昭和53年
年次経済報告
構造転換を進めつつある日本経済
昭和53年8月11日
経済企画庁
第1章 昭和52年度の日本経済―その推移と特微―
日本経済は,国際的にみれば,石油危機後のトリレンマ(インフレ,不況,国際収支赤字の三重苦)から比較的順調に脱却しつつある。OECD諸国がマイナス成長であった昭和50年に日本はすでにプラス成長になり,52年もOECD諸国の経済成長率は3.6%にとどまったが,日本は5.5%(年度,以下国民経済計算については新SNAによる)の成長をみせた。一時2ケタを示した消費者物価の上昇率も本年3月には前年同月比4.5%にまで落着いたが,OECD諸国の平均は8.1%の高さにある。経常収支は多くの国が赤字の継続に悩んでいるのに対し,我が国は黒字減らしが必要なところまできている。
しかし,日本経済にとって現状は十分満足すべき状況にないことはいうまでもなく,未だ石油危機の後遺症が残っている面もある。また,石油危機によって受けた傷を癒やすことがそのまま新たな均衡成長への道につながるわけではなく,解決すべき課題は多く残されている。52年度経済も,基本的にはこうした過程の中で位置づけられるべきであるが,本章では,そうしたことを念頭におきつつも,まず52年度中の経済の動きについて概観することとする。