昭和61年
年次経済報告
国際的調和をめざす日本経済
昭和61年8月15日
経済企画庁
第2章 新しい産業発展の潮流
1980年代に入ってから国際間の経常収支は,その黒字主体と赤字主体が大きく変化した。本節では,まず今日の国際間の経常収支不均衡を世界全体の動きの中で位置付け,その背景につき分析するとともに,あり得べき対応策について検討する。
(70年代までの不均衡)
各国ないし各地域間の経常収支は,その時代時代における各国経済力の強さや,経済環境の特徴などを反映して,常に不均衡を伴いつつ変動してきた(第2-1図)。
1950年代には,アメリカが経済力の圧倒的優位を背景に,大幅な経常収支黒字を続けた。60年代には西ドイツ,日本などが戦後復興を終えて経済力を貯え,逆にアメリカはベトナム戦争などによって経済力が弱体化したが,全体としては先進国の黒字,発展途上国の赤字という対称性が強まった。
70年代の不均衡は二つの軸によって規定された。第1は,2度の石油危機を通じて産油国が大幅な黒字となり,産油国の黒字と非産油国の赤字という対称が生まれたこと,第2は,非産油国間で先進国の赤字が相対的に小さかった一方,非産油途上国の赤字が大幅に拡大し,石油消費国内での先進国と発展途上国との対称が続いたことである。このような二つの対称が生じた基本的な背景としては,この間における原油価格,一次産品価格,工業製品価格の三つの価格の相対関係が大きく変化したことが挙げられる。すなわち,1973年から80年の間に,原油価格(我が国の原油輸入単価,ドルベース)は10.0倍,工業製品(先進工業国20ヵ国の輸出価格指数)は2.2倍,一次産品(IMF商品価格指数)は1.7倍となっており,原油を輸出し,工業製品,一次産品を輸入する産油国では大幅に交易条件が好転した一方,原油,工業製品を輸入し,主に一次産品を輸出する非産油途上国では交易条件が大幅に悪化したことを示している。
(80年代の不均衡の構図)
80年代に入ってからは,「新しい二つの軸」を中心に70年代とは異なった不均衡が生まれた。第1は,工業国の黒字化と非工業国の赤字化である。これは,前述したような三つの価格の相対関係が80年代に入って大きく変化したことを反映している。80年から85年までの原油価格,一次産品価格,工業製品価格の変化率は,それぞれマイナス15%,マイナス24%,マイナス13%となっており,原油,一次産品を輸入し,工業製品を輸出する工業国の交易条件がかなり有利化した一方,その他の国は概して交易条件が悪化したとみられる。
第2の新しい軸は,工業国内でのアメリカの赤字化とその他の工業国の黒字化という対称である。アメリカの赤字は,既に70年代始めから現れ始めていた。その後,80,81年には一旦黒字となったものの,82年からは急速に赤字が増加し,85年には1,177億ドル(名目GNP比2.9%)の経常赤字を記録した。これを同国の国別貿易収支(FAS輸出額とCIF輸入額の差)でみると(第2-2表①),81年から85年までの間に収支が好転したのは,対サウジアラビア,ナイジェリア,インドネシアの産油国に限られており,その他の国に対しては軒並み悪化している。特に工業国に対する収支悪化は著しい。国別にみると貿易額が大きいことから赤字拡大幅は対日が最も大きいが,貿易額を考慮した収支変化率(収支変化幅の85年貿易額に対する比率)でみると,カナダ,イギリスが若干低いものの,日本,西ドイツ,フランス,イタリア等先進工業国,台湾,韓国,香港,ブラジル等新興工業国など,ほとんどの工業国に対しほぼ一律にマイナス30%程度に達している。
