昭和48年

年次経済報告

インフレなき福祉をめざして

昭和48年8月10日

経済企画庁


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第5章 インフレなき福祉をめざして

日本経済は福祉社会の建設に向かつて大きく第一歩を踏みだした。

昭和47年度から,住宅,生活環境施設や老人医療,医療保険,各種年金などの積極的拡充を通じて,福祉向上への政策は画期的に前進した。対外均衡の面においても,円切上げ,数次にわたる対外経済政策と果敢な財政金融政策の展開により.また変動相場制への移行もあつて,繰返される通貨危機の衝撃を切抜け,国際収支は急速に均衡に向かつている。

しかしその一方で,47年秋から卸売物価が急騰をはじめ,また48年初からは消費者物価も騰勢を強めるなど,朝鮮動乱以来といわれる激しい物価騰貴が表面化した。日本経済は外に対しては引続き対外均衡の実現を進め,内においては環境汚染,都市・住宅問題などの解決や社会保障の充実を急がねばならず,福祉社会のすみやかな建設は,全国民の切実な願いである。その門出の年に当たつて日本経済は内外のめまぐるしい変化に遭遇し,インフレーションの脅威を取除くという大きい試練を乗りこえることが当面の緊急な問題となつてきた。

こうした情勢に鑑み,本年度の年次経済報告は,この1年間に予想をこえて急拡大に転じた日本経済の実相を明らかにし,その過程で表面化した激しい物価騰貴の原因を究明するとともに,現在とられつつある総需要抑制策の効果を検討し,福祉経済における政策運営のあり方を探ることとした。


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