昭和54年

年次経済報告

すぐれた適応力と新たな出発

昭和54年8月10日

経済企画庁


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第1部 内外均衡に向かった昭和53年度経済

第2章 黒字から赤字に転じた国際収支

53年度は,それまでの国際収支の基調が大きく変わった。すなわち,総合収支は前年度の121億ドルの黒字から23億ドルの赤字に転じた。経常収支は,140億ドルから119億ドルへと若干の黒字幅の縮小にとどまったが,四半期別にみると,53年4~6月期の48億ドル(季節調整値)の黒字が54年1~3期には2億ドル(同)へと激減し,月別には3月以降赤字が続いている。また,長期資本収支は53年度に163億ドルの赤字と史上空前の赤字幅を示した(過去の赤字幅の最高は48年度の91億ドル)。

これまで我が国の経済運営上重要な位置を占めていた国際収支の大幅黒字という問題の解消は53年度経済の一つの大きな特徴をなすものである。さらに国際収支の基調変化は,52年初来,際限なく続くかにみえた円高傾向が止まったことの実体的背景となり,経済主体の不安感を拭うことになった。また,経常収支の赤字化は,我が国経済が海外需要に依存して拡大しないということを意味し,それは内需拡大という日本側の努力によってもたらされたとともに,円高を通じて日本経済を内需依存型にする契機にもなったのであり,また海外需要に依存する拡大に限界があることが示された。

本章においては,①53年度の国際収支の推移の特徴,②国際収支変化の要因分析,③円レートの基調変化の背景について概観してみよう。


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