昭和42年
年次経済報告
能率と福祉の向上
経済企画庁
昭和41年度の国内貨物輸送は,景気の順調な回復を反映して, 第6-1表 のとおり着実な伸びをみせた。とくに,秋冬繁忙期には,鉄道を除いて各輸送機関とも月間の輸送トンキロとしては従来にない高い実績を示し,景気の谷であつた前年同期ときわだつた対照を示した。輪送トンキロの構成比率をみると,年々シエアを拡大させてきたトラツクがついに鉄道を抜いたことが目立つている。
内航海運は景気の回復による重化学工業品の荷動きの増加に敏感に反応し,輸送トンキロでは前年度の伸び率に倍する増加ぶりを見せた。船種別では大型鋼船,小型鋼船とも順調に伸びたほか,昭和38年度以来逐年減少していた木船も砂利類の増加により輸送トン数では微増している。船腹構成(41年9月末現在)は,合計291万総トンのうち鋼船が213万総トン,木船が78万総トンとなつている。
トラツクは,前年度が不況の影響から輸送トンキロで対前年度比2.8%増と伸び悩んだのに対し,41年度は34.1%と一転して高い伸びを示し,自家用は31.9%,営業用は36.7%の増であつた。輸送トン数では自家用の24.8%増に対し営業用は12.3%増で,輸送の長距離化は営業用普通車において著しかつた。トラツクの登録台数は19%増加して年度末には340万台に達した。
国鉄の輸送トンキロは38年度をピークに減少をつづけてきたが,41年度はほぼ横ばいに終つた。景気の回復にかかわらずこのように沈滞しているのは,41年3月の運賃値上げや7~8月の豪雨禍の影響もあるが,国鉄が長年の投資不足から慢性的な輸送力不足を依然解消していないことと輸送近代化に立ち遅れていることから,機動性のすぐれたトラツクに貨物が転移しているためと思われる。41年度には,専用貨車による自動車の輸送や高速列車による鮮魚等の輸送を開始し,また5トンコンテナを9,960個(対前年度比72%増)に増備して,物資別適合輸送,自動車との結合輸送等の拡充をはかつている。
昭和41年度の国内旅客輸送は,景気回復期にもかかわらず,全体としては 第6-1表 のような近年にない低い伸びに止まつた。こうした中で乗用車はひとり躍進し,輸送人キロのうちに占めるシェアを拡大している。
鉄道は,近年モータリゼーシヨンの影響を大きく受けていることのほか,41年はじめの運賃値上げも原因となつて,定期外客のうち短距離客が著しく減少した。東海道新幹線だけは40年秋からのスピードアツプと自由席制が成功して輸送人員で対前年度比41%の増であつた。一方,不況下にも着実に増加していた定期客の伸びも鈍化し,通勤通学輸送の混雑緩和のための輸送力増強は後述のとおり進められたが,ラツシユ時の混雑緩和は客易でなく,通勤通学難は大都市周辺はもとより地方の線区においても深刻な問題となつている。
バスも前年度をさらに下回るかつてない低い伸びで,営業用だけをとれば輸送人キロで3.3%,輸送人員で0.8%の増にすぎなかつた。乗合バスは,大都市においては道路混雑の激化と高速鉄道の発達,地方においては人口の減少などの影響を受け,貸切バスも観光旅行の小人数化によつて,いずれも停滞している。
これに対して乗用車は,引きつづいてめざましい伸びを示した。とりわけ自家用は輸送人キロで41.7%,人員で33.9%の増を記録した。乗用車の登録台数は32%増加して248万台となり,年度中の増加台数ではトラツクの54万台をしのぐ60万台となつている。
国内航空は,従来一貫して伸び続けてきたが,連続した事故の影響などによりはじめて減少をみせた。
近年,自動車交通の激増に対処して,既成道路網の改良,舖装,主要な路線のバイパス,高速道路等の建設が積極的に推進され,また41年度からあらたに交通安全施設等整備事業3ヵ年計画が発足した。しかし,道路の整備はおくれており,これを国道および都道府県道の改良率,舗装率についてみても,自動車交通に支障のない改良済区間は39%,舖装区間は25%で著しく低い現状にある( 第6-2表 )。また,41年における交通事故件数は425,944件に達し,これは交通安全施設の整備のたちおくれにも起因するところが大きい。
国鉄が国内輸送において果す役割は大きく,線路増設をはじめとする幹線輸送力の増強がなされてきており,41年度には複線化290km,電化206kmが完成した。しかし,国鉄の全営業キロのうち,複線以上の区間は18.2%にすぎないなど, 第6-3表 にみられるように諸外国にくらべ輸送力の水準は著しく低く,このため,列車ダイヤは過密化し,需要の季節波動に対する弾力性が乏しい現状である。
