昭和33年

年次世界経済報告

世界経済の現勢

経済企画庁


[前節] [次節] [目次] [年次リスト]

第七章 東欧経済の動向

二 財源の配分・投資の間煩

生産目標を控え目にして,一方消費者の所得を引上げたことによつて,いずれの国でも一九五七年計画は蓄積の割合が低減ずるに至ったのであるが(ソ連は例外),ブルガリア,ハンガりー,ルーマニアにおいては投資の絶対量は一九五六年よりも低下するよう計画が作成されている。投資の増加を予定した国のうち,チェッコスロバキアと東独とは労働不足の脅威をうけ,加うるにその資本ストックが老朽化して,更新の必要に迫られるとともに,全体的な工業発展に対して著しい立遅れを示したエネルギー部門や若干の原料部門において,生産設備の増加が必要となつた。ポーランドは国家投資を制限して私的投資にふりむけた(とくに農業についで住宅投資に)。

上述の如く工業生産はいずれの国でも計画水準を凌駕し,農業生産はチェッコスロバキア,東独,ソ連を例外として予想を上回ったのであるが,推定しうる国についてみれば,国内生産物の増加は六ないし八%の程度であり,ハンガリーおよびポーランドでは予想以上に大きかつた(第7-5表参照)。加うるにこれら二国においては,外国信用が主としてソ連から与えられ,ポーランドでは米国,ハンガリーでは他の東欧諸国から与えられたが,それは国内財源に著しく追加されることになつた。外国信用の割合はポーランドでは国内財源の約六%,ハンガリーでは約九%をしめた(第7-6表参照)。

ポーランドでは一九五八年には外国援助が減少し,また昨年受領した信用の若干を返済し始めたために純国内生産物六%の計画増加にかかわらず,国内用に向けうる財源の増加を四%に減少するものと予想される。ポーランドとハンガリーにおいては,昨年の信用の未利用部分とソ連からの新貸付金が一九五八年の国内財源に追加をもたらすものと考えられる。

一九五七年の投資はいずれの国でも計画水準とあまり異なっていないのであるが,チェッコスロバキア,ソ連においては国家投資が不足していた。それはブルガリアでも同じである。しかし私的,協同組合投資が高まったから全体の計画の実現をみた。ポーランドでは中央計画投資が一九五七年の計画水準をこえ,私的投資が予想に達しなかつた。ストックは年末になって増加したが,共同消費は総資源の予想以上の大増加からえられた。

国定投資の資源配分の型が相当変化してあることが注目されるが,まず国営部門から私的部門への切りかえが行われたことであつた。最も大きかつたのはボーランドである。ブルガリアでは国営部門外の投資が増加した。また東欧全体を通ずる投資政策のおもな特徴として(東独は例外),国営部門内部の投資に当つて資源を完成に近い企業に集中したことがあげられるであろう。しかしハンガリーではほとんど成功を納めなかった。そこでは未完成企業のストックが約一〇%増加した。工業投資は一般に引下げが行われても引下げの負担の多くを免れることができ,これらの削減は全体が増大した他の部門よりもより多くの利益をこうむつたのである(第7-7表)。ブルガリアでは重工業に向けられた資源は軽工業投資が低下するにつれて増大した。この傾向は一九五八年には逆になるはずである。

地域全体を通ずる投資型の普通の特徴ともいうべきは住宅投資の増加である。住宅国家投資は前年度にくらべてハンガリーで五〇%以上増大し,ソ連では三〇%,ポーランドでは五分の一増加した。ソ連,ブルガリア,ポーランド,東独では私的,協同組合建築の追加資源が利用された。チェッコスロバキアでは全体の住宅建築の率は一九五六~六〇年計画にそつて行われている。

住宅投資の増加は全国家投資総額中の建設費の割合を増加するものと予想されるであろう。しかし新建設は工業部門内部では新工場その他の大建設の拡張よりも,新しい既存工場の拡張に集中している。しかし西欧の標準からすると,新資本資産中の機械の割合が少なくて,約五〇%を占める東独以外は大体三〇%である。それは旧設備を使用しうるかぎり保持しようとする傾向と,経済調整の建設費がたかくついていることを反映している。農業の国家投資はブルガリア,ハンガリー,ポーランドにおいて低下したが,他の農業投資が増加した(とくにポーランドにおいて)。チェッコスロバキア,アルバニアでは農業国家投資が全体の投資増加率と同じだけ増加した。チェッコスロバキアでは協同組合投資はたかまつた(第7-7表参照)。


[前節] [次節] [目次] [年次リスト]