昭和42年

年次経済報告

能率と福祉の向上

経済企画庁


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4. 中小企業

(1) 41年度の概況

41年々初以降中小企業の生産,売上げ活動はしだいに明るさを取り戻した。中小製造業では公共支出の増大や親企業の在庫調整の進展,設備投資の活発化など直接,間接の影響をうけて,生産,受注は月をおつて増加をたどり,小売業でも景気回復にともなう消費支出の増加に支えられて売上げはしだいに増勢をたどりだした。金融の緩和,大企業の借入需要の停滞など金融情勢の変化などもあつて中小企業に対する貸出はふえ,また借入金利は低下傾向をたどつた。生産,売上げの増加にともない中小企業の収益率は再び上昇の方向をみせはじめ,設備投資活動は41年度下期になるにしたがつて活発化した。しかしながら40年の不況のなかで受注難,販売不振に悩んだ中小企業は生産活動が活発化するにつれて再び人手不足,人件費の上昇が経営上の大きな隘路となつてきた。また企業の整理倒産は景気上昇期にもかかわらず小規模企業を中心にひきつづいて高水準をつづけた。

(2) 回復した生産,売上げ活動

中小企業の生産,売上げ活動は40年秋を底に月をおうにしたがつて活発化した。中小企業(製造業)の生産活動は日銀調べ「中小企業短期経済観測調査」によれば 第4-1図 に示すように40年7~9月を底に上昇に転じ,1年後の41年7~9月期には前年同期を22%上回つた。今回の景気回復も前回(38年)とほぼ同様に中小企業は大企業よりややはやく回復に転じ,その後の上昇率も大企業より大きかつた。この結果,中小企業の生産(対前年度比)は40年度の7%増から41年度には22%増とふえ,大企業の40年度3%増,41年度18%増にくらべてその増加率は大きかつた。

一方,卸小売業の売上げ活動を通産省調べ「商業動態統計」によつてみると, 第4-2図 のごとく,中小卸売業も景気回復にともなう荷動きの活発化によつて40年7~9月以後増勢に転じ,対前年度売上げ増加率は39年度の4.1%増(大企業は19.3%増)から40年度9.5%増(同14.4%増)41年度9.9%増(同14.8%増)とふえている。また小売業は消費の回復のおくれから多少回復はズレたが,41年春以降ようやく増勢に転じ,対前年度売上げ増加率は39年度の12.6%増から40年度には5.8%増へと低下したあと,41年度には10.3%増となつた。

第4-1図 中小企業の生産活動(製造業)

40年の不況,41年に入つての回復から上昇への歩みをたどつた中小企業の動きを,さらに製造業について業種,規模,業態別にその動きをみると, 第4-3図 に示すように,40年の不況期に不振の度合の大きかつた重工業関連中小企業の売上げは41年に入ると急速に立ち直り,41年9月には対前年同月比20%増,12月同37%増,42年3月には同29%増と著増した。公共支出の増加により受注のふえたトラツク部品,建設機械や,親企業の在庫調整の進んだ家庭電器がまず回復をとげ,ついで輸出や設備投資需要に支えられた工作機械,産業機械や,内需の増大した乗用車部品などの生産が増加した。

第4-2図 卸・小売業の売上げ活動

また造船関連機器も輸出船のひきつづく活況から売上げは増加し,さらに41年度下期になると重電機関連機器の売上げが著増した。独自の製品,販路をもつ機械,金属などの独立中小企業では41年秋には対前年同月比4~5割増という売上げ増加をみせたものも少なくなかつたが,独立中小企業ばかりでなく,銑鉄鋳物,鋳・鍛鋼,ダイキヤスト,板金加工,部品組立などの下請でも1次,2次下請を問わず41年の春から夏にかけて生産,受注は増加した。とくに40年の不況下で1次下請よりその影響をつよくうけた2次層以下の下請の回復が目立つたが,深刻化した人手不足によつて受注の消化に支障をきたし,増産は思うにまかせないというものもみられるようになつた。こうした親企業の発注量の増大のなかで一部には発注単価の引上げが行なわれたものもあらわれたが,下請企業では逆に親企業や受注品を選択するといういわゆる“逆選別”の動きも散見されるようになつた。