80年代に入ってからのこうした二つの大きな流れの変化によって,アメリカ,産油国,一次産品輸出国が赤字国へと転じ,一方,日本,西ドイツをはじめとするアメリカ以外の先進国が大幅な黒字主体へ,また,新興工業国も赤字の大幅縮小ないし黒字化を果たすなど,70年代に比較すると赤字,黒字主体は大きく入れ替わった(第2-2表②)。我が国経常収支黒字の最近の増加も,我が国独自の要因もあろうが,その多くは上のような世界の不均衡の「軸」の変化の中で生じた受動性の強いものであったことをうかがわせる。ちなみに,最近4年間の我が国通関収支差をみると(第2-2表①),大きな黒字の増加がみられるのは対アメリカ,次いで対サウジアラビア,オーストラリア,インドネシア等の資源輸出国であり,その他の国に対する変動は極めて小さいことが,このことを裏書きしている。
今日の経常収支不均衡問題は,単に日米2国間の収支の問題としてではなく,こうした世界的な不均衡の軸の変化という流れの中で捉え,その把握の下で不均衡是正努力を進める必要がある。
そこで,以下では特に工業国間における不均衡が何故急激に生じたのかを中心に,アメリカの赤字化と我が国の黒字拡大を対比しつつその背景をより詳しく分析してみることとする。
なお,やや技術的な問題であるが,本来ゼロとなるべき世界全体の経常収支合計が,例えば1984年のIMF統計では1,070億ドルの巨額な赤字となっており,かつその誤差が年々拡大している(80年は同400億ドルの赤字)ため全体的な経常収支動向が把握しにくい状況となっている。
(不均衡拡大の要因分解)
日本とアメリカの経常収支の変化の内訳をみると,投資収益,移転収支などの寄与もあるが,両国とも基本的には貿易収支の動きが全体を左右している(第2-3図)。
貿易収支を決定する輸出入は,国内及び海外の需要動向,内外相対比価の変化(為替レートの変動を含む)などによって決定されると考えられている。日本,アメリカのそれぞれについて輸出入数量・価格関数を推計し,両国の収支不均衡が大幅に拡大した82年から85年にかけてどのような要因が影響を及ぼしたかを第2-4表①に示してある。
最近3年間で日,米両国の輸出入の収支は各々393億ドルの好転,1,007億ドルの悪化となっているが,この分析によるとそのうち約4割が国内及び海外の需要成長率格差によってもたらされているほか,為替相場の影響,弾力性格差の影響も大きかったことが分かる。以下ではこれらについてやや詳しくみてみよう。
(国内及び海外の需要成長率格差の影響)
第2-5図は,日米両国について,82年以降,輸出に係る海外需要要因と輸入に係る国内の需要要因とに分けて,それらが平均的な伸び(ここでは78~85年平均)に比べどの程度乖離してきたかを示したものである。我が国の場合輸入に係る国内の総需要は,この間,平均的な伸び(年率3.9%)とほぼ同じ増加率でおおむね堅調に推移してきた(図のシャドー部分)が,輸出に係る海外の需要はトレンド線(年率2.6%)を大きく上回って拡大したこと(図の斜線部分),逆にアメリカについては,輸出に係る海外需要はほぼトレンド線(年率2.4%)に沿って推移した一方,輸入に係る国内の総需要は,トレンド線(年率2.2%)を大幅に上回って増加したことが分かる。
このような日米両国にとっての国内及び海外の需要の伸び率格差が黒字,赤字の大きな要因となったわけであるが,我が国の輸出需要面での異例な好転とアメリカにおける輸入需要面での大幅な上方乖離は,アメリカ経済がこの間60年代にもみられなかった急速な景気拡大を示したことによってもたらされたことはいうまでもない。アメリカのこうした総需要の著しい増加には,81~82年前半にかけての大きな景気の落ち込みからの回復という要因が基本にあった。
また,技術革新に伴う投資の強さという要因もあった。同時に,政策面では,財政赤字の拡大による金利上昇等のマイナス効果もあったが,軍事支出の増大,不況に伴う社会保障支出の増大,大幅な減税など財政面からの民間需要刺激があり,82年後半に引き締めから中立的へ金融政策スタンスが変更されたこともあずかって力があった。このようにここ3年間に生じた両国の内外需要成長率格差は,アメリカにおける異例な需要の急拡大によってもたらされてきた面が大きい。
