昭和50年

年次経済報告

新しい安定軌道をめざして

昭和50年8月8日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

10. 物  価

(1) 卸売物価の動向

a 49年度の卸売物価の動き

49年度は,48年秋のいわゆる石油危機発生を契機として生じた異常な物価急騰がしだいに収束に向う過程であつた。

羊毛,大豆など一次産品の国際商品相場(ロイター指数)は,49年2月をピークに下落に転じ,また,48年年初より急上昇していた国内主要商品市況も,引締めが次第に浸透するなかで,石油危機直後の仮需の一巡後急反落し,さらに,卸売物価も需給が大幅に緩和した49年度後半には鎮静化した( 第10-1図 )。

第10-1図 物価動向と商品市況

卸売物価の動きを日銀「卸売物価指数」(45年=100)でみると,48年11月から49年2月にかけて月率で4.9%上昇と急騰した後,3月から8月にかけては月率0.8%と騰勢は鈍化し,9月以降さらに落着きを取戻した。すなわち,9月~12月には月率0.3%の上昇にとどまり,50年1月には前月比0.4%下落し,36か月ぶりに下落に転じた。これを前年同月比でみると,49年2月の37.0%上昇をピークに,10月には20%台,12月には10%台へと上昇率はしだいに低下し,年度間上昇率(3月の前年同月比上昇率)は4.9%となつた( 第10-2図 )。なお,49年度平均上昇率は48年度の22.6%を上回る23.4%であつた。

第10-2図 卸売物価指数総平均月別の推移

こうした49年度の卸売物価の動きを期別,商品類別にみると,次のような特徴がみられる( 第10-3表 )。

49年4~6月は,国内需給が次第に緩和に向うなかで,基礎物資・生産関連物資等の価格抑制のための緊急対策(3月16日,事前了承制を実施。対象53品目など)の効果もあつて,騰勢が鈍化した時期であつた。しかし,インフレ心理は根強く残り,先高期待感から商品市況が反発する局面もみられた( 第10-4図 )。

鉄鋼は高炉メーカーのひも付き鋼材値上げ申請気運の強まりから,4月から5月にかけて市況は反騰した。また,下落を続けていた綿糸など天然繊維原糸もメーカーの自主減産の強化により下げどまり,6月中旬から7月上旬にかけて底入れ感から小反発した。

化学製品は,高・中低圧ポリエチレン,ベンゼンなどの主要製品が行政指導による価格抑制の対象となつていたため,値動きはあまりみられなかつたが,石油・石炭・同製品は輸入原油の続騰及び抑制されていた石油製品価格の値上げ了承(3月18日,重油,軽油など平均62%,6月1日灯油元売り仕切り値96%アップ)により大幅な上昇を続けた。一方,消費の落込みから49年1月をピークに下落していた繊維製品は,上述のごとく天然原糸類は下げどまりをみせたものの,合繊,織物類を中心に続落し,製材・木製品も建築需要の不振を背景に大幅に下落した。また,非食料農林産物,非鉄金属も海外相場の軟化から下落した。

第10-3表 最近の卸売物価の動き(前月(期,年度)比騰落率)

第10-4図 主要商品市況の動き

7~9月は,事前了承品目の値上げ了承が期前半に集中したため一時的に騰勢は強まつたが,産業界の期待とは逆に総需要抑制策が継続されたため,景気後退感は一気に強まり,下げどまりないし小反発を示していた商品市況が急落し卸売物価も落着きをとりもどした時期であつた。月別の前月比上昇率でみると,7月1.1%,8月1.0%のあと,9月には0.1%となつた。

品目別にみると,鉄鋼がひもつき鋼材価格の引上げおよび輸出価格の続騰から大幅に上昇したほか,化学製品(肥料など)窯業製品(セメント)などが値上げ了承から上昇した。一方,実需不振から繊維製品,製材・木製品は続落し,海外相場安から非鉄金属が大幅に下落した。なお,事前了承制の対象品目は逐次同制度から解除され,9月にはすべて解除された。

