第3章 経常収支黒字の背景と円高の国際収支調整効果

昭和52年度経済において,経常収支の黒字幅拡大と円の急激かつ大幅な上昇は大きな特徴であり,内外の関心を呼んだ現象であった。そこで,本章では経常収支の黒字増大の要因と,円高の国際収支に与える影響をまず分析する。

また,52年度から最近にかけては,日本の輸出品に対する外国の輸入制限的措置や日本に対する品目別,あるいは,制度的な輸入拡大要求,すなわち,貿易摩擦がことのほか高まった時であった。これらは世界の貿易制度上の問題としても,日本の産業のあり方との関連においても,重要な意味をもつものである。そこで,これらの実態と意味を考えることにする。

そして,円高や貿易摩擦によって,最近,日本の輸出入の方向や内容が変りつつある。これらをふまえた上でなお日本の経常収支黒字基調が今後も続くのかどうかという点も以下でふれることとする。