第4-3図 中小企業の売上高推移

顕著な重工業関連中小企業の回復に対して,軽工業関連中小企業でも合繊織物が原糸メーカーの在庫調整の進展により立ち直り,合板,セメント2次製品,耐火レンガ,工業用ゴム製品などが建設需要や設備投資の増加に支えられて41年の生産活動は活況を呈し,また輸出雑貨では万年筆,人造真珠,グラスボールなどが長年の不振から脱して41年夏から秋にかけてようやく輸出が上向きに転じた。

このような回復から上昇への過程を歩んだ中小企業に対して,40年,41年を通じて比較的順調のうちに推移したものと,反対に41年においても不振ないし低迷を脱しきれないもの,あるいは41年末から42年にかけて不振に転じたものも存在した。たとえばビニールカバン,日用雑貨,クリスマス電球,金属洋食器などでは対米輸出の増加を中心に比較的好調な歩みをつづけ,家具,和物陶磁器,ニツト(編物)製品は漸増した内需に支えられた。これとは対照的にカメラおよびミシン部品,ゴムはきもの,板紙,木製建具,清酒などでは41年もひきつづいて低迷状態をつづけた。一方,41年下期以降不振に転じたものには対米輸出が不調に転じた双眼鏡,手袋,一部の綿織物(ギンガム)や輸入増加と合成皮革の増加で影響をうけた製革などがあり,また繊維では41年秋から初冬にかけての異常天候の影響と末端需要の不振から返品の増加したウール着尺,ちりめんなどが操短実施に転じるなど明暗区々であつた。

(3) 好転した中小企業経営

(一) 資金ぐり難の緩和

中小企業の販売条件は 第4-1表 にみるように39~40年の不況期に悪化をつづけたが,40年10~12月を境に「悪化」したものの割合はへりはじめ,逆に「好転」したものがわずかではあるが増加の方向をたどりだした。

平均的な受取手形サイト,売掛期間,現金入金比率などをみると,前回の景気上昇期(38年)にくらべてその水準は受取手形サイト,売掛期間では上回り,逆に現金入金比率は下回つているが,いずれも40年秋には悪化がとまり,さらに41年に入るとわずかではあるが短縮ないしは上昇へと転じている。このような製品の販売条件に対して原材料などの購買条件も41年春以降支払手形サイト,現金支払比率は横ばいをつづけているが,買掛期間は40年にくらべて短縮し,また「好転」したものが「悪化」したものの割合をわずかではあるが上回りはじめるなど改善の動きがみられるようになつた。このような購買条件を上回る販売条件の好転により,与信超過幅は,同じく 第4-1表 に示すうに縮小し,それだけ中小企業の資金ぐり緩和要因として働いた。

第4-1表 中小企業(製造業)の販売・購買条件の推移

中小企業の資金ぐりの緩和はこのような販売,購買条件の変化ばかりでなく,金融機関の積極的な貸出態度も大きく影響した。中小企業が借入困難を訴える割合は 第4-2表 に示すように長期資金の借入難は短期資金にくらべて41年度下期においても上回り,いぜんきびしいが,長期,短期資金ともに借入難は景気上昇過程を通じて一貫して減少した。とくに手形割引を中心とする短期資金の借入れは多くの中小企業で「容易」となり,売上げの増加にともない運転資金需要は増加し,資金ぐりは繁忙化したが一部の中小企業を除いて資金ぐりにゆとりをもつようになつた。

一方,中小企業向けの貸出動向を貸出残高の前年同月比でみると, 第4-5図 に示すように中小企業向けは39年,40年において大企業向け以上に落ち込みが著しかつたが,景気上昇過程においてもひきつづいて減少をつづけた大企業向けとは対照的に増勢をつづけた。中小企業向け貸出(残高増減額)は,かなり季節変動をみせているが,40年7~9月5,415億円増(前年同期比41%増),同10~12月8,902億円増(同62%増),41年1~3月3,582億円増(同177%増)のあと,4~6月3,048億円増(同197%増),7~9月9,327億円増(同72%増),10~12月11,510億円増(同28%増)とふえ,ついで42年1~3月も4,605億円増(同28%増)となつている。