10~12月は,それまで堅調であつた鉄鋼が反落するなど,内・外需給環境の悪化を背景に卸売物価の落着きが鮮明になつてきた時期であつた。

化学製品,石油・石炭・同製品が続騰したものの上昇を続けていた鉄鋼が輸出の頭打ちおよび内需の落込みから反落し,非鉄金属も需要不振と海外相場の下落からさらに下落した。しかしながら49年年初来下落を続けていた繊維製品はようやく下げどまり,製材・木製品も合板不況カルテル認可見通しなどから年末には反発した。

50年1~3月になると,化学製品も下落に転じ,石油・石炭・同製品の上昇もようやく頭打ちとなつた。また,これまでじり高を続けてきた機械類も下落し,下げどまりをみせた繊維製品,製材・木製品も反発力は弱まり,食料品および石油・石炭・同製品を除く全類別で下落を示した。1~3月の下落を特殊分類による財別寄与度でみると,48年度から49年度上期にかけての上昇の中心であつた生産財の反落によるところが大きく,また輸出品の下落寄与度も大きなウエイトを占めた( 第10-5図 )。

第10-5図 最近の卸売物価騰落率と財別寄与度

b 卸売物価騰落の要因

以上のように卸売物価の騰勢は次第に鈍化し,50年1~3月には下落に転じたが,ここで,その騰落の要因を検討してみよう(本報告 第13図 参照)。

まず国内需給についてみると,48年夏から秋にかけての需給ひつ迫は,石油危機下の10~12月をピークに49年に入つて次第に緩和の方向に向い,4~6月以降,期を追つて緩和傾向を強めた。この間製造業製品在庫率は急上昇し,すう勢からのかい離幅は50年1~3月には44ポイントとなつた。これは過去のピーク時(46年10~12月)と比較すると4倍近いひらきがある。しかも,今回は,過去の景気後退局面に比べ極めて急速に需給の緩和が進んだが,このことは,卸売物価の低下に大きく寄与した。また,今回の物価高騰の一つの背景となつた過剰流動性は,金融引締めの強化により49年初にはほぼ解消し,49年度中はむしろ過小ぎみに推移し,そのことは卸売物価の鎮静化に役立つた( 第10-6図 )。

このように49年初以降需給および金融要因が卸売物価の引下げに寄与したにもかかわらず,卸売物価が49年10~12月まで上昇を続けていたのは,海外要因および賃金コスト要因が物価上昇に働いたためである。

第10-6図 卸売物価騰落とその主要変動要因の推移

海外要因として主要なものは輸入物価の動向であるが,輸入物価は,47年秋以降上昇を続け,48年末の原油価格急騰により49年1~3月には前期比35.1%と大幅に上昇し,この期における卸売物価大幅上昇の主因となつた。その後,輸入物価の上昇率は徐々に鈍化し,50年1~3月には反落し卸売物価引下げ要因に転じた。

海外要因として輸出物価の動きも無視できない。今回の景気後退局面では,各業種ともに輸出ドライブがかかつたが,とくに,鉄鋼,化学などにおいては,国際的な需給ひつ迫から48年度から49年度前半にかけて輸出価格は急騰した( 第10-7図 )。これは,それらの卸売物価を引上げるとともに,国内同製品価格の下支えとして働くことになつた。しかし,上昇を続けていた輸出物価も欧米経済の景気後退や東南アジア諸国の外貨事情の悪化などに伴い49年秋をピークに反落し,前述のごとく,50年1~3月には卸売物価を引下げる要因として働いた。

