昭和55年度年次経済報告(経済白書)公表に当たって

今年の白書では,昭和54年及び55年経済についての実証的分析に基づいて,日本経済は第2次石油危機の影響をこれまでのところ,かなりの程度まで克服してきたという判断を下しております。これは,企業,消費者の冷静な対応があってはじめて可能になったものであります。

同時に白書は,1980年代初頭に当たり,民間の活力を活用しつつ,石油制約,国際経済摩擦,経済社会の変化への対応等,中長期的な課題に取り組んでいかなければならないことを指摘しております。

白書にも示されているように,日本経済は,現在多くの課題に直面しております。

特に,最近の経済情勢をみますと,石油価格上昇の影響が消費者物価段階に及びつつある一方,消費の鈍化,生産の足踏み等,これまでとは異なった状況が生じてきており,また世界景気にも後退の動きがみられます。このため私は,従来にも増して物価と景気の動向に注意し,経済政策のかじ取りに誤りなきを期する所存であります。

本年度の白書が,国民各位の理解を通じて,日本経済の直面する課題の解決にいささかなりとも貢献することができれば幸いであります。

昭和55年8月15日

河本　敏夫

経済企画庁長官