昭和50年
年次経済報告
新しい安定軌道をめざして
昭和50年8月8日
経済企画庁
戦後初めてのマイナス成長を記録した今回の不況は,労働経済面にも深刻な影響を与えた。
雇用労働市場面についてみると,所定外労働時間の削減からはじまつた雇用調整は,臨時日雇労働者の再雇用の停止から,一般雇用労働者の減耗不補充へと発展し,49年度後半には一時休業の採用や希望退職者を募る企業が急増するなど雇用調整が広範化し,多様化した。
そうしたなかで,労働市場は求人の大幅な減少が続く一方,求職者は期を追つて増加し,労働需給は49年後半以降大幅な緩和に転じた。臨時日雇労働者のみならず,常用雇用者数も前年水準を下回るようになり,また女子の非労働力化が急激に進んだにもかかわらず失業者の増加が目立つた。特に今回の不況下においては,消費需要が停滞的であつたこともあつて,過去の不況下で雇用需要減退の下支え的な役割りをはたしてきた卸小売業,サ-ビス業や製造業のなかの衣服,家具などの軽工業,さらに規模別には中小企業の雇用停滞が特徴的であつた。
他方,賃金面では所定外労働時間の削減による超過勤務給の増勢鈍化,年末賞与の分割払い,あるいは管理職を中心とする貸金カット・昇給停止がみられた。もつとも,49年春闘は狂乱物価による実質賃金低下ということもあつて,春闘史上最高の賃金の引上げが実施され,49年度平均の賃金上昇率は28.8%と前年度の伸び(21.8%)をさらに上回り,30年代,40年代を通じて最高の上昇率となつた。こうした反面,消費者物価は,48年度に続いて2桁の上昇となつたため,49年度の実質賃金上昇率は前年度比5.7%の上昇にとどまり,40年代において48年度に次ぐ低い伸びとなり,名目と実質はこれまでにないかい離を示した。
不況の賃金面への影響が本格的にあらわれたのはむしろ50年度に入つてからであり,40年不況,46年不況下においても前年水準を下回ることがなかつた賃上げ額が50年春闘では前年を50%近くも下回る低い妥結額となつた。
今回の不況は,労働市場面に深刻な影響を与えた。特に生産の落込みが大幅であつたこともあつて,雇用調整は過去の不況期に比べ広範化,多様化したことが特徴的であつた( 第11-1表 )。
労働省「労働経済動向調査」(50年2月,5月)によると,製造業において雇用調整を実施した事業所数は,49年1~6月には全事業所数のなかで26%にすぎなかつたものが,その後は期を追つて増加し,50年1~3月には74%にまで高まつている。
このように雇用調整を実施する企業が増加するなかで,その雇用調整の内容も当初は「残業規制」,「中途採用の削減,停止」が中心であつたのが次第に「臨時労働者の再契約停止,解雇」,「配置転換・出向」などを行なう企業が増加し,49年年末から50年年初には「一時休業」を採用する企業が急増し,また「希望退職の募集・解雇」を採用する企業が目立つて増加するなど,雇用調整は次第に広範化,多様化していつた(本報告 第11表 参照)。
また,今回特に注目されるのは,49年3月新規学卒採用内定者の取消しや,採用の延期などの措置をとる企業が急増したことである。さらに50年度に入つても,景気の先行き不安定などから51年3月新規学卒の採用見合わせを決定する企業がみられたのも今回の大きな特徴である。
48年度に過去最高の高まりをみせた有効求人倍率は,景気後退に伴つて急速に低下し,49年10~12月には0.84倍と1を割り,さらに50年1~3月には0.72倍まで低下した( 第11-2図 )。
こうした労働需給の緩和は,過去の不況期にもみられたが,今回の特徴はピーク時の求人倍率が高かつたこともあるが,落込み幅が大きく,しかもその落込みのテンポもかなり早いということである。ちなみに求人倍率のピークからボトムまでの期間および低下幅を過去の不況期と比べてみると,40年不況期には,39年7~9月から40年10~12月にかけて0.27ポイントの低下,46年不況期は45年1~3月から46年10~12月にかけて0.46ポイントの低下であつたのに対し,今回は48年7~9月から50年1~3月までの間に1.14ポイントも低下している。
