第1章 昭和47年度経済の動向

昭和47年度には,わが国経済はインフレーションの脅威に直面することとなつた。景気は年度前半のゆるやかな回復から,年度後半の急拡大へと展開した。国際収支は大幅黒字を続けたが,変動相場制移行もあつて年度末近くには急速な黒字縮小をみ,対外均衡達成の課題は解決に向かつている。しかし,卸売物価は朝鮮戦争以来の急上昇を示し,47年中落着いていた消費者物価も,48年に入り急騰に転じるなど,物価上昇は全面化,加速化する勢いをみせている。こうした物価急騰のなかで,成長路線の転換と国民福祉重視の資源配分は,多くの隘路に遭遇しつつある。

国際協調を進めるかたわら,国内経済を安定的軌道にのせ,国民福祉の充実を図つていくためには,解決すべき問題はあまりにも多い。しかし,この試練を乗越えることなくしては,福祉社会実現への道は遠い。

第1章では,47年度の経済動向を回顧し,景気情勢の推移をみるとともに,その間に総需要管理政策が当面した問題について検討しよう。