昭和43年

年次経済報告

国際化のなかの日本経済

昭和43年7月23日

経済企画庁


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経済白書の刊行に当たつて

経済企画庁は,これまで毎年,年次経済報告をまとめ,日本経済の実状とそれがかかえる問題点を国民の皆様に報告してまいりました。

本年度の報告は,2部からなつております。

第1部では最近の景気動向とその問題点を,第2部では国際化のなかの日本経済の問題点をやや長期的構造的な観点から取り上げています。

昨年度の日本経済は,大方の予想をこえて拡大し,海外景気の後退がこれに重なつて,国際収支の赤字を大きくしました。そのため,昨年秋から景気調整策がとられたわけですが,この5月ごろにはようやく国際収支の均衡を回復したとみられるに至りました。この背景には,日本経済の高い適応力があつたことは否めませんが,海外景気が急速に好転したことに負うところも大きいと思われます。白書は,こうした点に留意しつつ,今後景気政策を総合的かつ機動的に運用すべきことを説いています。

日本経済は,いまでは米ソにつぐ規模に達しようとしていますが,国内的には労働力不足が進行し,また,国民の福祉向上に対する要請がつよまつており,他方,国際的には資本の自由化,ケネディ・ラウンドの妥決,特恵問題の登場,SDR創出の合意,など戦後世界経済史上での画期的でき事が進展しています。このような内外環境の変化は,日本経済のいつそうの効率化・近代化を要請しておりますが,わが国民がもつ英知と力を発揮するならばこれらの変化に十分適応し,名実ともに先進国となりうるものと確信いたします。

昭和43年7月23日

宮澤 喜一

経済企画庁長官


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