昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
世界経済は一つの転換期にあるものの如く,昨年来の世界景気の下降を,行きすぎた経済膨脹に対する単なる調整とみるべきか,それとももつと長期的な経済循環における下降期の始まりとみるべきか,この点は論者の立場によって議論の分れるところであるが,この問題に対する解答を見出すことは一つの緊迫した課題である。
もとより日木の経済は貿易に対する依存性が強く,したがって世界経済の動向に影響される度合がきわめて高い。
また東南アジアおよびその他低開発国の経済発展に関して,わが国の演ずべき役割もいよいよ重要性を増しつつある。これらの見地から国内経済の動向分析に際してはもちろん,諸般の経済政策策定のばあいにも,世界経済の研究と調査が基礎的な前提条件として必要であることはつねづね識者によって指摘されてきた。今回経済企画庁調査局に新たに海外調査課が設けられたのも,こうした意味において世界経済の研究調査の機能を強化するためであった。
本書は以上のような要請のもとに,世界経済の概観と若干の展望を目的として取りまとめられたものである。きわめて短期間に各地域担当者が調査執筆したものを全体として編集したもので,地域によってそれぞれ精粗があり,各部門の分析も必ずしも十分とはいえないが,たまたま中東の偽情騒然として世界の動きに誰しもが関心を高めている折からいくらかでも世界経済現勢の概観に資しうるならばと考え,上梓することにした。
なお本調査は,調査局訂調査課外国者全員が二,三外部専門家の応援を得て取りまとめたものである。
昭和三十三年七月
金子 美雄
経済企画庁調査局長