昭和57年
年次経済報告
経済効率性を活かす道
昭和57年8月20日
経済企画庁
56年度の国内貨物輸送は,建設・土木関連貨物の落ち込みや,素材型産業の生産・出荷の低迷等による輸送需要の減少が響き,昨年度以上の不振となった。この結果,輸送トン数は58億6200万トン,前年度比2.1%減となり,輸送距離を加味した輸送トンキロでは4,275億トンキロ,前年度比2.6%減となった。( 第5-1表 )。
輸送機関別にみると,国鉄は輸送トン数で前年度比9.1%減と昨年度に引き続き減少している。品目別でみても,ほとんど全品目にわたって落ち込んでおり,全体として低水準で推移している。
自動車は輸送トン数で前年度比1.6%減,輸送トンキロでは同1.3%増となっている。このうち,自家用自動車ではそれぞれ3.6%減,3.1%減と低調であるが,営業用自動車では2.6%増,4.6%増と比較的堅調である。また品目別にみると,砂利,砂・石材,木材,金属鉱等の落ち込みが目立つ。
内航海運は素材型産業の不振,原油需要の低迷等のため,55年7-9月期以降,総じて低水準で推移しており,前年度比では,送輸トン数で4.2%減,輸送トンキロで,4.7%減となっている。品目別には,木材・砂利・砂・石材,原油,石灰石等が減少している。
航空は,55年度は低水準であったが,56年度に入って回復しており,輸送トン数では前年度比12.2%増,輸送トンキロでは同12.9%増となった。
以上の結果,輸送機関別国内貨物輸送トンキロ分担率をみると,前年度に比べ,鉄道は0.6ポイント減少し,内航海運も1.1ポイント減少する一方,自動車は1.7ポイント増加した。
56年度の国内旅客輸送をみると,輸送人員は517億9600万人,前年度比0.1%増となり個人消費の低い伸びが続いたなかで横ばいとなっている( 第5-2表 )。
これを輸送機関別にみると,国鉄は輸送人員,輸送人キロとも0.5%減と停滞が続いている。その内訳をみると,前年度比で普通旅客は輸送人員,輸送人キロともに1.2%減となる一方,定期旅客は輸送人員で0.1%減,輸送人キロで,0.4%増となった。また,新幹線の輸送量は輸送人員で0.0%減,輸送人キロで0.2%減となっている。他方,民鉄は,主として大都市圏を中心に堅調な推移を示しており,輸送人員,輸送人キロともに前年度比2.2%増となった。これらの結果,国鉄,民鉄を併せた鉄道合計では,輸送人員は前年度比1.2%増,輸送人キロは同0.5%増となった。
バスについては,輸送人員は前年度比2.0%減,輸送人キロでは同1.3%減とかなりの減少となった。
乗用車は,56年度は輸送人員で前年度比0.3%増,輸送人キロで同2.2%増となった。
55年度不振であった航空は,56年度に入ると総じて堅調な推移を示し,輸送人員では前年度比4.1%増,輸送人キロでは同4.5%増となった。路線別には,地方空港の整備によるジェット化等を背景に,ローカル線が高い伸びを示している。また,座席利用率をみると,全体で前年度比0.9ポイント減の63.9%となっている。
旅客船は,輸送人員で前年度比0.5%増,輸送人キロで同1.8%減となった。以上の結果,56年度の輸送機関別国内旅客輸送人キロ分担率は,前年度に比ベて国鉄が0.4ポイント増,バスが0.3ポイントとなる一方,民鉄が0.2ポイント増,乗用車が0.4ポイント増,航空も0.1ポイント増となった。
国鉄の財政状況は,39年度に単年度収支が赤字となって以降悪化を続け,55年度には純損失が1兆円を超えるに至った。
56年度の国鉄事業収支をみると,運賃改定の効果もあり,旅客収入は前年度比7.2%増加したが,国鉄貨物輸送の大幅減少により貨物収人が減少したため,全体としては5.6%の収入増にとどまった。他方,支出面においては人件費(退職手当,共済年金負担金)及び利子負担の増加が著しく,支出の増加が収入増を上回った。この結果国鉄収支は前年度より更に悪化し1兆859億円の純損失となった( 第5-3表 )。
危機的状況にある国鉄経営を再建し,今後ともわが国の基幹的輸送機関としての機能を維持していくため,55年11月に「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」が成立し,これに基づき56年5月に「経営改善計画」が定められた。この計画は,都市間・大都市圏旅客輸送及び大量定型貨物輸送といった鉄道特性を発揮しうる分野に経営を重点化することなどにより60年度に健全経営の基盤を確立することを目標としており,現在その実施に取り組んでいるところである。
このような状況の下で,57年7月に臨時行政調査会から行政改革に関する第3次答申(基本答申)が出され,そのなかで国鉄については抜本的な改革方策が提示された。すなわち,現在の仕組みては国鉄をとりまく環境の変化に的確に対応することは困難であるとの判断から,国鉄の分割民営化を図る必要があるとしている。また,新形態移行までの間緊急にとるべき措置として新規採用の原則停止,設備投資の抑制など11項目を挙げ,これらの措置を経営改善計画の改正により実施することを求めている。更に新形態移行に際して解決すべき諸問題として長期債務の処理,国鉄共済年金の問題等があるとしている。
