昭和56年
年次経済報告
日本経済の創造的活力を求めて
昭和56年8月14日
経済企画庁
今年の白書では,昭和55年及び56年の経済について分析し,日本経済は民間部門の冷静な対応や財政・金融政策の適切な運営により,第2次石油危機の影響を比較的うまく乗り越えてきたという判断を下しております。
この間,景気のかげりが生じましたが,現状では景気は総じてみれば緩やかに改善の方向に向かいつつあるといえます。
また白書は,先進国段階に達したわが国が,今後は石油制約や国際経済摩擦等内外の諸問題を主体的に解決していくために「創造的活力」を維持・向上していかねばならないことを指摘しております。
白書にも示されているように,日本経済は短期的にも中長期的にも多くの課題に直面しております。当面の問題についても,まず景気のかげりが遅れて雇用面に及んでおり,労働需給はなお緩和の状態にあります。
また,構造不況業種等においては,部分的にはかげりが尾を引く可能性もあり,地域的にも天候要因等により跛行性がみられております。
さらに,アメリカの高金利などを背景に円相場が弱含んでいるなど,経済運営に当たって留意すべき点がいくつか残されております。
このため今後とも物価と景気の動向に注意しつつ,着実な政策運営に努める所存であります。
本年度の「年次経済報告」が,国民各位の理解を通じて,これら日本経済の当面する諸課題を解決していく上で貢献することができれば,まことに幸いであります。
昭和56年8月14日
河本 敏夫
経済企画庁長官