昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


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はじめに

日本経済は,短期的にみてもやや長期的にみても,重大な転換の時期を迎えている。

多くの人たちは,日本経済が当面する現実とこれからの展開について,つぎのような疑問や関心を抱いているであろう。

第1は,5年近くもつづいた長期好況がなぜ急速な終りを告げ,景気の後退局面に移行したのか。またこれからの景気はいつ,どのようにして再上昇していくのか,という点である。

第2は,景気がよくないのに消費者物価の騰勢が強いという事態を,一体どう理解したらいいのか。物資が豊かな経済社会で,なぜ物価が上昇するのか,といつた点である。

第3は,国際収支の大幅黒字をどう理解して,これにどう対処すべきかという点である。

第4は,公害,住宅,土地,物価高など,都市化が急速に進んでいる現代社会における重要問題に,どう取り組んでいくのか,という点である。

そして,これらの諸点に関連して,第5に,われわれは日本の経済成長力をどの方向に活用していくことが望ましいのか,という点である。

この年次経済報告も巻を重ね,本年度で25回目にあたる。その間,国民の努力の結晶として,成長政策は多くの成果をおさめてきたが,反面,内外経済の均衡のとれた発展が現在ほど望まれている時期はない。またわが国に真に豊かな経済社会を実現していく途上には,なお数多くの重要問題が横たわつている。この時期にあたり,本年度の経済報告は,第1部で最近の経済動向を分析したあと,第2部において戦後25年の経済成長の成果と課題をまとめて評価し,これからの政策体系のあり方を検討することによつて,上記の諸点に関する大方の疑問と関心に答えていきたいと考える。


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