輸出の増加傾向が,そのままつづいているとは断定しにくい。
まず,61年来好調を持続してきた米も,減産から輸出余力が減少し,最も余力を持っているとみられるタイでも,第3四半期の終り頃から息切れをみせている。
また,供給不足から高値をつけていたすずも,アメリカの戦略備蓄余剰の放出から軟化し,すず消費業者が在庫補充を手控えているため,数量としても伸び悩みをみせていると思われる。
問題のゴムは新型合成ゴムの圧力強化と約30万トンにのぼるとみられるアメリカ戦略備蓄余剰(戦略備蓄全体では約100万トン)の圧迫から値下りをつづけてきており,輸出数量がふえても,単価の下落がこれを相殺したと思,われる。もっとも,10月のゴム相場はキューバ問題とアメリカ自動車生産の活発化,共産圏による買付け増から反発した。そしてキューバ問題がほぼ解決した後も,共産圏による旺盛な買付け持続,イギリスの景気刺激策などを好感してかなり堅調を維持している。
ジュートは62年秋の大豊作見込みによる値下りと,ヨーロッパ消費者筋による買い控えから輸出も減少してきたのではないかと思われたが,このほどパキスタンの洪水による減産見込みから相場も堅調化してきたし,これとともに値下りを見越して買い控えを行なってきたジュート消費者の態度にも変化が起こっているのではないだろうか。
なお茶の輸出について一例をインドについてみると,62年1~9月の実績は前年同期に比べ6%の値下りにもかかわらず,前年同期を金額で9%上回ったといわれ,好調のもようである。
63年については,アメリカで軽微の景気調整,西欧の成長率鈍化が予想されており,当地域の輸出品についてもゴムをはじめとして弱含みと考えられるものが多く,輸出数量も伸び悩み,輸出額はやや減退する可能性がある。
一方,輸入は輸出がやや減退するとすればこれにほぼ追従すると著えられるが,域内各国の開発意欲が高まっているおりから,金外貨準備にゆとりのある国は,ある程度外貨をとりくずしても輸入増加ないしは維持に努めると思われる。また,インドのように,外貨ぐリが苦しくなっている国については,ただちに外国援助がふえると速断するわけにはいかないが,すでに使用権を与えられている援助について,従来使用面でみられた遅れの取り戻しに向かって努力が払われるだろうし,さらに外貨危機が深刻化すれば,62年8月に行なわれた援助の追加供与(インドについて1億4,000万ドル)といったことも考えられるので,当地域の輸入はほぼ前年水準を維持できるのではないかと思われる。