第10-7図 主要業種の国内価格と輸出価格の推移

一方,賃金コスト要因は,49年春季賃上げの大幅べース・アップとその後の減産強化による生産性の低下が重なつて卸売物価引上げ要因として作用する度合いは期ごとに強まつていつた。そして,50年1~3月には唯一の引上げ要因となつている。しかし,今後生産が回復するにつれ,今春闘がなだらかな賃上げ率で収束したこともあつて,賃金コスト圧力は徐々に弱まるものとみられる。

c 根強い物価上昇圧力

卸売物価は総需要抑制策の持続によりようやく鎮静した。

しかしながら,鎮静化の動きを,規模別にみると中小企業性製品が需給の緩和を反映して49年4~6月以降下落しているのに対し,大企業性製品は需給緩和にもかかわらず49年中は上昇を続け,反落したのは50年に入つてからである( 第10-8図 )。しかも,この反落は輸出入価格の下落によるところが大きい。これまでのわが国大企業の市場パーフォーマンスはアメリカの大企業に比べると比較的良好であつたといえるが(本報告 第91表 参照),次第に下方硬直性を強めつつあるといえよう。

第10-8図 規模別需給度と製品価格の動き

第10-9図 主力製品の価格上昇期待感(資本金規模別)

需給緩和の著しい本年1月に経済企画庁で実施したアンケート調査でも,多くの企業が需給緩和にもかかわらず自社製品の値上げを期待しており,規模が大きいほど,企業の値上げ期待感は強まつている( 第10-9図 )。これは企業の収益が著しく悪化しているためであるが,現在の企業収益の悪化は大幅減産によるところもすくなくはなく,稼働率が向上すれば収益はある程度好転することになる(本報告 第55表 参照)。安易な値上げはインフレーションの再燃につながる。生産財メーカーの価格引上げは加工メーカーの原材料コスト増をもたらし,それが加工メーカーの製品価格引上げを通じて消費者物価にも波及する。物価の騰勢が強まれば賃金上昇率の引上げをもたらし,全般的に企業のコスト負担は増加するのであり,物価上昇は企業経営にとつても決して望ましいことではない。たしかに48年の狂乱物価は一時的には企業収益の大幅な上昇をもたらしたが,その代償はそれ以上に大きなものとなつた。したがつて,物価安定は長期的にみれば企業経営にとつて望ましいことであるといえよう。

(2) 消費者物価の動向

a 異常高騰から収束方向へ

49年度の消費者物価は前年度に引続き高騰を示した。消費者物価指数(総理府統計局調べ,全国,昭和45年=100)は,49年度には159.6となり,前年度比上昇率は21.8%と,48年度の16.1%を大幅に上回つた。この上昇率は終戦直後の混乱期を除けば,朝鮮動乱後の昭和26年の16.4%をしのぐ大幅な上昇率であつた。もつとも年度間の推移をみると,49年年初以降年末にかけて前年同月に比べ23~24%という高騰を続けていた消費者物価は,50年に入つてようやく鎮静化の方向に向い,50年3月には前年同月比14.2%と政府がめざした15%以内という目標を達成した。

第10-10図 消費者物価の上昇率と上昇寄与率

49年度の消費者物価の動向を,まず特殊分類別でみると,農水畜産物・工業製品などの商品が前年度比23.1%の上昇,公共料金・個人サービスなどのサービス価格が19.2%の上昇と,前年度に引続き商品の上昇率がサービスのそれを上回つた。さらに商品の内訳をみると,全体の5割弱のウエイトをもつ工業製品価格は,48年度後半から騰勢を強めた大企業性製品が49年度に入つても引続き大幅な上昇となつたのに加え,中小企業性製品も根強い動きを示したため,48年度(18.5%)を上回る23.2%の大幅上昇となつた。もつともその騰勢も年度後半には期を追つて弱まり,なかには繊維製品のように過剰在庫と需要の停滞により1~3月には前期比2.2%下落,前年同期比で6.1%の上昇にとどまつたものもある。一方,農水畜産物は,生鮮食料品が49年10~12月には前期比マイナスとなつたものの年度平均では前年度比20.4%(48年度は同18.5%)の上昇となつた。また出版物は紙代,人件費等のコスト圧力が大きく影響して,49年7~9月には前期比23.1%の高騰をみせ,年度平均では35.6%(48年度は16.6%)と,かつてない大幅上昇となつた。