第4-4図 中小企業の決済条件の推移(製造業)

また,総貸出増加額中にしめる中小企業向けの比率も40年1~6月には20%を割つていたものが,同7~9月以降40%をこえ,さらに41年4~6月には50.2%,7~9月60.0%,10~12月64.0%と高まつた。この間,恒例となつた中小企業年末金融対策は41年末には政府系中小企業専門3機関(商工中金,中小公庫,国民公庫)に対する財政投融資の追加,民間金融機関に対する貸出要請を含めて41年10~12月に総額11,596億円の貸出目標をたてたが,その達成率は政府系中小企業専門3機関(達成率98.8%),民間金融機関(同97.5%)をあわせて97.6%とほぼ予定通り行なわれた。

これは39年々末金融対策の達成率63.5%,40年々末の同達成率90.6%を上回るものであつた。

このような41年の景気上昇過程における中小企業向け貸出の増勢は前々回(34年),前回(38年)とまつたく同様であり,金融機関別には民間系および政府系中小専門金融機関の増加もさることながら,都市銀行および地方銀行を中心とする全国銀行の中小企業向け貸出の急増が目立つた。大企業の借入需要の沈静化で余裕の生じた都市銀行,地方銀行と,コール・レートの低下でより有利な資金運用を目指す相互銀行,信用金庫,信用組合などの民間系中小企業専門金融機関は優良中小企業をめぐつてたがいにはげしい貸出競争を展開した。

第4-2表 中小企業の借入難易と資金ぐり状況

こうした貸出の増加のなかで中小企業に対する貸出金利もしだいに低下した。たとえば当庁調べによれば中小企業の単名手形借入金利は39年12月の2銭3厘7毛から42年3月には2銭2厘7毛へと4.2%さがり,また手形割引金利もこの間,2銭4厘1毛から2銭2厘9毛へと5%方低下した。規模別にみた金利の低下幅は小規模企業ほど小幅であり,小規模企業の金利は総じて高いがこのような金利の低下は中小企業経営の経費節減のプラス要因として働いた。

第4-5図 中小企業向け貸出残高の推移

第4-3表 中小企業の金利

(二) 利益率の上昇

41年の景気上昇過程で売上げ増加を示した中小企業(製造業)はその利益率もしだいに回復へと転じた。大蔵省調べ「法人企業統計季報」によれば,中小企業(資本金200~5,000万円,製造業)の41年上期(1~6月)の売上高は対前年同期比18.2%増,下期(7~12月)37.6%増と上昇を示し,売上高純利益率は 第4-4表 にみるように41年上期は40年上期の水準を下回つたが,下期になると収益率は回復に転じ,前年下期をかなり上回るようになつた。41年を通じた売上高純利益率は4.0%と,39年(3.9%),40年(3.2%)と2年連続低下のあと,ほぼ38年度の水準4.1%に近づき,その回復度合は大企業よりも大きかつた。このような売上高純利益率の回復と総資本回転率の上昇によつて総資本収益率も40年下期の3.8%にくらべて41年下期にはほぼその2倍の7.4%へと高まつた。その結果41年平均の総資本収益率は7.1%と40年平均の5.4%を大幅に上回り,最近5ヵ年間では最高を記録した。このような売上高純利益率の上昇が売上原価,一般管理販売費,人件費などと,どのような関係にあつたかをみてみると, 第4-5表 に示すように,売上高に対する売上原価比率は40年から41年にかけて上昇低下し,一般管理販売費比率は売上げの著増によつてかなり大幅に下がり,このため営業利益率は高まつた。このほか営業外収益の比率は低下したものの,営業外費用の比率は利子割引料が40年に比較して低下したことと,さらにその他営業外費用がかなり大幅に低下したことが収益回復のプラス要因として働いた。また,人件費比率は大企業では大幅な賃金の引上げにより上昇をしめしたが,中小企業でも賃金水準そのものは上昇傾向をたどり,36~37年ごろにくらべて収益面におよぼす度合は大きくなつているが,41年に関するかぎりでは40年より低下した。

