昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
第四章 転機に立つ西独経済
戦後他の西欧諸国より遅れて経済再建過程にはいつた西ドイツは,資本蓄積,投資奨励,輸出振興その他の面における政府の適切な経済政策と難民大量流入による労働予備の存在,国民の勤勉と自制,伝統的な技術など各種の要因に支えられて急速に復興し,その経済成長率は世界の主要工業諸国のうち日本と並んで最高であつた。
いま西ドイツ経済発展の姿を若干の指標によってみると,まず実質国民総生産は一九五〇年から一九五六年までの五カ年間に六三%増加し,OEEC諸国平均の三〇・七%の約二倍の成長率を示した。国別にみても西ドイツについで高かつたオーストリアの四六%を大きく引離している。同期間における他の主要諸国の成長率をみると,イタリア三八%,フランス二七%,英国一七%であり,米国のそれは二五%であった。戦前(一九三八年)に対する成長率においても,西ドイツは一〇八%の増加であつて,OEEC諸国平均の五一%はもとより,西独についで成長率の高かつたオーストリアの七二%を大きく引離している。ただしこの戦前比では米国とカナダの成長率にはおよばない。
もつともこのような西独の異常に高い成長率は前述したように大量の難民流入による労働力の大幅膨脹に支えられた面が大きく,一人あたりの実質国民総生産の伸張率では一九五〇~五六年間に三一%と,かなり低くなつている。それでもOEEC諸国の平均二四%よりは高く,国別でもオーストリアの四五%,イタリアの三三%についで第三番目に高い成長率である。