昭和48年
年次経済報告
インフレなき福祉をめざして
昭和48年8月10日
経済企画庁
第4章 福祉充実と資源配分
46年なかば以降の国際通貨不安を含む一連の国際環境の変化は,日本経済が戦後一貫して歩んできた生産・輸出優先政策を反省させ,福祉優先政策に転換する契機として重要な意味をもつていた。
40年代に入つてから次第に明らかになつた成長と福祉の乖離を解消するため,47年から48年にかけて公共部門主導型経済への転換がうち出され,多くの政策努力が払われてきた。しかし,この1年の間に社会資本の整備等公共支出の増加が続くなかで,民間設備投資の本格化により需給がひつ迫し,激しい物価上昇を招くこととなつた。また,四大公害裁判の終結に明らかなように公害に対する企業の責任が明確化されたものの,PCB,水銀汚染など日常生活に対する公害の脅威はさらに広汎なものになろうとしており,このような状況のもとで環境汚染防止政策は新たな転換点を迎えている。
こうした経験は福祉社会の建設が決して平坦な道ではないことを教えるものであつた。激しい物価上昇を克服し,福祉充実への目標達成のため,さらにわれわれは多くの努力を続けなければならないが,過去1年の福祉政策の展開をふり返り,今後の福祉充実への課題についてみることとしたい。