(継続的なドル高の影響)
需要面で大幅な赤字要因が生まれている中で,ドル相場がそれを増幅するように著しい上昇を示したことが,80年代前半の大きな特徴であった。円及びドルレートが競争力を反映すると考えられる購買力平価から乖離したことによってもたらされた,最近3年間での日米両国の不均衡拡大効果は各々プラス120億ドル,マイナス174億ドルと内外需要成長率格差による効果には及ばないものの,全体の変化に対し2~3割の寄与を持っていたことが分かる。
このような,経常収支の大幅悪化と併存して続いてきたドル高は,アメリカの財政赤字等を反映した高金利やアメリカ経済のファンダメンタルズに対する信頼感によるドル高期待の継続により支えられてきたものである。
(相対価格変化の影響)
日米両国について一次産品価格下落に伴う収支好転効果を別途の方法で試算してみると,我が国の場合最近3年間で原油やその他一次産品の値下がりで輸入支払額が178億ドル減少したことが分かる(第2-4表②)。また,アメリカについてもその幅は小さいものの114億ドルの収支好転要因となっている。
ただ,こうした一次産品のみを取り出した影響はかなり大きいものの,同時にこの間日本では世界の輸出価格に対する輸出の相対比価は上昇し,輸出の減少要因に,アメリカでは卸売物価に対する輸入の相対比価が下がり,輸入の増大要因に働いている。前述の輸出入関数を用い,これらを含めた価格変動(為替要因除去後)と数量変動を併せたトータルの影響をみると,最近3年間に限っていえば両国とも赤字化要因になったとみられる。もちろん,86年に入ってからの原油価格低下は,それが工業製品価格に比べ極めて大幅であるため,両国の収支に大きな黒字化要因として作用するであろうことが予想される。
(輸出入の弾力性格差の影響)
上記のような需要・価格面での撹乱がないとしても,両国の輸出入に関する諸弾力性が相違すれば収支に影響を及ぼす。いま,日本,アメリカに加え,西ドイツ,韓国についても輸出入数量関数を計測してみると(第2-6表),日本の輸入の所得弾力性が4カ国で最も低く,アメリカではそれが際立って高いこと,逆に輸出の所得弾力性は,韓国が最も高く,次いで日本がアメリカの2倍近い高さになっていることが分かる。このことは,国内及び海外の需要が先にみたトレンド線上で安定的に推移したとしても,我が国では黒字が出やすく,アメリカでは赤字になりがちな体質があることを示している。
これら計測された諸弾力性は,種々の要因により変化するものであるが,基本的にはその国の持つ経済構造の特質を反映したものである。その詳細は第2節でみることとするが,これによる最近3年間での収支不均衡拡大効果は,我が国の場合,全体の収支変化のうち約3割,アメリカの場合には,約4分の1と為替相場による影響を上回る規模に達していた。
(不均衡のボリューム格差効果)
以上,これまでの不均衡拡大の諸要因をみてきたが,今後の収支動向についてみる場合,既に拡大してしまった不均衡によって「不均衡のボリューム格差効果」や「不均衡の累積効果」ともいうべき慣性的な効果が目立ち始めている点に十分な留意が必要である。
貿易収支尻の拡大は,輸出額と輸入額の差が拡大したことと同義であるが,両者の乖離は,成長する経済を前提とすれば,輸出入額が同じ伸びで増加してもその差は拡大してしまう「不均衡のボリューム格差効果」を生み出す。例えば輸出額を100,輸入額を80とし,両者が次の年に10%ずつ増加したとすると,黒字幅は20から次年には22へと拡大してしまうわけである。我が国の場合,85年の輸出額は1,740億ドル,輸入額は1,180億ドルと輸出額が輸入額の1.47倍となっている一方,アメリカでは,輸入額が3,616億ドル,輸出額が2,131億ドルと逆に輸入額が輸出額の1.70倍に達している。