昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

5. 交通・通信

(1) 国内交通

a 輸送概況

(a) 貨  物

昭和45年度の国内貨物輸送は,トン数では前年度の伸びを若干上回つたが,トンキロの伸び率は前年度を若干下回つた( 第5-1表 参照)。

輸送量を機関別にみると,自動車の伸びは,いぜんとして高い。トンキロの伸び率は若干鈍化したものの,輸送トン数では鉄鋼,機械,石油製品が好調に推移したために,前年度の伸び率を若干上回つた。トンキロのシエアでは自家用車の方が営業車に比べてわずかに大きいが,その差は年々せばまつている。

内航海運は,石炭が前年度に引き続き大幅に減少し,鉄鋼が横ばいになつたために,全体的に輸送量の伸び率は前年度を下回つた。

鉄道輸送の大部分を占める国鉄は,木材,石炭などが減少したものの,石油,セメント,自動車,コンテナ等が増大したため,輸送量の伸びは,前年度を若干上回つた。トンキロの伸びがトン数の伸びを上回つているのは,平均輸送距離の長いコンテナが伸びているためである。

輸送近代化の動向をフレートライナー輸送とフエリー輸送についてみると,両者ともに順調に伸びており,フレートライナー輸送は,44年度は東京-大阪間,東京-名古屋間の2区間であつたのが,45年度においては,さらに東京-北九州間等4区間が開設され,これら6区間におけるプレートライナー扱いコンテナ輸送個数は,前年度比80%増の39.3万個で,国鉄コンテナ輸送個数の23%を占めた。

また,45年度のフエリー輸送は,航送人員3,616万人,航送自動車数1,435万台と,前年度に比べてそれぞれ19%,36%の伸びを示した。航路距離300キロメートル以上の長距離フエリーは,45年度末現在で小倉-神戸間等6航路が開設されており,開業準備中,免許申請中の航路数は20をこえ,本格的なフエリー時代を迎えつつある。

第5-1表 国内輸送実績

(b) 旅  客

45年度の国内旅客輸送は,個人消費支出の順調な伸びに対応して着実な伸びを示した( 第5-1表 )。輸送量を機関別にみると,国鉄定期客は前年度に比べて若干減少した。これは,人口の流出,自家用乗用車の普及によつて地方において減少したためと思われる。普通旅客は,万国博の影響をうけて前年度比3.3%増加した。これを万国博開催中の東海道新幹線利用者数でみると,前年同期比34%増となつている。

私鉄については,大手私鉄および地下鉄が沿線の宅地開発,地下鉄網の拡充等にささえられて,ほぼ前年度なみの伸びを示したが,一方,地方中小私鉄は減少した。

バスは,乗合バスが地方における人口流出,大都市における道路交通事情の悪化,地下鉄への転移等によりいぜんとして低迷を続けており,自家用バスの伸びも若干鈍化した。

乗用車については,自家用乗用車の伸びは他の輸送機関に比べていぜんとして高いが,道路交通混雑の激化の影響などもあつて,伸び率は前年度を若干下回つた。営業用の伸びも若干鈍化した。航空は,輸送量全体に占める割合は小さいが,消費水準の高度化を反映して,幹線,ローカル線ともに順調に伸びており,年々そのシエアを高めている。

b 交通関係施設計画の概要

交通関係施設,すなわち道路,鉄道,港湾,空港等の整備は,各施設別に整備計画をたてて行なわれているが,国土総合開発計画,経済計画の改訂等にともなつて,最近,これら施設計画の改訂が行なわれている。

