昭和47年

年次経済報告

新しい福祉社会の建設

昭和47年8月1日

経済企画庁


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第1章 昭和46年度経済の動向

昭和46年度は,日本経済がこれまでの成長パターンに大きな転換を迫られた年であつた。この年,日本経済は不況から立直らないままに,巨額の国際収支黒字をかかえ,戦後最大の国際通貨危機にまきこまれた。その後,年末近くなつて多国間通貨調整が実現し,わが国も1ドル308円の新レートを設定した。こうしてわが国をとりまく不安定要因のひとつはともかくも収拾される方向に向かい,47年に入ると国内景気も底入れから回復への動きを示すにいたつている。しかし,47年6月にはイギリスが変動相場制に移行し,各国為替市場も一時閉鎖されるなど国際通貨情勢は波乱含みに推移している。国際通貨・貿易体制の再建に積極的に参加しつつ,適度の成長,国際収支の均衡,物価の安定をはかることは,なお今後に残された大きな課題である。しかも日本経済は,こうした課題を解決するなかで,成長パターンを転換し,資源配分の重点を国民福祉の向上にふりむけていかなければならない局面にある。

第1章では,昭和46年度の経済動向を回顧し,景気情勢の推移のなかにいかに成長パターン転換への胎動がうかがわれるかを検討しよう。


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