また,港湾についてみると,近年の港湾取扱貨物量の増大と入港船舶隻数の増加に対して係留施設がいちじるしく不足している。このため,とくに,横浜,神戸等の主要港湾においては慢性的な滞船現象をひきおこしており,この数年間入港船舶の約1割が平均1日の沖持ちを余儀なくされている現状である。
東京,大阪等においては街路の整備や都市高速道路の建設がすすみ,都市内における道路交通の混雑緩和に大きく貢献したが,依然として交通渋滞が各所にみられ,交通事故も漸増傾向にある。さらに,道路交通の混雑は地方の都市においても大きな問題となつている。また,東京,大阪等においては,これまで地下高速鉄道の建設,国鉄,私鉄における輸送力の増強,時差通勤の実施等の施策を講じてきたが通勤混雑は依然として緩和されていない。東京附近の国鉄各線の最混雑1時間当りの状況についてみるといずれも2~3分30秒間隔の8両~10両編成でそのほとんどが輸送定員の250%以上という混雑をしめしている。
交通投資に関しては,42年度からあらたに第5次道路整備5ヵ年計画,空港整備5ヵ年計画が発足する外,国鉄第3次長期計画,第2次港湾整備5ヵ年計画が進行中であり,地下鉄,私鉄についてもそれぞれ長期計画を定め,施設の整備拡充を行なつている。
昭和42年3月,政府は経済社会発展計画を定め,その中で昭和42年度から5ヵ年間にわたる社会資本整備の方向および部門別投資額の基準を明らかにした( 第6-4表 )。同計画は従来の産業基盤の拡充の面に加えて生活基盤の充実の面をも重視し,道路混雑,通勤通学難の緩和等のための交通投資を住宅投資とともに最重点項目としてとり上げている。同計画によれば,交通投資の今後の方向としては限られた投資額で最大の効果が得られるよう各分野において重点的効率的に投資を行なわねばならないが,さらに,長期的視野にたつてそれぞれの輸送機関の特性を最大限に発揮し,国民経済的にみて,最も合理的な交通体系の形成をはかることが必要であると指摘している。
また,近年増加の一途をたどつている交通事故については既述のとおりであるが,交通投資にあたつては,とくに人命尊重の立場から安全施設に対する配慮が必要である。東京の環状7号線道路では,横断歩道橋の設置により死亡者は激減しており,また,国鉄では37,8年の三河島,鶴見の2大事故以来保安対策工事を重点的に行なつた結果,40,41年度の旅客の死者は0となるなど安全投資の効果は著しいので,これを強力に推進する必要がある。
首都圏,京阪神圏等大都市圏における通勤通学輸送については,都市高速鉄道(国鉄,私鉄,地下鉄)の果す役割はきわめて大きく,これを緊急に整備することが必要と考えられているが,最近の工事費とくに用地費の高騰に伴い,これに要する巨額の資金の調達と企業としての採算性の確保が最大の課題となつている。このため,運輸大臣の諮問機関である都市交通審議会は,昭和41年10月関係各大臣あてに都市交通緊急整備に関する建議を行なつた。この結果,昭和42年度予算では,地下鉄,私鉄に対して財政上の助成強化が図られることとなり,大都市交通間題の前進をみた。一方,国鉄についても建議の趣旨をくんだ必要な政府出資等国家的見地からの抜本的助成策が検討されている。
路面電車,バス等については近年の人件費の高騰に加えて,路面混雑,都心の空洞化現象等により運行能率が低下して,各都市ともいちじるしい経営危機におかれている。これに対し,政府は,地方公営企業法の一部改正を行ない,昭和40年度の赤字企業について財政再建計画を定めることによつて財政の健全性を回復する方途を開いた。
道路混雑を打開するためには,都市高速道路,環状道路をはじめとする道路の整備を推進するばかりでなく,流通業務団地の建設等都市機能の再編成を図る再開発施策が積極的にとりあげられてきた。
また,大都市間題に関する新たな構想としては,大都市周辺の未開発地域と都心とを大量高速輸送手段で直結することにより沿線に新住宅都市を建設することが経済社会発展計画でとり上げられた。
41年の世界の海運市況は貿易量の順調な増加にもかかわらず船腹量の急速な増加のため過剰気味となり,不定期船運賃指数(英国海運会議所)は,高水準に推移した前年の年平均126.5から113.5ヘ,油送船運賃指数(ノールウエージヤン・シツピング・ニユース)も前年の年平均65.8から61.9へと低下した( 第6-1図 )。
