昭和44年

年次経済報告

豊かさへの挑戦

昭和44年7月15日

経済企画庁


[次節] [目次] [年次リスト]

第1部 昭和43年度の景気動向

2. 景気上昇の性格とそれを支えた要因

(1) 景気上昇の性格

40年11月からはじまつた今回の景気は,以上でみたような諸特徴をもつているが,その速度や景気を支えた需要項目の動きは,これまでの景気上昇とはちがつた面がある。とくにこれまで最長の景気上昇であつた岩戸景気と比較しながらその点についてみてみよう。

第1は,経済拡大のテンポがきわめて速かつたことである。40年10~12月期から44年1~3月期までの済成長率は名目で17.5%(年率),実質で13.1%であつた。これは岩戸景気の上昇局面(33年4~6月期~36年10~12月期)の名目18.9%,実質12.9%に匹敵する伸びである。

第41表 国民総生産増加寄与率の(各目)の比較

第42図 鉱工業生産増加に対する最終需要別寄与率

第2点は,経済の拡大に寄与する需要増加の要因において,岩戸景気のときより相対的にバランスがとれていたことである。すなわち,今回は岩戸景気のときにくらべて,国民総生産の増加に対する民間設備投資および在庫投資増加の寄与率が小さい反面,輸出増加の寄与率が大きくなつている。( 第41表 )。なお,鉱工業生産増加に対する最終需要別の寄与率をみても( 第42図 ),岩戸景気のときにくらべ設備投資や在庫投資によつて誘発された割合が低い反面,輸出の増加によつて支えられた割合が高い。それだけ景気上昇の安定性が強まつたといえる。

今回の景気上昇は,以上のように拡大が速かつたにもかかわらず,これまでのところ経済のバランスをほとんど崩すことなく推移し,その間いちじ景気調整策が実施されたとはいえ,経済成長と国際収支黒字の両立を実現することができた。それは海外景気が急上昇したという事情もあるが,国内需要の各項目でもそれぞれ大きく伸びる要素をもつていたからである。

以下,今回の景気上昇の支えとなつた国内需要についてみてみよう。


[次節] [目次] [年次リスト]