昭和57年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって

今年の白書は,昭和56年及び57年前半の経済について分析しております。

昨年の白書でも分析しておりますように,日本経済は第2次石油危機の一時的影響を克服して来ましたが,56年度の経済を振り返ってみますと,予想以上に景気調整が長引き,特に国内需要の回復の弱さが目立っております。

したがって今後の日本経済にとっては,内需の一層の拡大を図り,日本経済の成長力と効率性を国民の生活水準の向上に活かしていくことが重要な課題であります。

そのためには,住宅,都市問題をはじめ,内需拡大に対する阻害要因を解消し,中長期にわたる安定的な内需拡大の方策を進める必要があります。

また,一方,行財政の効率化を進め,財政の均衡化を図ることが現下の緊急の課題であります。これについては,今後とも公共支出の効率化を推進するとともに,受益と負担の関係について国民の幅広い合意を形成していくこと,および負担の公平化を図っていくことが肝要であります。

本年度の経済白書の副題は「経済効率性を活かす道」となっておりますが,国際的にも優れた日本経済の効率性と弾力性を活かして効率的福祉社会を実現し,また対外的には開放的市場経済体制を堅持して国際社会に貢献していくべきであると考えます。

本年度の年次経済報告が,これら日本経済の当面する諸課題を解決していく上でいささかなりとも貢献することができれば,幸いであります。

昭和57年8月20日

河本　敏夫

経済企画庁長官