第4-4表 中小企業,大企業の収益率の推移(製造業)

第4-5表 中小企業,大企業の売上高構成比と人件費の比率(製造業)

第4-6表 中小企業の収益動向

他方,このような41年の収益動向を中小企業経営者がどのようにみているかを,当庁調べのアンケート調査でみてみると, 第4-6表 のごとく41年10月には前年同月にくらべて,収益が「低下した」ものが,「上昇した」ものを上回つていたが42年3月になると,「上昇した」ものが「低下した」ものを上回るようになつた。比較的収益上昇のおくれた小規模企業でも41年度下期になるにしたがつて収益増加を示すものがかなり増加した。収益の上昇は「売上げの増加」によるものが圧倒的に多い点が特徴的であるが,「支払利息の減少」「その他諸経費の減少」さらには「人件費等のコスト低下」「原材料安」などを示したものも少なくなかつた。しかしながらこうした収益の上昇した企業に対して一方では景気回復過程にもかかわらず景気回復に取り残され,収益低下を示す中小企業も存在した。それは重工業関連中小企業よりも軽工業関連中小企業で多い点が目立つた。この収益の低下要因としては「人件費等のコスト増加」によるものがもつとも多く,ついで「原材料高」「売上げの減少」「その他諸経費の増加」「支払利息の増加」などの順となつている。小規模企業になるほど人件費上昇や売上げの減少による収益低下を訴えるものが多く,上位規模では原材料高の影響をうけたものが多かつた。

第4-7表 財務比率の変化(製造業)

第4-6図 固定資産新設額

このような利益率の上昇に対して,中小企業の財務比率をみると 第4-7表 に示すように,40年から41年にかけ,当座比率,流動比率は小幅ながら上昇し,自己資本比率も大企業とは逆にわづかに高まり,負債比率,借入金対自己資本比率は大企業とは対照的に低下している。大企業に比較して中小企業の財務比率は決して良くはないが,景気上昇のなかでわづかに改善している。

(三) 活発化した設備投資

39年から40年にかけて沈滞した中小企業の設備投資活動は41年の景気回復から上昇への過程で再び活発化した。中小卸小売業では40年10~12月,中小製造業では41年1~3月以降いずれも急増傾向をたどりだし,その増加テンポは38年の景気上昇期に匹敵するほど著しかつた( 第4-6図 )。41年の設備投資額を法人企業の固定資産新設額でみると, 第4-8表 のごとく全産業では中小企業は40年が前年比13.7%減のあと,41年には41.4%増と最近5ヵ年間ではもつとも大きな伸び率を示した。これは40年,41年とひきつづいて沈滞をつづけた大企業と対照的であつた。これを製造業,卸小売業別にみても,まつたく同様に41年の中小企業の設備投資活動は40年とはうつて変つて活発化した。さらにこれを中小企業向け設備資金貸出の面からみると,卸小売業向けが40年なかばごろからふえはじめ,ついで製造業向けが増加に転じている。製造業では食品,木材などの軽工業関連がふえ,ついで鉄鋼・金属製品,機械などの重工業関連中小企業が増加をたどりだしている( 第4-7図 )。

第4-8表 設備投資動向(固定資産新設額)

第4-7図 中小企業向け業種別設備資金貸出

このように中小企業の設備投資活動は,業種によつて多小の相異がみられるが,投資急増をもたらした要因をあげると,第1には39~40年の不況期に設備投資の抑制を行なつたが,その後の景気回復で生産能力の不足が目立ちはじめたこと,第2は労働力の不足から,たとえば機械部品工場における高速自動旋盤の導入,鍛造工場における連続鍛造設備の採用などの労働節約投資が増加したこと,さらには従業員確保のための福利厚生施設の拡充が行なわれたこと,第3は金融の大幅緩和により民間系金融機関の金利が低下し,さらに政府系中小企業専門金融機関の金利引下げ措置が中小企業の投資誘因として働き,またこれと同時に金融機関の積極的な貸出態度も少なからず影響したこと,第4はさきゆきに対する見通し難からこれまで慎重であつた中小企業の投資ビヘイビアが景気の急速な立ち直りによつてかなり積極性をもつようになつたこと,などがあげられよう。

