昭和36年
年次世界経済報告
経済企画庁
第2部 各 論
第3章 東南アジア
東南アジアの輸出は61年第2四半期から前年第3四半期以降の減少傾向から脱しかけたようにみえる。
しかし,その後の動向を主要商品相場の動きからみると,必ずしも持続的な増加傾向にはいったとは断定しにくい。
東南アジア商品相場指数は61年にはいって下落傾向をたどっているが,これは主としてジュート,コプラの値下りによるもので,錫は錫消費工業からの需要増に対し供給が追いつけないため暴騰を示している。一方,先進工業国の景気変動に敏感な天然ゴムは,アメリカの景気回復,欧大陸と日本品好況という環境にもかかわらず頭打ち状態を示しているが,これは合成ゴムと米英両政府の備蓄ゴム放出の圧迫を受けているためばかりでなく,アメリカ自動車生産の本格的上昇が始まらないうちに天然ゴムの増産期にはいったためと思われる。
このように主要商品相場の動きからみると,61年後半にはいってからの輸出はアメリカ景気の回復によって数量面で刺激を受けているとは考えられるものの価格面にまで現われていない。62年にはヨーロッパと日本で景気調整期がくると予想されているが,一方では,アメリカの景気上昇の持続が期待されている。また主要輸出商品のなかでは錫の高値維持,ゴム,ジュートの輸出数量増加等が期待され,62年の輸出は年間としてみれば61年をやや上回るものと期待される。
一方,輸入も輸出と同じく61年第2四半期から前年下期以降の減少傾向を脱し始めたようにみえる。
金外貨準備は61年にはいって,インド,パキスタン,フィリピン,インドネシアを除けば回復ないし増加を示している。これまでのところ,インド,セイロンのように外貨面でとくに苦しくなっているところを除けば,物価上昇の抑制というねらいもあって輸入制限の緩和方針は維持されているもようであり,61年の下期にはいっても微増を示していると思われる。62年については輸出増によって東南アジア地域の輸入増が期待されるが,61年にはいって外貨事情が悪化している国のうち,インドとパキスタンについては援助が前者について9億3,000万ドル(62年4月~63年3月分)後者について3億7,000万ドル(61年7月~62年6月)ずつ約束されている。この援助額は,約束額として前年度とくらべてみるならば,インドについて3億6,000万ドルの減少,パキスタンについて9,000万ドルの増加となる。以上の比較は単なる約束額で実際の支出がどの程度のペースで行なわれるかは今後の推移をいては,最近の先進諸国の援助体制の強化態度,とくにインドに対する関心の深さからみて,この国の国際収支がさらに悪化するばあいには債権諸国の間で弾力的な調整が行なわれる見込みが高いと思われる。