第6次道路整備5カ年計画(46年3月30日閣議決定)は,将来の道路輸送需要の増大に対処するための輸送能力の画期的拡大,交通事故・交通混雑の解消,道路環境の改善をはかり,もつて国土の有効利用,流通の合理化,国民生活環境の改善に寄与することを基本方針として,旧計画の6兆6,000億円(計画期間42~46年)の1.57倍にあたる10兆3,500億円の総投資額( 第5-2表 )をもつて行なわれている。計画の実施により,高速自動車国道については,供用延長が642キロメートル(45年3月末)の約3倍の1,900キロメートルになり,一般道路(改築)については,一般国道,主要地方道,一般都道府県道の舗装率がそれぞれ77.6%から93.5%,56.9%から80.4%,31.7%から45.5%になると想定される。

第4次港湾整備5カ年計画(46年2月5日閣議了解)は,旧計画の1兆300億円(計画期間43~47年)の2.04倍にあたる2兆1,000億円の総投資額( 第5-3表 )をもつて行なわれ,以下の4点を重点事項としている。

第5-2表 第6次道路整備5ヶ年計画

第5-3表 第4次港湾整備5ヶ年計画

とくに海上コンテナ輸送,フェリー輸送の本格化にそなえての港湾整備が行なわれる。

また第2次空港整備5カ年計画(46年2月5日閣議了解)は,旧計画の1150億円(計画期間42~46年)の4.87倍にあたる5,600億円の総投資額( 第5-4表 参照)をもつて行なわれ,以下の4点を重点事項としている。

改訂の背景には,航空輸送量の伸びが予測をはるかに上回つていることや.大型化,ジェット化を推進する必要があることなどがある。このため,主なものとしては新東京国際空港の供用開始,関西国際空港の建設が行なわれる。

鉄道については,国鉄の財政再建計画( 第5-5表 )により,44年度から53年度までの10年間に,おおむね3兆7,000億円を限度として,その前半に重点をおいて投資が行なわれている。投資にあたつてはとくに通勤輸送,新幹線輸送,幹線輸送力の増強,合理化・近代化等,国鉄の輸送近代化のための投資を重点的に行ない,早急にその財政を再建することを目標としている。

第5-4表 第2次空港整備5ヶ年計画

第5-5表 国鉄財政再建計画

また,地下鉄については,都市交通審議会の答申にもとづいて新線建設および線増を行なつており,私鉄については,大手14私鉄輸送力増強等5カ年計画(計画期間42~46年,総投資額4,800億円)にもとづいて,都心乗入れ線の建設,新線建設,線増等を行なつている。

なお,これら交通関係施設の整備にあたつては,総合的な観点からみてこれを行なう必要があろう。

(2) 国際交通

a 貨  物

45年のわが国の貿易量をみると,輸出は40百万トン(対前年比8.7%増)で,前年(同21.1%増)に比べかなり落ちついた伸びをみせたものの,輸入は468百万トン(同20.6%増)で前年(同17.3%増)を上回る伸びを示した。

一方,45年の世界の海運市況をみると,油送船市況,不定期船市況とも,近年の世界貿易の大幅な拡大を背景に,朝鮮戦争時(昭和26~27年),スエズ動乱時(30~31年)に次ぐブームを現出した。油送船市況は,44年6月の中東紛争激化による送油混乱を機に上昇していたが,45年に入つても高水準を維持し,5月以降,TAPライン(トランス・アラビアン・パイプライン)の閉鎖,リビアの産油削減などを契機に急騰し,その後軟化に転じたものの年末においても高水準を維持した。この結果,45年の油送船運賃指数(ノルウェージャン・シッピング・ニュースによる)は,前年の87.2をはるかに上回る178.3を記録した。一方不定期船運賃市況も,45年に入つて急騰し,10月まで高水準を維持したがその後11月には急落し,ブーム前の水準にもどつた。この結果,貨物船航海用船料指数(同)は,年平均で,前年の85.2から,119.4となつた( 第5-6図 )。