したがって,成長過程の下で収支の改善をもたらすために必要な国内と海外の需要成長率格差や相対価格変化率(ないし為替相場の変化率)が,輸出入額が均衡に近い時期に比べ我が国では1.47倍,アメリカでは1.70倍の格差ないし変化がなければならないことを意味する。仮にこれを機械的に適用して輸出入価格,為替レート等他の条件を一定にして単純に計算すれば,日本の場合,国内の総需要が実質世界輸入の伸びに比べ4.5倍以上(輸出の所得弾力性〈2.21〉÷輸入の所得弾力性〈0.72〉×1.47)の伸びで成長しないと黒字が縮小に向かわないこと,逆にアメリカでは実質世界輸入の伸びが国内の総需要より2.5倍以上(輸入の所得弾力性〈1.69〉÷輸出の所得弾力性〈1.13〉×1.70)で伸びないと赤字が縮小に向かわないこととなる。もちろん,所得弾力性は2節でも述べるように時々の市場環境等によってかなり変動し得るものであり,価格弾力性も最近のような急激な為替変動の下では,有意性自体疑問なしとしないだけに,その現実への適用に当たっては極く慎重であらねばならないが,少なくとも今日の不均衡状態の是正が短期的には容易なものではなくなりつつあることを示唆するといえよう。
また,経常収支をみる場合,「ボリューム格差効果」に類似した作用として「不均衡の累積効果」が生ずることも無視し得ない。経常収支黒字(ないし赤字)が継続すると,対外ネット資産(ないし負債)が累増し,これに関するネット利子受取等(ないし支払等)が増えるため,投資収益収支黒字(ないし赤字)の増加を通じて経常収支の黒字(ないし赤字)を拡大させることになる。このため,貿易収支黒字(ないし赤字)が変化しなくとも経常収支黒字(ないし赤字)が拡大してしまうこと,逆に言えば,経常収支黒字(ないし赤字)の拡大を抑えようとすれば貿易収支改善への条件が前段の計算値より更に厳しいものとなることを示している。第2-1~3図にみられる,我が国,アメリカの投資収益収支の対照的な変化はこのような事情を反映したものであるが,我が国の場合,同収支の黒字幅は年々増大し昭和60年度では75億ドルと,かつて大幅黒字といわれた46,47年度の経常収支黒字額をも上回る規模に達している。
(容易でない不均衡の是正)
以上のように,我が国とアメリカの貿易収支の不均衡は,拡張的財政政策と,高金利,ドル高容認というアメリカのこれまでの経済政策ミックスのもたらした影響に加え,日米両国に内在する経済構造の黒字・赤字体質等によってもたらされた。また,金利の国際的連動関係がみられる中で,アメリカの高金利により各国の金融政策の弾力的運用が制約を受けたことは,輸入需要を増やさない方向に働いた。
アメリカの経済政策は現在,財政収支赤字の縮小とドル高是正の方向へ大きく転換しており,このような政策基調の変化は,不均衡是正という意味で積極的な評価がなされよう。ただ,既に不均衡が拡大してしまったことによるボリューム格差効果や累積効果が働き始めていることに加え,両国の経済構造に根ざす不均衡作用が残るとすれば,今日の不均衡是正は短期的には容易なものではない。
(不均衡の諸問題)
アメリカの大幅経常収支赤字の原因となったのは,輸入の急増であった。それが各国の輸出増加を通じて景気回復の原因となったことは否定できない。アメリカにとっても高い成長と雇用情勢の改善の中で,インフレの加速が全くみられなかったのはドル高による輸入価格の低下並びに輸入数量の増加の寄与によるところが大きい。また,内外金利差などによるアメリカへの大量の資本流入によって,金融面での混乱なしにこうした経常赤字をファイナンスすることができた。
しかし,このような条件が今後とも維持されるかどうかは必ずしも保障されたものではない。既に4月央以降アメリカで資本流入の減少懸念から長期金利がやや上昇したともいわれており,さらに,鉱工業生産の停滞とともにこれまで改善してきた雇用も,緩やかな改善傾向に足踏みもみられるなど,アメリカにとって不均衡を抱えながらも円滑な経済を支えてきた諸条件が不安定化する懸念も出てきている。