また,これとならんで,これまでの不況下においては,中小企業での労働需給の緩和はほどんどみられなかつたのに対し,今回は大企業ほどではないが中小企業の需給緩和の程度がかなり大きかつたことも今回の特徴としてあけられる。
こうした労働需給の急速な緩和の動きは,49年度前半は主として求人の大幅な減少による面が強く,年度後半は求人の減少が続くなかで求職者が大幅な増加を示すという形で進んだ。
新規求入数(学卒,パートタイムを除く)の動きをみると,49年1~3月には前年同期比18.8%減と減少に転じたあと,期を追つて減少幅を拡大し,49年10~12月には40.4%減と大幅に減少した。ついで50年にはいると減少幅はやや縮小したものの,49年度の求人数は前年度比34.9%減と大幅に減少した( 第11-3表 )。
こうした求人減少の内容を産業別(49年度平均)にみると,金融・保険,不動産業を除くすべての産業が前年水準を下回り,なかでも製造業からの求人数は景気後退に伴う大幅な減産から前年度に比べて52.5%減と大幅に減少した。また,公共投資の削減,建設需要の不振に直面した建設業や,消費需要の停滞の影響を受けた卸小売業,サービス業も過去の不況期以上に大幅な減少をしており,これらの産業の求人減少が今回の不況下の求人数の落込みを過去の不況期以上に大きなものとした。
また,規模別にみると,求人の減少は小零細企業からはじまり,49年1~3月にはすべての規模で減少を示した。49年度平均でみると,29人以下規模の14.6%減に対し,1,000人以上規模では61.6%減と,大企業ほど減少幅が大きかつた( 第11-4図 )。
一方,新規求職者数は,求人数の減少よりやや遅れて49年4~6月に増加に転じ,その後期を追つて増勢を強め,49年10~12月には前年同期を24.3%上回つた。50年1~3月も21.1%増となつたが,49年度平均でみると,前年度比14.1%増となつた。
こうした求職者の増加は,当初は臨時,季節労働を希望する求職者が中心であつたが,年度後半以降は常用労働を希望する求職者にも波及し,10~12月の常用求職者は前年同期比で37.3%増,50年1~3月36.6%増と臨時,季節求職者の6.7%増,19.4%減を大幅に上回つた。
このように求職者数が増加するなかで,完全失業者数の増加も目立つた。
完全失業者数は,46年不況のピーク時(47年1~3月)には73万人,完全失業率は1.4%(季節調整値)に達したが,その後の景気回復とともに減少し,48年10~12月にはそれぞれ62万人,1.2%まで低下した。しかし,景気後退が進行し,雇用調整が広範化するなかで失業者は再び増加に転じ,50年1~3月の完全失業者数は88万人,完全失業率は1.7%となつた。また,失業保険受給率でみても48年10~12月には2.1%(季節調整値)まで低下したが,その後増加に転じ50年1~3月には3.1%と40年代初めの水準にまで高まつている。もつとも,大量の失業者発生を回避するため,50年1月より雇用調整給付金制度が繰上げ実施されたため,完全失業者数,完全失業率は50年に入ると増勢が鈍化したという面がある。いま50年1~3月の現実の完全失業者数,完全失業率と49年4月から12月までのすう勢値による50年1~3月の完全失業者数,完全失業率とを比べてみると,前者の方がそれぞれ6万人,0.09ポイントすう勢値を下回つているが,これは雇用調整給付金の助成による解雇の防止効果などがあつたことを表わしているといえる( 第11-5図 )。
第11-5図 完全失業率及び完全失業者のすう勢値がらのかい離