第10-11表 特殊分類別の消費者物価指数

地方サービス価格は,民営家賃が前年度比7.9%上昇と,47年度(8.5%),48年度(8.5%)なみの比較的落着いた動きをみせたものの,公共料金(本報告 第15表 )は15.3%(49年度は3.7%),人件費圧力の強かつた個人サービスは22.9%(同16.9%),食料の大幅値上りが影響した外食が23.5%(同18.2%)の上昇と,いずれも48年度を上回る大幅上昇となつた。

次に年度間の推移をみると,49年1~3月に前期比9.9%の高騰をみせたあと49年4~6月には4.7%の上昇と,上昇率は半減したものの依然騰勢は強かつた。これは前期に異常な高騰をみせた商品の上昇率が大きく鈍化したものの,サービス価格が人件費の上昇圧力などから対個人サービス価格を中心に騰勢を強めたことによるものであつた。

7~9月に入ると,出版物や生鮮食料品価格の大幅上昇により農水畜産物が騰勢を強めたが,工業製品は政府の物価安定化対策の効果が定着化し加えて需要停滞長期化の様相が強まつたことなどから,中小企業性製品価格を中心に騰勢は急速に弱まり全体としてみると前期比3.7%の上昇にとどまつた。

10~12月になると,それまで延期されてきた公共料金の料金改定が実施されたため,公共料金価格は前期比9.5%の上昇を示した。また,前年同期比でも20%を上回つたことなどにより,サービス価格は前期比6.1%上昇と再び騰勢を強めた。しかしながら商品価格はさらに落着き傾向を示したため,総合では前期比4.4%上昇と前期を若干上回る上昇率にとどまつた。

ついで50年1~3月に入ると上昇率はさらに鈍化し,前期比では1.5%上昇と,48年10~12月以来5四半期ぶりに20%台を下回る上昇率となつた。なかでも工業製品価格の落着きが顕著であつたが,特に中小企業性製品価格は需要不振による卸売物価の急速な鈍化を反映して,前期比0.5%,前年同期比で10.8%の上昇にとどまつた。

b 49年度の特徴

49年度の消費者物価の動きをみると,次のようないくつかの特徴点があげられる。

第1点は終戦直後の混乱期を除けば戦後最高の上昇率を示したことである。しかも欧米主要国と比較してもアメリカ11.0%,イギリス16.0%,西ドイツ7.0%,フランス13.7%,イタリア19.1%(いずれも1974暦年)などに比べて,わが国の消費者物価上昇率は24.5%と際立つて高かつた。

第2点は,このように上昇率が大幅であつただけに比較的早期に収束過程に入つたということである。一次産品,石油など海外依存度の高いわが国では国際市況ならびに石油価格高騰の影響を強くうけたが,2年におよぶ総需要抑制策の浸透により卸売物価の鎮静化が進み,また消費需要の停滞などから消費者物価も50年に入つて著しく騰勢が鈍化した。消費者物価の先行きについては楽観することはできないが,50年春以降ようやく景気浮揚策を取りうる余地が生じてきた。

第10-12表 卸売,消費者物価共通品目の市場占有率別にみた動向

第3点は,これまで大きな上昇率の格差がみられた大企業性製品と中小企業性製品価格が,49年度にはその差がほとんどみられなかつたことである。すなわち47年度は前者が1.3%,後者が6.5%,48年度は10.8%,24.8%と大きな開きがあつたのに対して,49年度はそれぞれ23.1%,23.4%となつている。これは48年度において中小企業性製品が大幅な上昇を示したこともあるが,これまで生産性向上によつて相対的に価格を低位に保つことが可能であつた大企業性製品が急騰したためである。大企業性製品は比較的基礎資材の生産ウエイトが高く,しかも輸入原燃料価格に左右される度合が大きい。49年度はこうした原燃料価格の大幅上昇と,需要不振による稼働率の低下によるコスト圧力の増大から価格転嫁への志向を強めたためとみられる。ここで市場占有率の高い商品と低い商品の消費者物価の推移をみてみると 第10-12 表に示すように,48年以前では市場占有率の低い品目の上昇率のほうが高かつたのが,49年に入つてからはそれとは逆に市場占有率高い商品の値上りが認められる。