第5-6図 世界海運市況の推移

ロイド統計によると,45年6月末の世界商船船腹量(100総トン以上)は22,749万総トンで,日本はこのうち2,700万総トン(全体の11.9%)を占め,リベリアに次ぐ世界第2の商船保有国となつている。またわが国の外航船腹量(3,000総トン以上)は,45年度末で,2,259万総トンに達し44年度末に比べ255万総トンの増加となつたが,増加率は昭和40年度の24.2%をピークにして,年々減少の傾向にあり,45年度も,不経済船の売船等が活発であつたため,対前年比12.7%増(44年度は,同13.8%増)にとどまつた。また邦船の積取り比率は,輸出は前年の38.8%から38.6%へ,輸入は前年の48.1%から44.6%へと推移した。外航船腹の拡充については,海外資源の安定的確保や輸出入物資の円滑な輸送を確保するなどの観点から,新経済社会発展計画においてその重要性が提言されたが,これに対応して45年11月,海運造船合理化審議会は,昭和50年度の所要保有船腹を4,500万総トンと見込み,44~49年度に2,775万総トン(45~49年度では2,400万総トン)の建造が必要であると答申した。

一方,国際海上コンテナ輸送についてみると,43年9月に日本加州航路にわが国初のコンテナ船が就航して以来,44年10月には,日本-豪州航路がコンテナ化され,45年5月には,日本-北米北太平洋航路がコンテナ化された。さらに46年11月には,欧州航路,47年にはニューヨーク航路のコンテナ化が計画されている。こうした本格的なコンテナ時代を迎え,45年には制度面においても,コンテナ輸送に関する諸条約にわが国も加盟する運びとなつた(コンテナの通関に関する条約,TIR条約)。また47年には,コンテナの複合一貫輸送に関する国際会議が開かれることになつており,この準備として,コンテナの一貫輸送責任に関する(TCM)条約,コンテナの通関に関する条約の改正,コソテナの安全に関する条約等の検討が進められている。さらに今後,コンテナ輸送のメリットを最大限に発揮させるため海陸の結節点である港湾における荷役体制の近代化,諸手続の簡素化,また鉄道,内航海運,道路等によるフィーダーサービス体制の確立が必要とされている。

なお航空貨物は,45年度には輸出入合わせて109千トンとその量はわずかであつたが伸び率は,前年度比11%増と高い伸びを示した。

b 旅  客

45年のわが国への来訪外客数は,前年比40%増の85.4万人と前年の伸び率(17%増)を大幅に上回つた。これは,商用旅客の伸びが前年比10%増と前年(同27%増)を下回つたにもかかわらず,45年には6カ月間にわたり万国博が開催されたこともあつて,観光客の伸びが対前年比61%増と前年(同24%増)をはるかに上回つたことによるものである。来訪外客の国籍別構成をみると,アメリカが35.9万人で全体の42%を占め,次に中国64万人(7.5%),韓国4.5万人(5.3%),カナダ4.3万人(5%)などとなつており,前年に比べ,アメリカの構成比(前年49%)が低下した反面,ヨーロッパ,カナダ,アジア等の構成比が高まつた。出国日本人数(沖縄への旅行者を除く)は,66万人で対前年比35%増(前年同44%増)と高い伸びを示した。これは,所得水準の向上と余暇の増大に加えて,バルクフェア(一括契約包括旅行運賃)が採用され旅行経費の低減がはかられたこと等が主な原因とみられ,今後も着実に増大するものと見込まれている。

45年の世界(ICAO加盟諸国)の国際定期航空の輸送人キロは,前年比20.4%増と前年の伸び(16.5%増)を上回る1,613億人キロとなつた。このうち,わが国の国際定期航空は前年比22.5%増の67億人キロと世界の伸びを大きく上回る伸びを示し,世界第7位のシエア(4.2%)をもつにいたつた。路線別では各線とも順調な伸びをみせた。東京国際空港における国際線の総便数に占める(1本航空の便数のシェアは,45年度は32.4%となり,前年.度C32.9)をややド1用つた。また45年度の東京国際空港における日航機の積収比率をみると,外国人は前年度の26.2%から24.4%へ,日本人も53.4%から48.6%へ,合計で36.2%から34.0%へといずれも低下した。

