昭和43年

年次経済報告

国際化のなかの日本経済

昭和43年7月23日

経済企画庁


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第1部 昭和42年度景気の動き

1. 予想をこえた経済の拡大と国際収支の悪化

昭和42年度の経済は,大方の予想をこえて拡大した。この予想外の景気の拡大は,予想外の世界景気の後退と世界貿易の伸びの低下とあいまつて,大幅な国際収支の悪化をもたらした。その結果,42年9月以来,財政・金融両面からの景気調整策がとられ,日本経済は「調整」の過程に入つている。

大方の予想した42年度の日本経済の姿は,経済成長率が9~10%(実質GNP成長率)程度の比較的安定したものであつた。しかし,42年度を終わつてみると,13%(当庁経済研究所推定)を上回る大幅な拡大をみせた。

需要の面でもつとも特徴的だつたことは,民間設備投資の顕著な増加であつた。41年に入つて上昇をはじめた設備投資は,42年度上期には前期比で19.2%(季節修正値)の増加と急速な盛り上がりをみせた。このような大幅なふえ方は,30年代の景気上昇局面とくらべてもそん色のないものである。それは42年度下期鈍化という投資予測に反して,景気調整策がとられた後も伸びつづけ,42年度としてみると前年度にくらべて33%(名目,当庁経済研究所推定)と「岩戸景気」といわれた35年度以来最高の伸びを示した。在庫投資も42年度全体としては前年度にくらべて4割ほどふえた。

個人消費は,予想をそれほど大きく上回つたわけではないが,都市でも農村でも順調に伸び,財政支出は,暫定予算で出遅れたこともあつて,本予算成立とともに増加に転じたが,42年9月に繰延べ措置がとられたあと,そのテンポは落ち着いたものになつた。

このようにほとんどの需要項目が予想をこえる拡大を示したなかで,輸出の伸びだけは前年度比8%とふるわなかつた。これは,国内景気が予想外に大型化したということのほか,OECDの予測と実績の食い違いにもみられるように( 第2表 ),世界貿易が期待を裏切つて不振であつたことが影響している。

一方,供給の側面では,このような需要の動きを反映して鉱工業生産が予想以上に上昇し,輸入も前年度にくらべ22.1%も増大した。また,米の生産は平年作を大幅に上回る豊作にめぐまれ,政府買入れは年度内に見込みを約200万トンも越える982万トンにのぼつた。そのためもあつて,食管会計からの対民間支払い額は1兆3,345億円となり前年度にくらべ33.4%増加した。

第1表 42年度政府,民間経済見通しと実績の対比

なお,生産が予想以上に伸びたことから一般会計の税収は当初見通しの3兆8,052億円を2,876億円上回つて43年4月末で4兆928億円に達した。

以上のような需給両面の動きに対し,国際収支は,見通しとくらべて大きく悪化し,総合収支で535百万ドルの赤字となつた。

以下,経済拡大と国際収支悪化の事情と現在進行中の調整策の効果をみてみよう。


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