第10-13図 消費者の物価の先行きに対する意識の推移

第4点は,49年秋以降公共料金の値上げが集中したことである。公共料金については他の物価にも増して,国民生活に与える影響が大きいため,政府,地方公共団体等はその改定にあたつては慎重に取扱つてきた。48年度後半には石油危機に伴う物価上昇が狂乱的様相を呈したためもあつて,公共料金の引上げが繰延べられたが,事業主体の財務事情が一層悪化したことなどから,49年10月には国鉄運賃(同23.6%),医療費(同16.0%)などが引上げられた。公共料金の上昇率は48年度の3.7%から49年度には15.3%となり,その上昇寄与度2.5%から7.8%へと高まつている。なお,電力料金値上げに際しては,物価安定政策会議特別部会(49年5月15日)において「料金体系については,生活必需物資の価格への影響を含めて,一般家計への影響の緩和に極力配慮することとし電灯料金についてはナショナル・ミニマムの範囲を極力引上げる等福祉志向を図る」旨の提言がなされたことなどもあつて,①電灯需要についての3段階料金制度を採用し,生活必需的な使用量と想定される120キロワット時までについては,比較的低廉な料金を適用する,②料金改定に伴う影響緩和措置として生活保護家庭の需要者に対しては,昭和50年3月31日まで,旧料金の適用を行うなど国民生活の安定への配慮が払われた。

第10-14表 費目別の所得弾性値と価格弾性値

このような大幅な物価上昇は,本報告第1章4節でのべたように,個人の消費態度を大きく変化させた。経済企画庁「消費者動向予測調査」によれば,48年8月時点調査では「今後1年間の消費者物価上昇率は現在よりも一層高くなる」とみるものが90.7%と過去にはみられない高率を示している( 第10-13図 )。そこで48年10月(石油危機発生時)以前とそれ以後の個人消費支出の価格弾性値を計測してみると 第10-14表 のような結果がえられた。これによると48年10月以降,急速に価格効果が働き,個人消費支出を減退させたことがうかがえる。さらに,所得階層別にみると,低所得者層ほど物価上昇に対してその消費態度が防衛的となつている。これを個別費目別にみると,明瞭な消費態度の変化が必ずしも明瞭にはあらわれないが,耐久消費財購入(家具什器),設備修繕などいわゆる設備投資的な支出や外食などではいずれも価格弾性値が急上昇した点は注目される。

c 消費者物価上昇の要因

48~49年度の消費者物価上昇の要因については,本報告 第17表 にあるように,卸売物価の波及効果,需要要因,賃金コスト(賃金/労働生産性)などがあげられる。

48年度においては,卸売物価の波及効果,賃金コスト要因とならんで需要要因(実質個人消費支出)がかなりのウエイトを占めているが,49年度に入ると需要減退が顕著となるにつれて需要要因は大きく後退し,50年1~3月期には逆に物価を押し下げ要因へと変つてきている。

一方,49度の消費者物価上昇要因の主役となつたのが,卸売物価と高騰と賃金コストの上昇である。前年度比22.6%の大幅な卸売物価の上昇率と30%を越える春季賃上げは消費者物価を48年度にもまして上昇させる要因としてはたらいた。

もつとも,卸売物価の上昇も先にのべたように年度後半以降騰勢を弱めており,その影響は消費者物価にも次第に波及しつつある。すなわち,卸売物価の上昇が消費者物価を最も引上げていた49年7~9月には12.6%にも達していたが,50年1~3月には同じく8.4%へと低下している。また消費者物価上昇に対する賃金コストの上昇寄与度についても,時間外手当の大幅減などから期を追つて弱まつてきている。

消費者物価の先行きについては,変動の大きい季節商品の動きにある程度左右されようが,本報告I-1-(2)にもあるように卸売物価鎮静の波及効果やなだらかな賃金決定などから当面は落着いた動きを示すものとみられる。


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