(3) 国内通信

a 概  況

最近の国内通信をみると 第5-7図 に示すように電報を除いていずれも増加を示している。通常郵便物数は45年度には115億通,前年度比5.8%増で前年の伸び率をやや下回つた。種類別にみると第2種(はがき)が大きく伸ている。主として大口で利用されている別後納郵便物は,前年度比11.4%増とび高い伸びをつづけたが,別後納郵便物を除く郵便物は前年度比3.0%増と伸びなやんだ。この結果,別後納郵便物も,通常郵便物の36%に達した。小包郵便物は順調に増加した。定形郵便物比率は87.2%(45年度末)でほぼ一定している。郵便番号の記載率は44年度末の75.2%から45年度末84.6%へと上昇した。

第5-7図 国内通信(指数)の推移

首都圏の引受郵便物数は45年度末まで通常郵便物で全国の37.8%,小包郵便物で全国の30.5%を占めている。利用関係の動向は 第5-9表 のとおりで,郵便物の急増に対処するため,最近の集配施設改善(局舎数)の約50%が首都圏の改善にむけられている。

第5-8表 引受郵便物数表

第5-9表 引受郵便物数,人口,世帯,事業所数推移

郵便事業の財政は,46年度には,前年度にひきつづき大幅な歳出超過が見込まれるにいたつたため郵政大臣は,45年9月郵政審議会に郵便事業の正常運営を確保するための方策について諮問し,郵政審議会は同年12月答申した。この答申では,郵便事業は労働力の確保,施設の改善をはかり,サービスの基本としての送達速度の安定,さらには弾力的なサービスの提供をはかることができるようにすること。ならびに料金決定原則を明確にして料金を改正することを提言している。政府は,これをうけて第65回国会に郵便法の一部改正案を提出し,同法案は46年4月成立した。

郵便事業はこれにより増収をはかるとともに,需要に即応する弾力的な運営を目指すこととなるが,利用者の要望の強い標準送達速度の確立には,労使関係の正常化,施設の整備など多くの問題点を解決し,安定したサービスを提供することが課題となろう。

一方,公衆電気通信サービスについては,加入電話の利用回数は前年度に引続き電話加入数の増加等により順調な伸びを示した。

加入電話の利用回数は前年度比18.5%増と順調な伸びを示したが,電報は前年度比6.9%減と年々減少し,45年度の国民1人当たりの利用通数は年間0.6通となつた。

45年度の電話の需給状況は需要充足率42.6%と前年の37%と比較しいく分改善された。しかし最近の電話需要はわが国経済の高度成長,生活水準の向上や広汎な都市化にともない一段と強まり,45年度は216万個の一般加入電話の増設が行なわれたにもかかわらず新規申込数は226万件と増設数を上回り45年度末の積滞数は約291万件に達した。

このような電話需給の窮状に加えて,情報化の進展に伴ない電気通信サービスの高度化,多様化の要請が強まり,電電公社では45年8月既定の第4次5カ年計画(43~47年度)の拡大修正を含め46年度から52年度にいたる「電信電話拡充7カ年計画」を発表した。同計画は①約2,000万個の加入電話を増設し,52年度末には加入電話の積滞を解消する。②電話の自動化をほぼ完了する。③データ通信の普及をはかる。④各種サービスを効率的に提供するため総合電気通信網の形成を促進することなどを骨子としている。建設投資総額は8兆5,000億円が見込まれている。

電電公社は,はじめて公衆通信網を利用したデータ通信サービスとして,東京では販売在庫管理サービスと電話計算サービスを(45年9月),科学技術計算サービスを(46年3月),大阪では販売在庫管理サービスを(46年1月),電話計算サービスを(46年3月)それぞれ試行サービスとして開始した。46年度には名古屋で販売在庫管理サービス,大阪では科学技術計算サービスの開始が予定されている。