なお,雇用調整給付金の支給状況をみると,支給を受けた事業所数,休業延日数,休業対象被保険者数は,50年1~3月にそれぞれ5,887事業所,3,144千人・日,355千人,4~6月には21,477事業所,8,845千人・日,1,028千人に達した。また支給総額は1~3月55億円,4~6月181億円にのぼり,いずれも4~6月になると急増している。
学卒労働市場における49年3月卒の労働需給状況をみると,就職希望者が減少を続け,また求人も大幅に増加したため,求人倍率は中学卒で6.7倍,高校卒で3.9倍と,これまでと同様,いわゆる「売手市場」の様相を示していた。
しかし,50午3月卒については,一般労働市場における労働需給緩和が学卒労働市場にも波及し,「求人取消し」,「採用内定取消し」,「自宅待機,採用延期」などの動きがみられると同時に,求人数そのものも前年に比べて,中学卒は35.3%減,高校卒も21.1%減といずれも大幅に減少した。一方,求職者数は,中学卒で27.7%減,高校卒も8.2%減と前年に続き減少した。このため,求人倍率は求人の減少ほどには低下せず,中学卒の求人倍率は49年3月卒の6.65倍から50年3月卒は5.94倍と低下し,高校卒もこの間3.94倍から3.38倍へと低下したが,いぜん新卒の求人は超過傾向にある。
このように,労働需給が緩和するなかで,就業者数は女子を中心に49年度には減少に転じ,年度後半には常用雇用も前年水準を下回つた。
49年度の就業者数は,前年度に比べ43万人(0.8%)の減少となつた。これを男女別にみると,男子就業者数は10万人(0.3%)増と小幅な増加を示したのに対し,女子は52万人(2.6%)減と大幅に減少した。女子就業者数の減少内容をみると,不況の影響によりパートタイマー,内職などの職が減少したため,仕事を主としている者は0.9%の微減であつたが,家事のかたわら仕事をしている者は6.2%減と大幅に減少した。このように減少した女子就業者は,完全失業者として労働市場には滞留せず,いわゆる家庭に還流するという形態をとつた。この結果,49年度の女子非労働力人口は前年度に比べて4.1%(90万人)増と大幅な増加を示した。こうした女子の非労働力化は,過去の不況期と同様に女子労働力が雇用のバッハー的存在となつている点が少なくないが,男子世帯主の家計維持率が相対的に高まり,主婦が就業する場合就労条件を選択する傾向が近年強まつてきたことがかなり影響しているものとみられる( 第11-6図 )。
次に,就業者数を非農林業,農林業別にみると,非農林業就業者数は,戦後一貫して増加していたが49年度には0.5%減とはじめて前年を下回つた。また,農林業就業者数は,46年度9.5%減,47年度6.8%減,48年度8.6%減と,毎年大幅な減少を続けてきたが,49年度は不況の影響により,他産業への転職や出稼ぎなどの就業機会が大幅に減少したことから3.3%減と小幅な減少にとどまつた。
49年度の雇用の動きをみると,増勢は著しく鈍化し,年度後半には減少に転じた。
毎月勤労統計調査(従業員30人以上)によると,49年度の全産業常用雇用は,前年度比0.1%増の伸びにとどまつた。これは,30年代はもちろんのこと,雇用の伸び率の鈍化が目立つた40年代を通じて最も低い伸びであつた。これを四半期別にみると,49年度前半は前年水準を上回つていたが,年度後半になると,49年10~12月は0.1%減,50年1~3月は1.2%減と前年水準を下回つた。このように全産業の常用雇用が前年水準を下回つたのは,過去の不況下においてもみられなかつた現象である。
産業別に常用雇用の動きをみると,48年度に減少を示した卸小売業,金融保険業,運輸通信業は49年度には逆に増加を示したが,その増勢は過去の不況期のそれを下回つている。また,減産体制の強化された製造業は,49年7~9月に前年水準を下回つて以来,期を追つて減少幅を拡大し,年度平均では1.7%減となつた。
