昭和36年

年次世界経済報告

経済企画庁


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まえがき

世界の経済活動を全体としてみると,1960年から61年にかけて比較的好調裡に推移したといえよう。60年下期にはじまったアメリカの景気後退も軽微におわり,61年はじめには早くも底をついて,その後V字型の回復を示しており,西欧諸国また59年以来の好況を持続している。アメリカの景気後退の影響をうけた低開発諸国の貿易も,最近にいたって立直りの兆候をみせている。

このように世界の経済活動自体は一応好調裡に推移したものの,その基底にひそむ構造的な諸問題がこの期間を通じてするどく表面化してきた。一言でいえば,従来世界経済の中心となっていた米,英の地位の相対的低下と,欧州共同市場の比重上昇である。60年秋におけるドル危機,61年夏におけるポンド危機は,いずれもその端的な表現にほかならない。米英両国はこの新しい事態に対処すべく長期的な成長政策を打ち出すと同時に,イギリスはE EC加盟へ踏み切り,アメリカもまたEECへ積極的に接近しようとしている。他方ドルとポンドを通貨面から強化するためにIMFの機能が強化された。かくて世界の工業諸国は欧州共同市場を中心に新たな国際分業関係に踏み出そうとしている。また後進諸国に対する援助体制も強化されてきた。

本書は,60-61年にみられた以上のような世界経済の動向と問題点を概観的に分析し,日本経済との関連においてその意義を解明すると同時に,さらに細かく主要地域ごとの経済動向を記述し,あわせて1962年の展望を示したものである。

日本経済はいま高度成長の行き過ぎからする調整期を迎えながら,しかも貿易自由化を推進しなければならぬというきびしい立場にある。世界経済の動向が現在の日本にとってとくに関心のまととなるゆえんであり,その意味で本書が大方の参考となることを期待したい。

昭和36年11月

金子 美雄

経済企画庁調査局長


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