デーダ通信のための通信回線の利用制度については,44年11月郵政審議会の答申に基づき改正の準備が進められてきたが46年5月第65回通常国会において公衆電気通信法の一部が改正された。この改正では,民間企業等が行なうデータ通信のための通信回線利用制度と,電電公社の設立するデータ通信設備を利用する制度が設けられ,民間企業等の行なうデータ通信については特定通信回線ならびにかねて要望の強かつた公衆通信網の利用ができることとなつた。

特定通信回線を利用する場合は,企業グループによる共同利用や計算センターやデータバンク等のオンラインサービス提供の道も開かれ46年9月から実施される。

公衆通信網を利用する場合は,電話疎通等に支障を及ぼさない範囲において,電話回線にデータ端末機器を接続して,データ通信を行なうことが可能となつた。このサービスは47年9月から48年12月の間で,広域時分制と合せて実施される。

電電公社の設置するデータ通信設備を利用するサービスには,現在は販売在庫管理科学技術計算の各サービス,運輸省の自動車検査登録システム,地方銀行協会の為替通信システムなどがある。なお,この改正にともない従来試行実施されていたこれらのデータ通信サービスは46年9月から本実施される。

また公衆電気通信法の一部改正においては①電報制度および料金の改定(実施は47年3月から),②広域時分制の実施(実施は47年9月から48年12月の間),③電話設備料の改定(実施は46年6月から)も同時に行なわれた。

放送については放送媒体の多様化,テレビ放送番組の大幅なカラー化がみられた。

民間放送事業者は45年度中にテレビ単営4社(UHF),ラジオ単営2社(超短波放送)増加して,年度末で96社となつた。

45年度末放送中の民間UHFテレビは35社で,うち2社は45年度中に開局した関東地方の県域放送であつて,近畿地方につづいて民間UHFテレビによるローカル放送の充実がはかられた。

また,大都市におけるUHF放送の電波伝ぱん試験および調査,UHF放送の受信の普及を目的として45年12月NHKの東京,大阪の実験局がUHF帯によるテレビ放送を開始した。

ラジオ放送については近隣諸外国からの放送電波による混信を防ぐため中波放送の大電力化をはかるための周波数割当計画表の修正案が46年3月,明らかにされた。FM放送(超短波放送)についてはNHKのローカル放送,音楽放送を行なう県域の放送網の拡充が進でおり,45年度末で全国世帯数の約92%のカバーレージに達している。また,FM放送の特質を生かしたステレオ放送を主とする民間FM4社もすでに放送を開始しているが,民間放送事業者によるFM放送は,将来は,その特質を生かしたステレオ放送の普及とならんで中波放送の混信の解決が困難な地域をFM放送に切換えていく方向も明らかにされている。

有線テレビジョンは45年12月に名古屋,46年2月福岡に共同聴視施設(CATV)を運営する財団法人が設立され,既に設立された東京,京阪神の財団法人は,サービスを開始している。有線テレビジョンは米国で急速に普及し,総テレビ数の約7%が利用しているといわれるが,わが国では小規模の農山村における施設が多く,総テレビ数に対する割合は3%台にあると見込まれる。さらに有線テレビジョンの多彩な能力を難聴視対策以外での分野で活用する計画もある。

45年度にはNHK,民間放送とも夜間番組の100%カラー化が行なわれた。カラー関係では,受信機の普及(46年3月現在31.8%,NHK調べ),カラー放送時間の延長,カラー契約の急伸がみられる。

NHKの契約は83万件増加して45年度末で2,282万件となつた。うち,カラー契約は766万件で前年度の1.9倍である。

放送により大学教育を社会に開放するという放送大学の設立については,まだ検討中であるが46年度においてはテレビ,ラジオによる実験番組の放送を実施し,教育効果等の調査をすることとしている。

b 通信施設の現状

国内通信施設は,郵便については45年度末郵便局数は20,773局(簡易郵便局3,389局を含む),このうち集配局は5,688局である。45年度末で郵便番号自動読取区分機は35台,自動選別取揃押印機は45台設置されている。