製造業を業種別にみると,消費需要の停滞の影響により,繊維,電気機器,家具などの減少が大きく,また,住宅建設の落込みから木材,窯業・土石などの減少も大幅なものとなつている。これに対し,食料品,化学,一般機械,鉄鋼などでは比較的堅調な動きを示していたが,50年1~3月には食料品などを除くほとんどの業種で前年水準を下回るようになつた( 第11-7表 )。
また,製造業の規模別雇用の動きを入職超過率によつてみると,49年度平均ではいずれの規模も入職より離職が上回り,大幅離職超過を示した。もつとも,離職超過に転じた時期は,規模によつて異なり,30~99人規模では46年1~3月以降離職超過傾向にあるが,500人以上では49年1~3月に離職超過となつた。500人以上では入職抑制という動きが強まり,これに対して30~99人では離職によつて雇用が減少するという違いがみられた( 第11-8図 )。
このように,常用雇用が年度後半に減少したのは,今回の景気後退に伴なう生産調整が広範囲,かつ大規模であつたことや,雇用調整策としての労働時間の短縮が限界に達したことなどを反映したものとみられる。
49年度の労働時間は,減産体制の強化に伴う残業規制の実施による所定外労働時間の大幅な減少を中心に一段と短縮した。
毎月勤労統計調査による全産業の総実労働時間は,前年度比3.3%減と,かつてない大幅な減少となつた。この内訳をみると,所定内労働時間が出勤日数の減少を反映して,48年度の1.9%減に次ぐ1.6%の減少となつたが,これは週休2日制の普及ということと並んで,不況の影響により一時休業が多くの企業で実施されたことによる面が大きい。また,所定外労働時間は,48年度後半以降減少に転じ,生産調整が広範囲化した49年度7~9月以降減少幅を拡大し,前年度比21.8%減となつた( 第11-9表 )。所定外労働時間の減少は,特に製造業で著しく,前年度比33.6%減となつた。業種別には,電気機器(47.1%減),家具(41.8%減),木材(40.4%減),繊維(37.5%減)などの消費関連業種の減少が目立つた。
また製造業を規模別にみると,規模によつて減少に転じた時期に差がみられるものの,49年度の所定外労働時間は,前年度に比べ30~99人規模は33.0%減,100~499人35.1%減,500人以上33.2%減といずれの規模も30%を上回る大幅な減少となつた。ただ,過去の不況期と比べると,中小企業での落込みが大きい。
49年度の賃金は,春闘の賃上げ額が史上最高を記録したことから,戦後混乱期をのぞけば最高の伸び率となつた。
労働省「毎月勤労統計調査」による全産業の現金給与総額は,前年度比28.8%増と,高かつた48年度の伸びをさらに6.8ポイントも上回つた。これは,49年春闘が狂乱物価下で異常な落込みを示した実質賃金の修正ということなどから,春闘史上最高の賃上げ率となつたことや,夏期賞与一時金が,主要大手企業で前年度比47.0%増と史上最高の伸び率となつたことなどによるものである。もつとも,この間消費者物価が21.8%と前年に続き2桁台の上昇を続けたため,実質賃金上昇率は5.7%の上昇と,40年代以降においては48年度に次ぐ低い伸びにとどまり,名目と実質とのかい離が目立つた( 第11-10表 )。
賃金上昇率の年度間の推移をみると,年度前半は前年同期比31.1%増と増勢を強めていたが,下半期には26.8%増と増勢は鈍化した。これは, 第11-10表 にみるように,①超過勤務給が減産の強化から0.3%減と減少したこと,②47年夏季賞与以来毎期増勢を強めていた賞与が49年夏季をピークに,年末一時金は9月期決算が減益となつたことから27.4%増と増勢が鈍化したこと,③管理職を中心とする賃金カットや昇給延期などの措置をとつた企業が50年1~3月に全事業所数の38%にも達したこと,などの理由があげられる。なお,49年年末賞与の支給にあたつては,企業金融がひつ迫していたことなどから分割支給の実施や社内預金への繰入れを要請する企業もみられた。