政府としては,この答申を受けて国鉄の事業の再建問題に対処するため,まず総理府に国鉄再建監理委員会(仮称)を設置することについて検討を行なっているところである。
56年の輸出入の動向をトン・ベースでみると,輸出は7,735万トン,前年比1.1%増,輸入は56,735万トン,同6.3%減となった( 第5-4表 )。
このうち,わが国商船隊(外国用船を含む)の輸送量は,輸出が,わが国商船隊の積取比率の高い乗用自動車の貿易量の伸びが大幅に鈍化したこと等から,前年比2.2%増,輸入が昨年同様,原油等の海上貿易量の減少等から前年比8.9%減となり,わが国商船隊の債取比率は,輸出においては54.6%で前年比0.6ポイント増,輸入においては69.6%で同2.0ポイント減となった。
これを,日本船と外国用船に分けてみると,日本船の輸送量は前年比輸出が5.8%増,輸入が同8.5%減となったため,日本船の積取比率は輸出においては21。5%と前年に比べて1.0ポイントの増加,輸入においては36.6%と0.8ポイントの減少となった。一方,外国用船の輸送量は,輸出が前年並み,輸入が9.5%減となったため,外国用船の積取比率は輸出においては33.1%と前年に比ベて(0.4ポイントの減少,輸入においては33.0%と1.2ポイントの減少となった。
わが国の国際航空輸送は,53年度には旅客を中心に伸び率が鈍化したが,56年度に入って回復がみられている( 第5-5表 )。
56年度の旅客輸送をみると,輸送人員が前年度比10.9%増となり人キロベースでは13.8%増となった。
一方貨物輸送はトン・ベースで14.6%増,トンキロベースで14.0%増となっている。
通常郵便物は56年1月に,小包郵便物は55年10月にそれぞれ料金改定を実施した結果,56年度の内国郵便物引受総数は前年度比で5.4%減少した。また,内国,外国合わせた56年度の総引受郵便物数は,150億通(個)で,前年度比では5.3%減少した( 第5-6表 )。
郵便物数の主な動きを種類別にみると,第一種郵便物(封書など)は前年度比2.1%増と伸びを示したのに対し,第二種郵便物(はがき)は12.1%減少した。
また小包郵便物は,料金改定の影響もあって,前年度比15.2%減少し,選挙郵便物も55年度に衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙が行われたこともあり,56年度は前年度比78.4%減となった。
郵便事業財政は昭和55年度末で2,495億円の累積赤字となったが,56年1月20日からの通常郵便物の料金改定により昭和56年度の事業財政は1,174億円の黒字となり,56年度末の累積赤字も1,321億円に減少した( 第5-7表 )。
56年度における国内の電信電話サービスの状況をみると,加入電話等総数は122万増加し,4,028万加入となった( 第5-8表 )。この結果,人口100人当たりの加入電話等普及状況は34.1加入となった。また,公衆電話数も3万個増加して91万個となり,公衆電話普及率は人口1,000人当たり7.7個となった。
一方,電報通数は52年度以降横ばいの傾向にあって,56年度には4,196万通となっている。
56年度のわが国の国際通信の状況をみると,国際電報発着数が国際電話,国際テレックスの影響を受けて減少傾向を続け,11.1%減となったのに対し,国際電話,国際テレックスの発着数は56年度でそれぞれ,前年度比26.6%増,9.4%増となっており,国際電話については今後も高い伸びが続くと思われる。
近年における電気通信及び関連技術の著しい進展と高度化,多様化する通信需要に応じ,データ通信,画像通信等の高度かつ多様な新しい情報通信メディアが目覚しい発展をみせている。任意の文字,図形等をそのまま伝送できるファクシミリは,47年度末に1,000台であったものが,56年度末には20万台に達し,56年9月のファクシミリ通信網サービス及びミニファクスの取扱い開始により今後とも急激な伸びを示すものと思われる。
また,データ通信の利用状況を56年度末でみると,回線数では国内が159,500回線(前年度比18.4%増),国際が520回線(前年度比20.9%増)となっており,またシステム数でみると国内7,171システム(前年度比22.0%増),国際195システム(前年度比25.0%増)に達し高い伸びを示している。データ通信の利用分野についても,当初の製造業等における販売在庫管理や金融機関の預金・為替業務を中心とする利用から,近年は公害監視,救急医療等公共的,社会的業務へと利用分野が広がっている。