一方,我が国にとっても,不均衡拡大の原因が,多く外的環境の変化にあるとしても,我が国の経常収支黒字は60年度で550億ドルと,絶対額としては一国が年間に記録した最大のもの(従来は1980年のサウジアラビアの414億ドル)である。また,名目GNP比も60年で3.6%と第2次大戦後の主要国の記録としては,アメリカ(1947年に3.8%)に次ぐ高いものである。このため,各国から黒字減らしを強く求められているほか,我が国の経済体質を問題とする声も強くなっていることは厳しく受け止める必要がある。
このように,日米両国とも,不均衡の改善に向けて真剣な努力をする必要がますます強まっているといえる。
(不均衡是正のための諸方策)
日米両国が不均衡の改善のため取り得ると考えられる対応策について前述の分析に沿って検討してみると,まず所得要因に働きかける方策としてアメリカにおいては財政赤字の削減努力が引き続き進められることが肝要であり,また,我が国については,財政制約の厳しい状況下であり,マネーサプライもやや高い伸びとなっているが,工夫をこらしつつ引き続き内需拡大に努める必要があろう。
第2は,為替レートによる調整が挙げられる。ただ,我が国の場合はともかく,アメリカについては,次のように円,欧州通貨に対するドル安の効果のみに依存できない条件があることは注意を要する。日米両国について主要貿易目15ヵ国について,1985年2月から86年3月までの為替相場の変化をみると(第2-7表),円は対ドル同様他の通貨に対してもかなり上昇しているが,ドルについてみると,確かに,対円,対欧州通貨ではかなり下落しているものの,インフレ率の高い中南米諸国をはじめ,アジアNICs,カナダ等の通貨に対しては減価しておらず,前出第1-6図でも同様のことが読み取れる。このことは,為替レートの調整に関しいくつかの問題を提起する。まずこれらNICs等諸国が十分な供給力,商品の代替性を有していれば,円やマルクの上昇による輸入減,輸出増の効果の多くの部分が,これらの国からの輸出で相殺されてしまうであろう。第2に,こうした中で全体として円やマルクに対するドル安の効果が充分に出ていない,という誤解が生まれる危険がある。第3に例えば円やマルクの切上げだけでアメリカの赤字を調整しようとすればするほど,円やマルクに対し必要以上の大幅な切土げ圧力が加わる可能性がある。このように為替レートによる調整は特にアメリカにとっては円やマルクなどに対する変化率ほどは実効的なレートは変化しないため,赤字縮小に及ぼす効果はそれだけ弱められることを認識する必要がある。
このため,アメリカの場合,短期的な効果は期待しにくいにしても生産性向上を基礎に,ドル高修正を契機として輸出競争力の回復,国内生産力の復元によって,輸入の急増しやすく輸出の増えにくい「赤字体質」を改造していくことが不均衡是正にとっての基本的条件として極めて重要である。また,我が国としても為替レートによる調整に加え,輸出が増えやすく,輸入が増えにくい「黒字体質」を,産業構造の転換,アクション・プログラムの実施による市場アクセスの一層の改善,製品輸入の促進等を通じて国際的に調和のとれた体質に転換して行くことが求められる。
アメリカの経常赤字がなかなか縮小せず,アメリカにおいて保護主義的圧力が高まる可能性は依然大きいが,世界経済の持続的発展のためにはこうした事態は是非避けなければならない。今までのところ各国はインフレの再燃を避けつつ,金利を低下させ,著しいドル高を修正するのに成功している。今年には,石油価格の大幅な下落や為替レート調整のJカーブ効果もあって日本のみならず西ドイツの黒字も拡大することがOECDにより予想されているが,各国が急速に大幅な不均衡の是正は実現しにくいことを理解し合いつつ,是正のために必要な手段に取り組み,為替レート変化の効果とあいまって大幅な不均衡を是正していくことが何よりも必要である。