さらに,50年度に入ると,賃金上昇率は4~6月には前年同期比13.3%増と増勢は一段と鈍化を示した。これは,不況下の50年春闘の妥結額が主要大手企業で15,279円(13.1%)と,前年とは様変わりとなつたこと,夏季賞与一時金が主要大手企業で7.4%の伸びにとどまつたことなどによるものである。なお,50年春闘は,妥結額がかなり低かつたこととならんで次のような特徴がみられた。①妥結時期が例年に比べかなり遅れ,6月以降に妥結を持越した企業が主要大手企業で約15%,中小企業で40%強にものぼつたこと(本報告 20図 参照),②妥結時期別賃上げ額は,49年には妥結時期が遅くなるほど賃上げ額が高まつたのに対し,50年春闘では妥結時期が遅くなるほど賃上げ額が低かつたこと(本報告 第21表 参照),③企業間の賃上げ額の分散が,大企業,中小企業とも拡大したことである(本報告 第22表 参照)。
以上みたように,49年度の賃金上昇率は,全体としてみるとかつてない高まりを示したが,これを産業別,規模別にみるとかなりの差がみられる。
まず,産業別にみると,すべての産業で前年度の伸びを上回つているものの,鉱業(41.6%増),サービス業(33.4%増),運輸通信業(30.9%増)では30%を上回る大幅な上昇を示したのに対し,不動産業,建設業ではそれぞれ21.6%増,24.8%増の低い伸びにとどまつた。また,業種別には,特別給与の伸びが高かつたパルプ・紙,化学,食料品,石油・石炭,ゴム,窯業・土石,鉄鋼などで30%を上回る伸びとなつたが,一方,不況の影響を強く受け特別給与が前年度比でマイナスとか低い伸びにとどまつた繊維,衣服,木材などでは超過勤務給の減少と相まつて20%前後の低い伸びにとどまるなど,業種別賃金上昇率もかなりの差がみられた。
また,規模別賃金上昇率を製造業についてみると,500人以上の大企業では前年度比28.3%増と前年度の伸びを4.8ポイント上回つたのに対し,5~29人規模では23.1%増と前年度を1.2ポイント上回つているにすぎず,規模が大きくなるほど上昇率が高く,規模別賃金格差は拡大した( 第11-11表 )。過去の不況期においては,大企業ほど中小企業に比べ賃金の増勢が鈍化し,規模別賃金格差は縮小する動きがみられたのに対し,今回の不況下では逆に格差が拡大した。これは,不況の影響が繊維,木材,衣服,家具など,中小企業の多い消費関連分野に強くあらわれ,これら分野においては大幅賃金上昇に追随することができなかつたことを反映しているためとみられる。
49年度の賃金と労働生産性との関係をみると,生産の大幅な落込みによる稼働率の著しい低下などから,労働生産性は,49年度には前年水準を下回つたのに対し,賃金は前述のとおり大幅に増加したため,賃金上昇率と労働生産性上昇率との差が一段と拡大し,賃金コストはかつてない上昇を示した( 第11-12図 )。
日本生産性本部「生産性統計」によつて製造業の労働生産性の動きをみると,48年度前半の景気上昇局面では,稼働率の上昇などによつて前年比21.4%増と高い伸びを示したが,年度後半には,石油,電力の消費規制の影響から生産の伸びが鈍化したことなどにより徐々に低下した。49年度に入ると,4~6月には前年同期比で3.6%増と増勢はさらに鈍化し,7~9月には前年水準を2.3%下回つた。年度後半に入ると,10~12月8.8%減,50年1~3月12.4%減と減少幅はさらに拡大し,年度平均では5.2%減と40年不況期のそれをも10.0ポイントも下回つている。このように労働生産性が大幅に低下したのは,もつぱら減産強化などにより生産が戦後最大の落込みを示したことによるものである。
労働生産性が年度後半前年水準を下回つたのに対し,賃金は増勢が鈍化したとはいえ年度を通して20%を上回る上昇を示したため,賃金コスト(賃金指数/労働生産性指数)は4~6月には25.8%増と大幅に増加したあと,7~9月36.4%増,10~12月34.7%増,50年1~3月44.2%増と増勢を強め,49年度平均では35.9%増となつた。