41年のわが国の貿易量は,輸出24.8百万トン(対前年比6.3%増),輸入229.8百万トン(同15.3%増)であつて,輸出は前年の伸び率(32.5%)を大きく下回つたが,輸入は前年の伸び率(14.7%)と同様の大幅な伸びを示した。
一方,わが国の外航船腹量は39年度から始まつた船腹拡充計画の進捗により41年6月末で1,078万総トンに達し世界第5位の地位にある。船腹量の対前年伸び率は,28.3%(238万総トン)で世界商船船腹量の対前年伸び率6.7%を大幅に上回つた。
これらの大量船腹拡充の結果,邦船の輸入積取比率は,輸入の大幅な増加にもかかわらず,前年の43.5%から45.9%へと改善されたが,輸出積取比率は,40年11月末から41年1月末までつづいた海員ストライキの影響のため37.0%と前年(37.6%)同様の低い水準にとどまつた。
41年の海運国際収支は,輸入積取比率が若干改善されたにもかかわらず,大幅な輸入増加のため支払いが増え,前年より93百万ドル悪化して590百万ドルの赤字となつた( 第6-5表 )。
41年度の海運業の収支状況(整備計画提出済み42社)を見ると,総収入は4,508億円,償却前利益は894億円であつた。42年3月期末には,減価償却不足額が42億円(前年同期末,115億円),元本約定延滞額が138億円(前年同期末,355億円)と再建整備発足当時(減価償却不足額662億円,元本約定延滞額934億円)にくらべて大幅に減少しており,海運業の再建整備計画はほぼ順調な推移をみせている。
経済社会発展計画によれば,46年度のわが国の貿易量は,40年度に比較して2倍近くに達するものと予想されており,これに対処して,邦船積取比率を向上させ,海運国際収支の改善を図るには,42~45年度中に約900万総トンの外航船舶の建造が必要と見込まれている。
今後の船腹拡充に際しての焦点の一つは,海上コンテナ輸送体制の整備である。海上コンテナ輸送は流通コストを大幅に低減させうる技術革新であり,邦船の国際競争力およびわが国の輸出競争力の強化のため,基幹定期航路のコンテナ化が強く叫ばれ,昨年9月の海運造船合理化審議会の答申に基づき,海上コンテナ輸送体制の整備が進められることになつている。
コンテナ・ターミナルは,外貿埠頭公団(京浜地区,阪神地区に設立予定)がその整備に当る計画であり,コンテナ船は42年度以降の計画造船で建造される予定となつている。
海上コンテナ輸送に当つては,コンテナおよびコンテナ・ターミナルの共同使用,配船調整等効率的運営を図るとともに,コンテナ輸送のメリツトを最大に発揮させるドア・ツー・ドア・サービスの実現のためには連絡国内輸送網を整備し国内輸送業者,荷主等の積極的な協力をうることが必要であると指摘されている。
昭和41年のわが国への来訪外客数は,前年比18%増の43.3万人であり,オリンピツクが開催された39年の前年比16%を上回る大幅な増加となつた。これは,国際観光振興会のコンベンシヨン・ビユーローによる国際会議誘致活動の強化により,国際会議参加外客数が飛躍的に増加したこと,41年5月に行なわれた太平洋国際航空運賃の引下げにより太平洋横断旅行客が増加したことなどによるところが大きい。主要国別では,アメリカ,カナダ,フイリピン,韓国などの外客の伸びが高かつたが,西ヨーロツパからの外客は,依然伸び悩んだ。
出国日本人数(沖縄への旅行者を除く)は,前年比34%増の21.2万人であり,最近5ヵ年間における最高の伸びとなつた。これは,41年1月に行なわれた海外渡航制限の緩和,国民所得水準の向上などによるものと思われる。
このような国際旅客の活発な動きを反映して,41年のわが国国際定期航空旅客輸送は,人キロで前年比39.8%増の30億人キロと高い伸びを示した。このため,前年比14.6%増であつた世界(ICAO加盟諸国)の伸びを大きく上回り,世界におけるシエアーは,40年の2.2%から41年には2.6%へと上昇した。これは,本邦出入国旅客の大幅な増加に加えて,わが国航空の積極的増便による輸送力の増加が図られたこと,アメリカ航空ストの影響およびアメリカ航空が軍事輸送に追われていたことにより,太平洋線の旅客が,わが国航空へと流れたことなどによる。このように著しい伸びを示したわが国航空は,さらに一層の飛躍を図るため,41年11月,ニユーヨーク線,42年3月,世界一周線,42年4月,モスクワ線の開設を行なつた。今後,ジヤンボ・ジエツト,SSTなどの登場による輸送力の飛躍的増加により国際競争は旅客輸送はもとより,とくに貨物輸送においてますます激化するものと予想される。これに対処してわが国は,これら新鋭機材の購入を予定するとともに,46年度より供用開始が出来るように千葉県成田市に新東京国際空港の建設をすすめている。