こうした41年の景気上昇期における中小企業の設備投資活動は42年に入つても活発化をつづけている。当庁調べによれば中小企業(中小企業短期動向調査,従業者数10~299人,製造業)の設備投資は41年度は前年度比25.4%増のあと,42年度には18.6%増となる見込みであり,増加率こそ低下しているが,増勢基調はかわつていない。41~42年度の特徴点をあげると,規模別にはこれまでおくれていた小規模企業でも,活発化しはじめたこと,業種別には重工業関連より軽工業関連中小企業の投資意欲が強いこと,業態別には下請企業よりも独立中小企業で投資の伸びが大きいことなどである。また投資の目的をみると,「生産能力の拡充」はいぜん高い比重を示しているが,相対的には低下傾向にあり,逆に合理化投資やさらには,新製品の生産,福利厚生施設に対する投資の比重が高まつている。総じて中小企業の上位規模で生産能力の拡充,新製品の生産を目的とするものが多く,小規模企業でも新製品や福利厚生施設に対する比重が増大傾向にある。

第4-9表 中小企業(製造業)の設備投資動向

第4-10表 設備投資の目的

(4) 高水準の整理倒産

41年度における景気回復のなかにおいても企業の整理倒産件数はひきつづいて高水準を示した。全国銀行協会連合会調べによる銀行取引停止処分者件数は40年度の10,054件から41年度には11,984件と19.2%増加し,また負債総額も,3,082億円から3,192億円へと増加した。資本金1,000万円以上の件数は横ばいであつたが,100~1,000万円の小規模企業では前年度比20.7%増と大巾にふえ,小規模企業の占める比率は40年度の93.2%から41年度には94.9%へと高まつた。このような小規模企業を中心とする増加で,1件あたりの負債額は40年度の30.7百万円から41年度には26.6百万円へと低下した。業種別には卸売業,建設業などが大巾に増加したが,製造業,小売業などではその増加率は小さかつた。原因別には行きすぎた設備投資や過大な在庫圧迫によるものは減少し,売上げ不振,売掛金の回収難などいわゆる循環的要因によるものの増加率は相対的に小さくなり,これらとは対照的に融通手形の操作禍,高利金融依存による破綻,関連企業の倒産の余波によるものの増加率が高かつた。

もつともこのような銀行取引停止処分者がすべて企業の倒産とはかぎらない。すなわち取引停止処分後も営業をつづけるもの,あるいは別会社を設立して営業を継続するものが少なくない。当庁調べによれば,総論 第24表 のごとく景気上昇過程にもかかわらず整理倒産企業のなかでの廃業の割合はふえ,逆に営業継続の割合は低下しているが,いぜん3分の1以上は営業をつづけている。

最近の整理倒産動向のなかで特徴的なことは,小規模企業を中心としていぜん増加していることであり,それらの多くが,融通手形の操作禍,高利金融依存による破綻を原因としていることである。金融緩和のなかにあつてもいぜんとして金融機関から疎外され,ついに融通手形の操作,高利金融への依存という形態をとるに至つたものが少なくないのである。また原料高,製品安,さらにはコスト高,採算悪化をみせ景気回復に取り残されている小規模企業も存在している。

第4-11表 銀行取引停止処分状況

景気上昇がつよまるにつれて,中小企業の受注難,販売不振はしだいに影をひそめているが,人手不足はますます深刻化の様相を呈してきており,また販売競争はいぜんとしてきびしさをつづけている。不況のなかで顕在化した企業の優劣格差は景気上昇期においてつよまる方向にある。


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