昭和54年
年次経済報告
すぐれた適応力と新たな出発
昭和54年8月10日
経済企画庁
今回の白書では,昭和53年度経済について短期的視点及び中期的視点から実証的分析を行うことを通じて,日本経済が石油危機前後からの内外経済環境への適応をほぼ終え,内外ともにバランスが回復した姿となり,ようやくにして新しい成長軌道への足がかりをつかむところにまで達したことを指摘しております。このことは,我が国経済の適応力がすぐれていることのあらわれであると思います。
しかしながら,経済が着実な拡大を続けている一方で,卸売物価は引続き大幅な上昇を示しており,今後の情勢によっては,せっかく終わった適応のための厳しい努力が再び要求されるようになる危険性もひそんでおります。このような危険性を回避するため,インフレ心理が発生し物価上昇が増幅されることを厳に抑制しつつ,同時に景気の自律回復力も維持していかねばなりません。そのためには,急激な変化によって企業のコンフィデンスが揺るがぬような政策運営が求められております。
これからの成長軌道をとりまく環境は決して楽観できるものでないことはいうまでもありませんが,これまでに示された国民のすぐれた適応能力と努力は,今後の問題解決のためにも発揮され,必ずや新たな展望を切り拓くものと考えます。
本白書が国民各位の理解を通じて,今後の日本経済の針路を正しく定めていくうえに貢献することができれば,まことに幸いであります。
昭和54年8月10日
小坂 徳三郎
経済企画庁長官