41年の旅行航空関係国際収支は, 第6-5表 の通りである。旅行関係国際収支は,赤字幅が増大し,航空関係国際収支は,やや好転した。
郵便については, 第6-6表 のとおり,通常郵便物は9,580百万通(前年度比2.6%増)と伸び悩んだ。これは41年7月以降料金値上げの影響をうけたためである。通常郵便物のうち,第1種(封書。旧第5種を統合)が伸び悩んだのに対し,第2種(葉書)は順調に増加した。これは,値上げによつて第1種から第2種へと利用が移行したためと思われる。第3種,第4種は共に伸び悩み,この結果,普通通常郵便物のうち,第1種定形と第2種の占める割合は79%に達したが,第1種のうち定形郵便物が86%を占めていることとあわせ,郵便物の規格化の傾向があらわれている。
これに対し,小包郵便物は41年4月の料金値上げにもかかわらず,146百万個(前年度比6.0%増)と順調な伸びを示した。
一方,124億円を投じて郵便局舎の建設等が行なわれ,また,41年10月からは第1種定形,第2種の航空輸送が開始され,東京,大阪から全国県庁所在地にあてた郵便物の翌日配達が可能となつた。
今後増大する郵便需要に対応し,郵便サービスの向上をはかるためには,局舎の整備,自動読取区分機等の導入による作業の機械化,その前提となる郵便物の規格化,郵便番号制度の実施等が急務となつている。
公衆電報通数は38年度の9,461万通をピークに41年度には8,136万通と,この3年間に大幅な減退を示した。慶弔などの社交電報は増加したが,大宗を占める一般電報は,加入電信・専用電信・電話などへ需要が移行したために,減少したものとみられる。なお全国30都市を結ぶ電報中継網の機械化が完了し,合理化が図られたが,依然として1通当りコストは料金を大きく上回る現状である。
加入電信は,41年度末には加入数1.7万(前年度比30%増),加入区域数213都市(前年度末159都市)となり,年々著しい増加を示し,加入電信に対する需要は事務近代化のため幅広い分野で根強くなりつつある。
加入電話の新規需要は景気回復を反映して,40年9月頃から一段と上昇し,41年度を通じて高水準を維持した。41年度には118万加入が増設され,年度末総加入数は849万加入,加入電話普及率は100人当り8.5加入となつた。しかし211万の積滞加入需要を42年度以降に繰越すこととなり, 第6-2図 のように電話需給は年々悪化の一途をたどつている。このため一部の地域を除いては設備拡充が需要に追いつかず,相変らず架設までに長い期間を要する結果となり,既設電話の加入権が売買される現象が依然としてみられる。
41年度末の既設加入電話に占める住宅用電話の比率は29%で,住宅用電話の普及はまだ欧米諸国に比して低いが,電話を生活必需品としてとり入れようとする気運は年々強くなつている。
電話需要に効率的に対処するため団地自動電話,農村集団自動電話など電話施設の集団利用がすすめられ,その加入数は,41年度末でそれぞれ約8万および22万に達した。
公衆電話は年々順調に増加し,41年度末には28.7万個(前年度比13%増)に達し,そのうち市外通話を直接ダイヤルでかけられる「大型赤電話」は15.4万個である。
伝送線路,交換機械などに新技術を導入して,交換局の自動化および市外通話の即時化が推進され,市内 ダイヤル化率 および 全国即時網編入率 は41年度末でそれぞれ89%,および53%に達した。さらに通話の明瞭性の改善など,ここ数年間に電話機能は着々と向上している。しかし,とくに地方における自動化,即時化はまだまだ立ち遅れており,これを向上させることが急務となつている。今後増大が見込まれる建設資金,債務償還資金等の調達を円滑化するためには,電話事業経営の健全性を維持するための方策が望まれている。なお,経済社会発展計画では,42年度から46年度までの期間に電信電話施設整備拡充のため,26,600億円を投資することが計画されている。