公衆電気通信施設については,45年度は7,160億円の建設投資を行なつて,一般加入電話は217万加入(うち事務用電話は63万加入,住宅用電話は154万加入),事業所集団電話は2.7万加入,地域集団電話は20.8万加入の増設を行ない,公衆電話は4.6万個増設した。その結果45年度末の一般加入電話総数は1,517万加入に達し,加入電話普及率は人口100人あたり15.7個となつた。このうち住宅電話の普及率は人口100人当たり7.7個で,全加入電話に占める比率は48.8%に向上している。

次に電話の自動化率は,市内ダイヤル化率は96.2%,市外ダイヤル化率は90.7%と向上し,市外電話回線は約10.2万回線増設され,45年度末回線数は69万回線となつた。

加入電信は10千加入増加し,45年度末加入数は45千加入となり,サービス実施都市は35都市増加して384都市となつた。

専用線は市内専用線は18千回線,市外専用線は2千回線増設され,45年度末にはそれぞれ180千回線,23千回線となつた。

電電公社の通信回線を使用したデータ通信は70システム増加して,45年度末システム数は,197システムとなつた( 第5-10図 )。このうち電電公社が専用線を提供し民間企業等が自営の電子計算機を使用したシステムは188システムであり,電電公社の提供するシステムは9システムである。また公衆通信網を除きデータ通信に使用されている通信回線数は1,488回線増加して,45年度末回線数は9,981回線となつた。これを速度別にみてみると, 第5-11図 のとおりであるが,50ビット秒回線の減少は万国博の管理運営システムに使用されていた約1,500回線の撤去にともなうものであり,データ通信利用の高度化を反映して1,200ビット秒など高速回線の伸びが目立つている。

第5-10図 電電公社の通信回線を使用したデータ通信システム数の推移

無線局(放送局を除く)は45年度末まで708,233局(前年度末より106,890局17.8%増)となつた。放送局は45年度末で4,325局(前年度末より726局20.1%増)でその内訳は 第5-12表 のとおりである。UHFテレビは2,039局になり,全テレビ局に占める割合は44年度末47.8%から45年度末57.4%に上昇した。テレビ共同聴視施設は45年度末で8,511施設である。

第5-11図 データ通信システムの速度別通回線数の推移

第5-12表 放送局数

(4) 国際通信

a 概  況

45年度の国際電気通信の発着度数は加入電信4,369千度(前年度比56.5%増),電話2,139千度(前年度比35%増),電報5,777千通(前年度比2.9%減)通常郵便物235,328千通(前年度比8.3%増),小包郵便物3,840千個(前年度比11.7%増)となつている。電気通信サービスの多様化,向上も進められ,46年1月にはニューヨーク,2月には西ドイツからの電話の自動即時通話が開始された。加入電信の交換については45年度末で全取扱量の83%が自動化されている。また国際電報処理の自動化,国際データ伝送サービス,国際専用通信交換業務の準備が進められている。

b 通信施設の現状

国際電気通信施設は,45年度末には海底ケーブルが438回線とほぼ前年なみに推移し衛星通信回線は545回線(前年同期351回線)と著増して初めで海底ケーブル回線を追抜いた。さらに46年に太平洋に打ち上げられる大容量のイソテルサット4号衛星に対応して第3番目の地球局の建設が進んでおり,衛星通信は,よりいつそうの発展が見込まれる。また,短波回線は60回線と,前年度にくらべ半減した。

サービス別にみると加入電信417回線,電話307回線,専用電信297回線,専用電話81回線となつており,専用電話の減少は大口利用者の自営網移行によるものである。

国際衛星通信の根幹である世界商業通信衛星組織(インテルサット)は,45年度末現在77カ国が加盟し,5個の通信衛星(うち4号系衛星1個)と56の地球局を結ぶ通信網が形成されている。


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