有線放送電話は41年度末(推計)で施設数2,460(前年度より40減少),加入数310万(同28万増)となつた。そのうち公社電話と接続可能なものは480施設,60万加入である。なお,日本電信電話公社の施設ではないこの有線放送電話の今後のあり方については郵政審議会で審議中である。
最近の電子計算機の発達と普及はめざましく(中型以上のものは41年度末で約1,292台。日本電子計算機(株)調べ),これにより情報処理は著しく高度化している。これに伴つて電子計算機と端末とを通信回線で直結することにより,電子計算機単独で得られなかつたより高度な情報処理伝達機能を発揮させる必要性が高まつてきた。現在その利用方法は預金為替の集中管理,交通機関の座席予約,道路交通制御,電力の供給制御,生産在庫管理などに利用され始めており,その応用分野も拡大の方向にある。また利用型態は現在同一企業内の情報処理伝達に限られているが,将来は多数企業間にも拡大することが予想され,その一段階として同一業種内の多数企業を結ぶ情報処理網の運営が計画されている。以上のような情報処理網の発展に備えて技術開発のほか受入体制の整備が課題となつている。
NHKの放送受信契約数は41年度末で契約甲1,925万件(前年度比5.6%増),契約乙240万件(同1.7%増)となり,普及率は89.8%(甲,乙計)に達した。また,41年度中に難視聴区域の解消をはかるため,テレビ放送局341局(NHK251局,民放90局),ラジオ放送局3局(NHK3局)が増設され,41年度末の放送局数はテレビ1,514局(NHK1,051局,民放463局),ラジオ446局(NHK303局,民放143局)となつた。この結果,全国世帯数のうち受信可能世帯の占める比率はNHKテレビ(総合)95%,同ラジオ(第一)99.7%となつた。
41年の民間テレビ,ラジオ放送を媒体とする広告費は,景気の回復を反映して順調に伸び,総広告費3,831億円(前年比11.4%増)のうち,テレビ1,247億円(同12.3%増),ラジオ169億円(同5.0%増)を占めた((株)電通調べ)。
無線局の数は年々増加して41年度末で33.2万局(前年度末比23.5%増。放送局,アマチユア局を除く)に達した。特に市民ラジオの増加が著しく,用途別ではタクシー事業用,漁業用等が増加している。これに対し,割当可能な周波数がひつぱくしているので周波数のより一層の効率的な利用を図ること等が望まれている。
以上,国内通信について概観してきたが,今後増大する通信需要に対処するためには,通信技術の開発を進めるとともに,各通信手段の特質を総合的に考慮しつつ,通信網の整備を図ることが課題となつている。
41年度におけるわが国の国際通信は,貿易の拡大等を反映して順調な伸びを示した。
郵便については,発着合計で通常郵便物は前年度比11.0%増,小包郵便物は7.0%増と順調に伸びた。このうち,航空便の伸びが著しく,通常郵便物の65.9%,小包郵便物の37.4%に達した。
国際電報は発着合計で7.4%増と前年度の伸びを大きく上回つた。とくにアジア,北アメリカの増加が目立つた。国際加入電信も19.7%増と前年度の伸びを上回り,北アメリカ,ヨーロツパの伸びが大きかつた。国際電話は37.7%増と依然増加が著しく,北アメリカ,ヨーロツパ,アジア共大きく伸びた。一方,施設については,電報2回線,加入電信32回線,電話32回線とそれぞれ増設された。これら回線は短波,太平洋横断ケーブルを利用して設定されたほか,42年1月太平洋上に打ち上げられた静止衛星インテルサツト2号F2を利用して設定(電話7回線)され,我国初の商業衛星通信業務が開始された。
我国とアジアおよびヨーロツパ間の電気通信は一部が太平洋横断ケーブル等によるほかはすべて短波無線に依存しているため,自然条件による通信障害がさけられない上,あらたに割当可能な周波数もひつぱくしているので,通信量の増大にみあつて大量の回線を設定することが困難となつている。この対策として,我国と韓国間のマイクロ回線が43年には開通予定であり,また,我国と東南アジア諸国および我国とソ連を結ぶ海底同軸ケーブルを建設すべく,それぞれ関係国と交渉中である。
衛星通信はテレビ伝送も可能であり,容量と安定性の点では短波無線よりも飛躍的にすぐれている。世界商業通信衛星組織では,大西洋,太平洋につづいて43年にはインド洋にも静止衛星を打上げ,これにより全世界をカバーする衛星通信網を完成する計画である。
今後は短波,海底ケーブル,通信衛星等,各手段の特質を総合的に配慮しつつ,通信網の整備を進めることが課題となつている。